川は誰のものか

2013年6月30日 (日)

213.小さな生息地ほど守るのが難しい

6月29日、最高裁まで行って敗訴した
落合川のホトケドジョウの「生きる権利」訴訟の記念集会に行ってきた。
 
帰り道に、藤田城治弁護士が
その落合川を見に行くというのでご一緒させてもらった。
 
問題となった川は「小川」だと聞いていたので驚かなかったが、
その美しさには驚いた。
 
湧水から流れいずる川だけあって水が透明で、
カモの親子があちこちでスイスイ泳いでいる。
 
Photo
 
昭和30年代以降、この周辺にバカスカと家を建ててしまったため
それらの家が浸水して、河川改修が必要だということになり、
川を新しく掘って直線化し、その残土で
もともとの小川が埋め立てられてしまった。
 
治水を頭にいれずに宅地化を進めておいて
そのツケを払わせられることになったのが
そこに元々住んでいた生物だ。
 
ホトケドジョウは今では絶滅危惧種になっている。
ホトケドジョウにだって生きる権利はある。
 
そうやって始まった裁判だった。
 
治水のために新しく川は作るのはよいとしても
もともとの川を埋立なくてもいいのではないか?
 
これに対し、事業者である東京都は
ホトケドジョウを強制移住(←藤田弁護士の表現)させるから大丈夫
という考えで進めてきた。
 
裁判をやっているうちにこの区間の事業は進み、
裁判官は和解による解決を提案した。
 
そこで原告は、ホトケドジョウの生息地を回復するために、
都が作ると事業開始前から説明していたビオトープの設置を作るよう提案した。
 
これに対し都は
「工事内容は『川の交流会』で市民との協議により進める必要があり
 原告からの提案のみで決定することには問題がある」と言い、
原告は、都の意見に耳を傾けて歩み寄った。
 
流域である東久留米市内の主だった環境保護団体と提案内容を共有して
ビオトープ創出の実行への賛同意見を集めたのだ。
 
ところが、裁判所での和解協議の日が近づいたところで、裁判長が交代した。
 
すると、都は、態度を急変させて、裁判所に対しては
和解ではなく、結審(裁判を終えること)・判決を求めた。
 
原告に対しては、『川の交流会』は裁判の途中だから開催しないと回答した。
 
『川の交流会』で市民との協議により進める必要があると言いながら
『川の交流会』は裁判中だから開催しないと言う。
 
裏切られた、と原告は憤った。
 
はしょって結論を言うと、和解は決裂して、
最高裁まで行ったが住民は敗訴した。
 
東京高裁は2011年2月16日に、以下のような
根拠のない判決を出している。
 
「本件工事の前後におけるホトケドジョウその他の魚類の
 個体数の増減は明らかでないが
 仮に個体数の減少がみられるとしても
 絶滅に至るなど魚類の生育に致命的打撃を与えたものではない」
 
最高裁は2012年2月2日、9ヵ月もたって
「適法な上告理由にあたらない」と原告の上告を棄却した。
根拠のない判決を支持したのだ。
 
「小さな自然ほど守ることが難しいですね・・・」
 
藤田弁護士とそんな話をしながら、東久留米駅へと
落合川沿いを歩いて帰った。
 
原告が守ろうとした場所は
ホトケドジョウが暮らしたほんの小さな川の一部だ。
日本の環境影響評価法や条例が適用されるかどうかは
川の規模で決まる。
 
こうして、小さな生息地は調査されることなく破壊され
人間は、多様で脆弱な自然に暮らす生物たちの生きる権利を奪ってきた。
 
東京都が事前説明に使ったパンフレットにあったビオトープは、
現在に至るまで作られていない。
 
(上記は、藤田城治弁護士のシンポジウムレジメ、
「ホトケドジョウ訴訟が突きつけたもの~ホトケドジョウの生きる裁判」を参考にしました。)
 
