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2014年8月

2014年8月30日 (土)

379.穴詰まり対策協議による既成事実化

 山形県では、最上小国川ダムに向けた既成(誤変換失礼しました)事実化がますます進んでいる。8月28日、小国川漁協、山形県、最上町、舟形町が行った協議で、穴詰まり対策案が示された。以下のように報道されている。

■穴詰まり対策 評価/小国川ダム(朝日新聞山形版 2014年8月29日)http://www.asahi.com/articles/CMTW1408290600001.html
■最上小国川ダム、県が協定案提示 漁協、2町と意見交換会(山形新聞2014年08月29日)
http://yamagata-np.jp/news/201408/29/kj_2014082900587.php
■最上小国川ダム:県、漁協など5者協議 治水と漁業振興、協定締結目指し /山形
(毎日新聞山形版 2014年08月29日)
http://mainichi.jp/area/yamagata/news/20140829ddlk06010202000c.html

これに対し、河川工学者である今本博健・京都大学名誉教授は、「最上小国川ダムの穴は小さいだけに穴づまりの懸念は簡単には解消できません。またこれだけの対策をすれば維持管理が大変です」とした上で、次のような見解を明らかにした。
 以下、そのままを転載する。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

山形県が平成26年8月28日に示した「穴づまり対策」について

 山形県は、漁協の意見・提案等、すなわち、
・洪水後の水が引いてからの流木等の撤去作業時に水を濁す懸念があるため、機械化による流木撤去
・流木を捕捉するため上流の砂防堰堤の活用
・穴づまりした場合などのバイパスとして転流工の活用
を受け、以下の多重的な対策案を実施するとしている。

①砂防堰堤の活用
・既設の砂防堰堤(流水型ダムより上流約100m地点)を改良し流木捕捉工として活用する。
②鋼製流木止めの設置
・流水型ダムより上流約2km地点へ流木捕捉工として新設する。
③仮締切堤の活用
・本体工事で使用した仮締切堤に通水路(スリット)を設け、流木捕捉工として再活用する。
④鋼製スクリーンの設置
・穴の上流側に鋼製スクリーンを設置し、洪水時の流木等による閉塞を防御する。
・通常の流れは阻害しないようにスクリーン下部の水深1m程度は常時開口状態とする。
⑤可動式穴づまり防止装置(維持管理板)の設置
・流木等が堆積した場合、また、万一、穴が閉塞した場合、維持管理板を上げ、通水断面確保や
 堆積物を流下させる。

 最上小国川ダムの常用洪水吐は1.7B×1.6Hと小さく、穴づまりの可能性が大きい。そのことを認識して多重的な対策案を実施するとしたのであろうが、その効果には疑問が多い。

 ①の砂防堰堤の活用については、すべての流木を完全に捕捉することが不可能なうえ、砂防堰堤の設計では上部に流木捕捉工を設置することを想定しておらず、流木を捕捉することにより砂防堰堤自体が破壊される恐れがある。

 ②の鋼製流木止めの設置については、流木止めより下流で発生する流木はそのままであり、上流からくる流木を完全に捕捉することは不可能である。

 ③の仮締切堤の活用については、巨礫の捕捉工としての効果は期待できても、浮遊して流下する流木の捕捉は期待できない。

 ④の鋼製スクリーンの設置については、他の穴あきダムでも採用されているが、スクリーンの前面に巨礫が堆積すれば穴が詰まったと同じ状態になる。スクリーンを設置することにより、それがなければ流下する土石まで捕捉されることになり、穴づまりの可能性を大きくしかねない。

 ⑤の可動式穴づまり防止装置(維持管理板)の設置については、自然放流の穴あきダムに流量調節ゲートをつけたことになり、どのように操作するかが問題になる。穴が閉塞した場合、ゲートを上げることで堆積物が流下するとは限らない。

 以上のように、ここに示された対策はいわば「思いつき」程度のもので、穴づまりの懸念を解消するものではない。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2014年8月28日 (木)

378. 水産庁は開発と漁業の関係を見直すべき

最上小国川ダムで問われる水産庁の役割 2014年08月18日 
http://astand.asahi.com/magazine/wrbusiness/2014081700001.html
をウェブロンザに書いたが続報する。実はこ並行して水面下で新たな動きが起きていた。 

8月11日「漁協は漁業補償を求めない」?
それは目を疑うニュースだった。8月12日の山形新聞朝刊が、山形県側が漁協に「漁協は漁業補償を求めない」との内容を盛り込んだ覚書素案を提示したとすっぱ抜いた。

山形新聞の記事について熊本教授は、県は2つの点で間違っていると語っていた。

「第1に、補償を受ける者は、漁業権や財産権を持つ権利者ですから、漁協に補償を求めないよう要請するのは、相手を間違えています。第2に『補償額はゼロ』と示すのならともかく、『補償を求めない』ことを補償相手に要求することは間違いです。」

たとえて言うなら、これは「加害者が、加害行為を行なう前に、被害者に対して『加害行為をしても補償(損害賠償)を求めないことを約束するように』と要請しているということであり、常識的に見ても明らかに誤りです」(熊本教授)と言うのである。