私がこの日、前座としてお話したレジメはこちら(PDF)です。

2013年6月 6日 (木)

207.憲法改正議論の前に問うべきこと

憲法改正議論の前にすべき総括がある。
行政は憲法のもとにある「法律」を適法に運用してきたかどうかだ。
 
例えば地方財政法 第四条 
 
「地方公共団体の経費は、
 その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、
 これを支出してはならない。」
 
これが守られていれば、
建設したのに一滴も水を使わないダムができるわけがない。
ところが全国にたくさんある。  
 
4月13日に、一滴も水を使わなかったダム建設に荷担した「前科」のある
北海道で、「川を住民の手に」という集会に参加した。
 
表向きの「目的」は利水や治水などであるが、
本当の「目的」は単に「地域振興」という名の土建業である。
そんなダムがあと二つ、計画されている。
 
はなから目的が表向きと実態と違っているのに支出をする計画だ。
 
自治体自身が、規制権者として財政当局の内部統制を効かせずに
土建担当部局や水道担当部局の暴走を許し、
財務省もまた統制者として機能せず、自治体の暴走を許し
補助金を出して「自治体の意志を尊重」を理由に法違反を助ける。
 
行政の裁量の名で、実は法を遵守せずにきた。
その法違反をもう一度犯そうとしているのが国交省であり
財務省であり、北海道であり、関係基礎自治体だ。
 
その典型例であるサンルダム、平取ダム
そしてすでにできた当別ダムについて徹底検証した本ができた。
 
地方財政法 第四条を念頭において読んで欲しい本だ。
 
北海道自然保護協会[編]
四六判上製/328頁/2500円
 
行政による法違反は、地方財政法に限った話ではない。
行政による違法行為を行政の裁量と偽って済ます
行政のあり方、およびその先にある司法のあり方をも総括することが、
憲法議論よりも先にある。

2013年4月12日 (金)

206.川を住民の手に 

せめて自分がかかわる集会ぐらい、
しっかりご案内しなければと思いながら、
ついまた前日になってしまった。

Photo

こんなかわいいチラシの集会にお話をしにいくのは

記憶にある限り、初めて・・・。しかし、この集会の目標は

「ダム問題において国民の意見が反映されるための第一歩にしたい」

と深い。

討論の時間がたっぷりです!

 

2013年3月28日 (木)

202.少子高齢化時代に石木ダムは必要か

3月22日と23日の2日間、
長崎県が進める石木(いしき)ダムの公聴会が開かれた。
 
この公聴会は、地権者などが立ち退きを拒否している場合、
事業者が強制収用するだけの公益性があるかどうかを判断するために行う、
土地収用法23条に基づく手続だ。
 
今回のケースは、長崎県が申請し、
土地収用法を所管する国交省の九州地方整備局が「公益性」を判断する。
しかし、九州地整は、長崎県のこのダム事業に補助金を与えており、
控えめに言っても「右手で申請、左手でハンコ」の儀式になりえる。
 
公述には20人が選ばれた。
石木川まもり隊」の松本美智恵さんによれば、以下URLで示したうち、
反対派の公述人は合計11人(2、4、6、7、9,10、11、13、15、17、19番)
そのうち地権者は3人(2、11、19番)だけだ。
 
19番の岩下和雄さんは、最後の最後で、
反対地権者13組17名が公述をしたいと申し込んだにもかかわらず、
3名しか公述の機会を与えられなかったと述べている。
 
忙しい方は、11番の松本好央さんの公述だけでも冒頭から聴いて欲しい。
さらに時間がある方は、
2番の石丸勇さん、19番の岩下和雄さんの公述を聴いて欲しい。
 
<石木ダム公聴会動画リンク>
撮影は予定地に暮らす「ほーちゃん」(←ブログにリンク)。
1 起業者  http://youtu.be/LY7eo3aZPN8
3 神野健二 http://youtu.be/PRss-HPLS4A
4 生月光幸 http://youtu.be/d-rf-R8uAag
5 河野孝通 篠原康洋 http://youtu.be/651X3fbM2kw
6 松本美智恵 http://youtu.be/FY5vVZvnOg4
7 坂本健吾 http://youtu.be/FczpRk_0-Xw
8 嬉野憲二 土井庸正 http://youtu.be/6ROLoVa5IL0
9 嶋津暉之 http://youtu.be/k-cDwHgpkcY
10 遠藤保男 http://youtu.be/_4fqeHhmcB4
12 山田義弘 http://youtu.be/qmIwE_qnWRs
13 畑田三郎 http://youtu.be/zMqSikKyrGw
14 佐々木廣志 http://youtu.be/PGTZ71xFRcE
15 宮野由美子 http://youtu.be/lmqPrLIgwJo
16 森一敏 http://youtu.be/qiF-p43WYBw
17 吉島範夫 http://youtu.be/tTby_YnZkAw
18 西坂保憲 白濵昭子 http://youtu.be/JGSHC-nph0A
20 小松利光 http://youtu.be/C0njFvGI9NE
 
昨日、国立社会保証・人口問題研究所が、2040年には
人口の40%以上が65歳以上を占める自治体が半数近くになるという
推計を発表した。
 
そこで、石木ダムの受益者である佐世保市の人口がどうなるか、
傾向がわかるように、縦長のグラフにしてみた。 
 
すると、見ての通り、人口総数は26%減、0~14歳16~64歳が減少、
65歳以上の傾向を追って、75歳以上が増え、横ばいとなる。
絵に描いたような少子高齢化が待っている。
 
       佐世保市人口推計
     Photo_2
 
佐世保市民は、川棚町川原(こうばる)に住む13世帯を
立ち退かせてまで石木ダムを必要とするのか?
 
 安倍内閣は、新しいダムをあと70基近くも作ろうと急ピッチで動いており、
 一方で、完成しても一滴も使わないダムが各地で続々と増えている。
 安倍首相の出身県も例外ではない。
   ダム完成…一滴も利用されず (中国新聞'13/2/24)
 
佐世保市民は、川棚町川原(こうばる)に住む13世帯を
立ち退かせてまで石木ダムを必要とするのか?
 
限られた情報だけで考えても
この質問はそれほど難しい質問であるはずがない。
 
佐世保市民は市長に尋ねてみてはどうか?
 
 

2013年3月26日 (火)

202.坂本龍馬が渡った肱川(ひじかわ)の行方

ここからの続きであることになる。
 
2013年 1月22日、霞ヶ関合同庁舎の一室で、
 
Photo_2愛媛県大洲市、
坂本龍馬が脱藩したときに通った橋が保存されている、
肱川の支流「河辺川(かわべがわ)」の下流に計画のある
山鳥坂(やまとさか)ダム。
 
その他3つを含む4つの「ダム検証の検討」が行われた。
 
「ダム検証の検討」とは何か。
 
山鳥坂(やまとさか)ダムの場合、
検証」はダム事業者である四国地方整備局が
国土交通省が設置した“有識者会議”がつくった「中間とりまとめ」に沿って
ダムの妥当性を検証する。
 
検証が終わると、国土交通省が設置した“有識者会議”が
自らがつくった「中間とりまとめ」に沿って検証が行われたかを「検討」する。
 
ザクっと言えば、お手盛りの二段重ねのような手続である。
 
この日も、検討は、他3つのダムを含めて2時間で終了。
 
有識者が、延々と国交省本省事務局のご説明に耳を傾け、
多少の質疑をしておしまい。
 
結論はいつもと同じ。
中川博次座長が下記のいつもの事務局メモを読み上げて終わった。
 
 「この計画は、基本的には、中間取りまとめで示した
  共通的な考え方に沿って、検討されたと考えております。
  そういったことでよろしゅうございますか。」
 
繰り返して書くが、
中川博次座長は、事実上、河川ムラの村長であり、 
三本木健治委員(明海大学名誉教授)は元河川局次長だった。
 
一度だけ、これまでの検討で、
「中間とりまとめ」に沿っていないという指摘が出されたダムもある。
 
 石木ダム(長崎県)がそうだった。
 「土地所有者等の協力の見通しはどうか」という項目が
 それに反するとの指摘が、河川ムラ住民以外の一人の委員から繰り返された。
 それでも構わず、「継続」という「検証結果」が踏襲された。
 