このスクープが出た直後に山形県水産振興課に確かめたところ、8月11日に県と漁協の協議が行われたのは、洪水時にダムの穴に流木が詰まる対策に関するものであり、漁業補償については次回以降になる予定と、屁理屈を言った(ダムの穴の話はダムに同意を与えての話であり、順番がひっくり返っている)。

しかし、山形新聞の記事については、「協議は非公開なのでお答えしかねる。漁業補償については、交渉中である」と口ごもった。とりまとめはダム建設を推進している県土整備部であると水産振興課は述べていた。上下関係で言えば、山形県では「開発」が「水産資源保護」よりも上になってしまっていることを示す。

6月7日「流水型ダムによる治水対策等の受け入れについての件」
冒頭の記事で問題にした通り、水産業協同組合法50条第4項は、漁業権の変更には、漁協組合員の3分の2以上の賛成による「特別決議」を必要とする。

==============================
(特別決議事項)
第五十条  次の事項は、総組合員(准組合員を除く。)の半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合)以上が出席し、その議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合)以上の多数による議決を必要とする。
(略)
四  漁業権又はこれに関する物権の設定、得喪又は変更
===============================

また、次の段階に進むとすれば、漁業補償については組合員全員の同意がいる。

ところが、ダム絶対反対の組合長の自死後、就任した推進派組合長のもとで、組合総代会が開かれ、漁業権侵害が起きる事項にもかかわらず、「流水型ダムによる治水対策等の受け入れについての件」とオブラートに包んで過半数の賛成でよい「普通決議」にかけた。結果は、過半数が賛成(103人中、賛成57、反対46)というものだった。

3分の2にはほど遠い。法律を読むことを得意としない人々を相手に赤子の手をひねるかのごとく、過半数を越えたという「普通決議」でダム建設容認ムードをジワジワ作り、諦めさせ、いかなる手段を使ってもダムを作らせたいという見えない力が見える。

8月27日、やっぱりゼロか限りなくゼロに近い漁業補償

今朝、県と漁協の間で昨日行われた非公開協議の内容を各紙が伝えている。

漁業補償110万 県が試算 小国川ダム協議 2014年08月28日 読売
http://www.yomiuri.co.jp/local/yamagata/news/20140827-OYTNT50431.html
山形)漁協と県が補償交渉 最上小国川ダム建設 2014年08月28日朝日
http://digital.asahi.com/articles/ASG8W6DVMG8WUZHB00D.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG8W6DVMG8WUZHB00D

「県側は、100万円ほどを県が補償する内容と、金銭的な補償を行わない内容の2案を提示した」とある・・・。

水産庁は、戦後、なぜ、内水面漁業(川や湖沼の漁業のこと)が衰退してきたのかを考える機会とすべきなのではないか。開発とは相容れない海や川の漁業をどう失ってきたのか、なぜ、失ってきたのか。ウナギはなぜ絶滅しかけているのか、考えて見るべきではないか?

2014年8月24日 (日)

377.秘密保護法制3つのパブコメ

本日が締め切りの秘密保護法制に関する3つのパブコメのうち、
以下の三階層の二つ■について書きました。
二つは連動しているので、コピペですませてしまったものもあります。
抜けているものもある不十分なものですが(今晩までに追加意見で送るかも)、
誰かの参考になるかならないか分かりませんが、公開します。

======================
 特定秘密保護法
  ↓
■秘密保護法施行令(案) 法律より細かい http://bit.ly/1rD6BA0
  ↓
■運用基準(案) 施行令をもっと細かくしたもの http://bit.ly/1z6pa0o
======================

あちこちで流れている意見も大いに参考にさせていただきました。
冒頭の基本的考え方は、別ブログにアップするための記事の一部です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「特定秘密の保護に関する法律施行令(案)」に対する意見
内閣官房特定秘密保護法施行準備室御中

項目ごとに意見を記す前に基本的な考え方を記す

【基本的な考え方】
この法律は、「安全保障」を「国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家
及び国民の安全を保障すること」と呼び、安全保障に関する情報のうち「特に秘
匿することが必要であるものを「指定」、その「取扱者の制限」を行うために
「適正評価」を行う体制を作って、秘密の漏えいを防止することを目的としてい
る。

いわば戦争状態を前提とした法律であり、平和憲法を持つ日本には必要がない。
政府に対しては、2つの問いを反映した対応を願いたい。

第一に、好戦的に考えた場合、秘密を守れるか人物かどうかを「適正評価」して、
守れそうな人にだけ制限をして秘密を守るという極めて内向きな「体制」に、意
味はあるのか?第二に、厭戦的に考えた場合、先の戦争から考えて、あまりにも
無反省ではないか?