 「地域の同意を得られるよう希望する」という付帯意見までついたが、
 次のコマで紹介するように、3月22日、23日には、13世帯の暮らす地域の
 強制収用が可能な土地収用法に基づく事業認定手続に入った。
 
山鳥坂ダム計画でも、漁業権を持つ漁協が強固に反対を続けている。
 
「土地所有者の協力の見通し」に類すると思われる漁業権の観点からは
中間とりまとめ」に反しており、情報が提供されずに、そのことが
検証で見落とされたケースではないか。
 
案の定、この有識者会議のお墨付きを得て
国交省が山鳥坂ダム継続という方針を示したことに対して、
 
2月18日、肱川漁業協同組合(組合長 楠崎隆教)、
長浜漁業協同組合(組合長 中原文男)ら7団体は
改めて山鳥坂ダム建設への反対を表明した。
 
ところが、国交省は、再開が決まったとして、
地権者と3月2日にダム補償協定を調印した。(愛媛新聞にリンク
 
利害は真っ向から対立している。いや、どちらも被害住民だ。
しかし、利害を適正に判断できる立場の者がいない。
 
山鳥坂ダムのご当地である愛媛県大洲市では過去に
 
・旧自民党政権のときに、大洲市議会の反対決議もあいまって
 いったんは自民党連立与党が「中止」を判断した。
 
・県知事の要請と国交省の抵抗で「継続」がごり押しされ、
 大洲市民が住民投票条例の直接請求を行った。
 
・寸前に、多目的ダムを治水専用ダムに改変させることで
 市民の声を反映したことにして議会が住民投票条例を否決した。
 
・この「ゾンビダム」の工事事務所長が、現在では大洲市長である。
 
つまり、住民の利害を調整すべき基礎自治体が、
ダム事業推進のために、治水のあり方を歪め、
国交省の植民地になってしまった。
 
自治や治水や川を自分たちの手に取り戻せるかどうか、
それは、肱川流域に暮らす人々の良識と不屈の気持ちによって決まる。
 
今週末の3月31日(日)、先述した肱川漁業協同組合(組合長 楠崎隆教)、
長浜漁業協同組合(組合長 中原文男)らにもう1団体が加わった8団体が
改めて反対集会を開催するのだと連絡が入ってきた。
 
日時:2013年3月31日(日)1:30~
場所:愛媛県大洲市東大洲 市民総合福祉センター
 基調講演:「あるべき治水対策」 
      今本博健 京大名誉教授(河川工学)
 「全国のダム検証の現状とこれから」
  遠藤保男 水源開発問題全国連絡会 共同代表
 「山鳥坂ダムはいらない市民の会」設立など
 問い合わせ:0893-23-3524(玉岡さん)
 
権力が住民の暮らしをつぶすことが日本各地で起きている。
次々と警鐘を鳴らしてもかき消される。
 
それでもかき鳴らさなければ終わりだ。
 
 
 
 

2013年3月25日 (月)

201.八ッ場ダム予定地にある遺跡保存

八ッ場ダム予定地にある遺跡保存を求める要望書を、
「ダム検証のあり方を考える科学者の会」が2月28日に
国交省と文化庁に提出し、
同時に「文化関係者のアピール」が提出された。
 
現在の予定地がダムではなく、
遺跡のフィールドミュージアムを中心に、
豊かな温泉資源を活かした地域として再生することを願ったものだ。
 
私もアピールに賛同したので、後者の呼びかけ人でノンフィクション作家森まゆみさんからお礼とご報告が届いた。
 
「国交省は文書での回答も考慮中と言うことでしたが、
 文化庁は一室を用意して担当官堀敏晴さんと意見交換の時間も持てました。
 しかし現地の群馬県などがやる気であれば
 フィールドミュージアムなどを文化庁としても支援したいが、
 現地にその態勢がなければまるごと保存はできない。
 記録保存も立派な保存手法である」という見解だったそうだ。
 
現在、両省庁に文書による回答を求めている。
 
以下のご案内もいただいた。
 
合わせて
 

2013年3月23日 (土)

200.旧計画の呪縛を解く(28)矛盾⑨伝説の内務官僚が遺した矛盾とメッセージ

利根川・江戸川有識者会議は
さまざまな疑問、矛盾や不整合や浮かび上がらせながら
第11回(平成25年3月18日)でひとまず打ち切りとなった。

最大の不整合は、結局のところ、
昭和22年には1.5万m3/sで議論されたカスリーン台風の実績流量と、
貯留関数法による計算で2.2万m3/sとはじき出された架空の流量の差ではないか。
捏造した氾濫図でしか説明がつかなかった。

そのことを日本学術会議の
河川流出モデル・基本高水評価検討等分科会委員長として、 
その説明役としての委員を引き受けた小池俊雄東京大学教授
最後に乖離が説明ができないではないかと大熊委員に挑まれ、
最後まで「メカニズムはある」と説明にならない説明で言い逃れた。

これを受けて、閉会前に印象的なやり取りがあったので、概略を記録しておきたい。

大熊孝委員曰く
「利根川治水計画は私の目から見て絶対に完成しないんですよ。
 今の計画でいけば、あと10個くらいはダムをつくらなきゃならない。

 これは、利根川だけでなくて信濃川も同じです。
 石狩川も同じです。吉野川も同じです。
 実現し得ない治水計画を立てている。

 そういう国交省および日本の河川工学の分野というのは
 私は非常に問題があるというふうに考えています。

 それを修正していく中で、
 妥当な治水計画が立てられるのではないか。

 最後に、小池先生に聞きたいんですけれども、
 現実のカスリーン台風の実績洪水に関して説明できない、
 そういう流出解析の結果をもってして2,2万m3/sが妥当であると言い切るのは、
 私はやはり学問上、勇み足であるというふうに思います。

 水文学と河川工学は性格が違いますけれども、
 水文学もやはり現実の社会との応答の中で存在しているわけであって、
 あなたが今回お墨付きを与えたことによって物事は進んでいきます。
 そういうことになると八ッ場ダムもできるでしょう。
 こういう永遠に完成しない治水計画を抱えたままになるでしょう。

 あなたは歴史的に責任を負うということになるのではないかと思います。」

宮村忠座長曰く
「大熊さんが今言われたことは、ここで言う話ではないと私は思いますので、
 小池さんに答えてもらわないようにします。」

清水義彦委員曰く
「大熊先生が最後に小池先生にいったご発言は取り消していただきたい。
 我々は自分らの学識に基づいて我々の判断で言っているだけで、
 全ての責任を一委員に押しつけるようなのは
 この会議の趣旨ではありません。そういう発言はぜひ撤回してほしい。」

打ち切りの雰囲気を悟って、傍聴席からも多くのヤジが飛んだ。
清水委員の最後の発言には「茶坊主!」とのヤジが飛んだ。

思えば、4年4ヵ月ぶりに、この会議が再開されたときに
大熊委員は、多数決で座長を新たに決めようと提案した。

形骸化した「行政のお墨付き機関」でしかなかった会議を
規約に従って運営方法を変えようとした。

そのときに、立候補したのは、大熊委員だけだったが、
宮村座長のままでよいと、推薦をしたのが清水委員
だった。

 
宮村氏は、自分では立候補しなかったので、
清水氏が推薦しなければ、利根川の治水の歴史はこの日から
変わっていたことだろう。

歴史はある日、たった一人の決意で変わることがある。
独裁とならないためには、多くの人の参加を得て、
議論し、反論しあい、合意形成していくことが必要だ。

権力者のいいなりになるか、合意形成を目指すか、
それが今の日本に最も望まれていることではないか。

招聘されながら出席を果たせなかった冨永靖徳・お茶の水女子大名誉教授が
ある場所で、科学の基本について大切なことを次のように語ってくださった。

 「整合性」:論理が矛盾してはいけない。
 「再現性」:同じ事を再現できるか、再現できることを十分な根拠の基で確信できる。
 「公開性」:すべてのデータが公開されて、誰でも追試をして確認ができる。

 再現性には微妙な問題を含むにしても、
 公開で進撃な議論ができることが特に重要だと。
 これらに事柄に該当しないものは、「魔術」だと。

冨永教授のこの言葉を借りれば、八ッ場ダムだけではなく、
スーパー堤防の実現性、霞ヶ浦の問題、ウナギの生息地の回復計画、
湿地再生計画、利水計画、低水管理、全体の予算問題など
今回積み残された多くの問題に「魔術」がかかったままだ。

旧計画の呪縛は完全には解けなかった。

しかし、解くための手がかりをはっきりと残してくれた。
公開で議論することの重要性である。
もう一つ加えるなら、真実を浮かび上がらせるために
捨て身で議論する有識者の高貴な覚悟だろう。

議論を挑み続けた関良基委員には惜しみない拍手が向けられた。

伝説の内務官僚が後輩に託した
半世紀前の密室のプロセス資料
今回、初めて野呂法夫委員により明かにされた

この努力が次につながるのは歴史の必然だと思える。

199.旧計画の呪縛を解く(27)矛盾⑧山に降る雨

2013年3月8日の第10回の利根川・江戸川有識者会議模様、
続きです。

関良基委員点から面への流域治水の提言を行ったことに対して、

虫明功臣委員が
「都市河川なら利くが、利根川で『浸透』が利くようなところはほとんどない。
 『田んぼダム』も福島県でもやった。
 新潟県も知っているが、大洪水に効くようなものではない」と
反論したと書いた。

(関委員が持参した効いたデータには見向きもしなかった)

この反論に関良基委員がさらなる反論を行い、
その反論に今度は小池委員が反論した★が、
それは学術会議の回答にはそぐわなかった。

関委員曰く、
「虫明先生が田んぼダムの貯留機能が
 大雨のときには効かないと言ったんですけれども、
 これは全くそんなことはありません。ダム以上に効きます。
 
 関東地整に求めたいですけど、利根川流域全体の水田でこれをやったとして、
 新潟方式をやったときにどれだけピーク流量をカットできるか計算してください。
 八ッ場ダムを確実に上回ります。」

小池委員曰く
「2つの理由で効きません。
 八斗島の流量に支配する山地面積と水田面積の規模をお考えください。
 どれだけの割合であるかがおわかりになると思います。
 
 山地で降った雨が洪水を決めているんです、ほとんど★。
 ですから効きません。」

関委員曰く
「確実に効きます。八ッ場ダムは面積300haです。
 利根川全流域の水田面積はどのぐらいですか。
 八ッ場ダムを確実に上回ります。間違いありません。

 それはもちろん利根川全流域に占める面積としては
 微々たるものというのはそのとおりですけれども、八ッ場ダムは点です
 水田は少なくとも20万ha、30万haという規模でありますので、
 これは確実に水田は上回ります。」

売り言葉に買い言葉で、言葉が飛び交っているうちに、
メモを取っていて、「ん?」とわからなくなった。

小池委員は「山地で降った雨が洪水を決めているんです」と
断言したわりに、前のコマで書いたように、

八ッ場ダムの集水域である吾妻流域の山地の飽和雨量
3~4倍から無限大まで経年変化したのに、
パラメータ値の経年変化としては現れなかった」と回答(P.18)した。

普通なら「ではダムが要らなくなりました」という結論になりそうなものがならない。

関東農政局の「利根川の水田」ページを見ると、
 
「利根川は国土の約5%という全国一の流域面積を有しています。
  その流域には、全国の2割にあたる約2,500万人の人々が生活していますが、
 加えて全国の1割にあたる約28万haの水田も存在しています。」とあった。

河川整備計画は流域全体の治水の話であるにもかかわらず、
国交省からは、ダムの必要性を根拠づける目標流量の情報だけが提供され、
八ッ場ダムが不要となる議論には河川ムラ学者から理不尽に反論が及ぶ。

流域全体のことを住民参加で決めようというのが、
1997年改正河川法の趣旨だったのだが・・・。

住民を傍聴席においたまま、
有識者会議で、ごく少数の委員が良心と良識、常識に基づいて
巨大な河川ムラを相手に闘っていた。

198.旧計画の呪縛を解く(26)矛盾⑦Pは0.6に近づくか?

(しつこいですが続きです)

これに対する小池委員の反論は、
次のようなものだ。いろいろそぎ落として要点を書くので
いつ出るとも知れない第10回の有識者会議議事録で確認をしていただきたい。

小池委員曰く

「特にこれまで経験していないような大洪水を、
 信頼性を合わせて予測することは極めて重要な課題ですが、
 世界的にも未解決の問題です。

 今回の検討では、複数のモデルによる推定結果を合わせて考えることが、
 経験していないような現象を考える上で重要と考えると結論づけています。

 もう少し、踏み込んで申し上げますと、
 大洪水と中小洪水で何が違うかというのは、
 流れの形態が変わってきます。

 そうすると、Pが0.6に近づいていくというのが、
 私たちの物理的な理解です。」

これにも関委員は反論し、言い合いになる。

関委員「0.6じゃなくて0.3です」(実際には0.3になっているという意味だ。)
小池委員「いや、サブ流域によって違います。」
関委員 「半分の0.3です。」                                 

ここで小池委員は意味不明な回答をする。
そういう物理的な理解をもとに、私どもは結論づけているわけです。
 これは、専門家で議論した結論でございます。」

これは専門家でも素人でも、実際のPがどう置かれていたか、
検証の過程を見れば、0.3か0.6なのかは決着がつく。

まず、日本学術会議は
国土交通省にはその背景・経緯の記録が残っておらず」を理由に、
現行モデル」(今はこれを旧モデルと言う)を検証せず(*1)、
新モデル」の作り方<貯留関数法の適用の方針>(*2)を指定してつくらせた。

(*1)日本学術会議 回答のP.1下から8行目から9行目)
(*2)日本学術会議 回答のP.7

 しかし、本当は記録は一部残っていた。
 国土交通省関東地方整備局が八ッ場ダム住民訴訟を裁く
 さいたま地方裁判所の調査嘱託に対して提出した資料がその一つだ。

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 出典:さいたま地検への告発状 2011年6月10日

 それが後に、国会答弁に照らして虚偽だったと分かり、
 2011年6月10日にさいたま地方検察庁に別途告発された。

 また、この虚偽がもとで、馬淵国土交通大臣(当時)は第三者による検証を求め、
 河川局長が日本学術会議へ検証を依頼した。

上記をクリックしてもらえればわかるように

旧計画の策定プロセスで捏造・操作したと疑われた定数表を見ると、
小池委員の言う0.6ではなく、関委員が指摘したように0.3に近い。

では、日本学術会議に出された新モデルでその数値はどうなったか?

大熊委員が会議が打ち切りとなった11回に提出した意見書で
(なぜか掲載されていないが)新旧モデルの定数等対照表をまとめている。

新モデルの定数Pの平均は0.474
基準点に近いところや
八ッ場ダム予定地の吾妻川流域(*3*4を参照)には
なぜか、関委員に言うように0.3が堅持されている。

Photo_2クリックで拡大

*3 出典:2013年3月18日大熊孝委員提出「利根川・江戸川治水計画に関する意見書」

Photo_3クリックで拡大

*4 日本学術会議回答の参考資料 P.102

定数P以外の定数Kを見ても新旧でバラバラだ。

当初問題になった「飽和雨量」は土壌への浸透が48ミリを越えると
流域一帯全体で飽和して川へ流れ出ることになっていたのに対し、
新モデルでは3~4倍、吾妻流域では無限大となる。

 
(いつか関委員が指摘していたが、それでも日本学術会議の回答 P.18の 
エ、洪水時の森林の保水力と流出モデルパラメータの経年変化」では
この3倍から無限大に変化しているにもかかわらず、
パラメータ値の経年変化としては現れなかったものと考える」としている)

  *この辺を合わせてご参考ください。総合確率法については梶原健嗣氏のブログ説明がお勧め。

新旧のモデルで飽和雨量も含めすべての「定数」が大きく変化したのに、
計画流量の結果だけが同じ。

その結果を見れば、素人だっておかしいと思う。

197.旧計画の呪縛を解く(25)矛盾⑥雨の定数KとP

(続きです)

同じ主張なのに結論だけ矛盾する会話は
と川の水量を結びつける係数であるKとPを巡ってさらに続く。

小池委員
 
「中小洪水で決めたK、Pと、大洪水で決めたK、Pは異なります。
カスリーン台風の大洪水の正確な流量がわかっておりませんので、
できるだけ大きな雨のKとPを定めて、
それを援用するのが工学的なやり方になります。」

に対して立ち上がって、猛然ととりついたのは関良基委員だった。
次のような要旨だ。

「今、小池先生は、カスリーン台風の最大計算流量が
 21,100 m3/sというふうに計算されているわけですけれども、
 そんな流量は出ないということを半ば認められたのと同じです。

 小さい規模の洪水で定めたKとPと、
 大きい洪水で定めたKとPの値は違うということを、
 今、小池先生は認められた。

  
 そこが問題であると私たちずっと言っているんです。

  
 
 つまり、(中小洪水である)10,000m3/sぐらい出るものから決めたKとPを
 (大洪水である計画流量の計算に)使っちゃいけないということを、
 今、小池先生は認められたんです。

 (しかし使ってしまう)だから、過大な値が出てきてしまう。
 日本学術会議では、その点が曖昧にされたまま、
 中規模洪水に当てはまったモデルが、
 大規模洪水に当てはまるかどうかはわからないという書き方で、
 それに対する結論を出さなかったんです。
 
 本来検証すべきことを検証されなかったと私は考えていますので、
 これは検証し直しをしなければいけないと思います。

 その際に、河川工学者だけで検証してはだめです。

 内輪の人間だけだとお互いにかばい合ってしまうので、
 それが今、世間から批判されていることで、
 それを根拠に何千億円という税金を使われるわけですから、
 納税者が納得できない。 

 
 
 河川工学者だけでこれをやると、なれ合いの検証になってしまいます。
 ですから、物理学者、あるいは確率統計の専門家を入れてください。
  
 

 降雨波形の生起確率は求められないと、
 小池先生はこの前おっしゃいました。
 

 降雨波形の生起確率を求める手段は、
 現在の水文学では確立されていません。

 でも、学術会議の回答書に何と書いてあるかというと、
 降雨波形の生起確率を求めて計算するのが総合確率法だと書いてある。
 言っていることと書いてあることが違う。

 『報告書を見てください。書いてあることを見ればわかります』と
 言っているんですけれども、見ても全くわかりません。

 書いてあることは、国民をだますような文言が並んでいるんです。」

(長くなったので続く)

 

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