第一の点を考えてみる。戦後、古くは「エシュロン」(米国、英国、カナダ、オー
ストラリア、ニュージーランドが行っている軍事目的の通信傍受システム)、今
となっては米国の国家安全保障局(NSA)が通信監視プログラム「プリズム」によ
って、情報「漏洩」ならぬ、国家による「傍受」「盗聴」が行われていることは
誰もが知っている。

エシュロンについては、欧州議会が報告書「REPORT on the existence of a
global system for the interception of private and commercial
communications (ECHELON interception system) (2001/2098(INI))」を出してい
るが、米国はその存在すら認めていないと言われ、プリズムは、その存在を暴露
したエドワード・スノーデンは本国アメリカにはいられなくなっている。

後者のプリズムによって、米国がメルケル独首相ら35人の外国首脳の電話など
を盗聴していたとされる問題で、オバマ大統領自身が「諜報機関を持つ国ならど
の国でもやっていることだ」(『オバマ大統領「情報機関がある国はどこでもや
ること」』朝日新聞2013年7月2日)と開き直り、米国クラッパー国家情報
長官も、2013年10月29日の下院情報特別委員会の公聴会で、盗聴を認め
る証言を行った(『NSA盗聴問題、米情報長官認める』VOV5、2013年10月
30日)。

オバマ大統領の開き直りを肯定したとしたら、日本の持つ情報など米国はもちろ
ん全方位的に筒抜けではないか。わざわざ時間と税金と貴重な人材を使って、職
員や関係業者をアナログな方法で適正評価を行って「秘密」を守る政策の優先性
はどこにあるのか。国家公務員法第100条で「職員は、職務上知ることのでき
た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」で十分
ではないか。これに多少の罰則と公益通報に関する例外を加えればよいだけの話
である。

第二の点を考えるために、第二次世界大戦を考えてみよう。また日本が自衛隊を
派遣したイラク戦争を考えてみよう。なぜ起き、なぜ拡大し、多くの人命を失っ
てなお、なぜ、なんの問題解決にも至らないのかと考えるとき、それは真実が隠
され、曖昧にされ、時として意図的または非意図的に誤った情報が流布され攻撃
や侵略に至ったからではなかったかと思わないか。そしてそれは次の火種を残す
こととなったという事実を鑑みれば、戦争にどのような意味があるというのか。
そのための秘密保護になんの意味があるのか。

それらの検証を日本は行ったか。靖国神社には軍人たちが祀られているが、本土
や沖縄の日本国土で犠牲となった一般国民は祀られていない。誰が加害者で誰が
犠牲者なのか、最終的には誰が加害者でも被害者でも、次の戦争につながる殺し
合いでしかないことを学ばなかったのか。

時として、誤った情報収集や活用により、なかった大量破壊兵器があったことに
され、世界を巻き込む戦争が起きたのではなかったか。もっと言えば、結果的に
(現時点ではまだ)専守防衛の憲法を持った日本の情報を傍受することに力を注
いだ国はあったのか。

先の戦争に加え、戦後の日本が「平和憲法」を維持することによって得た特異な
国際的な立場から考えて、あまりにも無反省ではないか?

「国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障するこ
と」という、この法律の根幹を考える上では、戦争を前提とした秘密保護法を廃
止し、閣議決定による集団的自衛権の解釈を捨て去る方が、よほど国民の安全は
守られると考える。

以下、項目ごとの意見とその理由を述べる。

●第4条(指定に関する記録の作成)について

【提案1】「指定および解除を適切に管理するための帳簿」に記載する事項に
「指定を行った責任者名(決済者全員の肩書と氏名)」を新たに加えるべき。
   提案理由:無責任な指定を回避するため

【提案2】 「二項 指定の有効期間及びその満了する年月日」について。「公
文書管理法第5条において定められた保存期間及び保存期間の満了日を超えないこ
とを確認の上」を追加する。
   提案理由:解除後の検証を可能とするため、また検証されることにより無
責任な指定の回避を担保するため

●第11条 (指定の解除に伴う措置)について

【提案3】二項 「当該指定を解除した旨及びその年月日を書面により通知する」
相手先に、情報公開法に基づく開示請求が行われ、不開示通知を出した者を加え
ること。
【提案4】三項 「特定秘密指定管理簿に当該指定を解除した旨及びその年月日
を記載し、又は記録すること」にインターネット上に公開することも加えること。

   提案理由:開示請求者に対し、秘密指定解除がなされた時点で非開示の処
分を取り消す通知するのは、当然であると考える。ただし、移転や死去ににより、
開示請求者に届かない場合が考えられるので、インターネット上に公開に公開す
ることは道義的、技術的に合理的である。

●第12条 (行政機関の長による特定秘密の保護措置)について
【提案4】十項 「特定秘密文書等の奪取その他特定秘密の漏えいのおそれがあ
る緊急の事態に際し、その漏えいを防止するため他に適当な手段がないと認めら
れる場合における焼却、破砕その他の方法による特定秘密文書等の廃棄」を削除

   提案理由:これは戦闘現場を想定した条項であると考える。専守防衛しか
想定できない日本の平和憲法では、この条項の必然性がないからである。

●第14条~23条の「適性評価」および「適合事業者」について
【提案5】以下の趣旨に無関係な条項はすべて削除する。
 行政機関職員については、国家公務員法第38条の他、「国家公務員法第43
条  第四十四条に規定する資格に関する制限の外、官職に就く能力を有しない者
は、受験することができない。」、「国家公務員法第44条  人事院は、人事院
規則により、受験者に必要な資格として官職に応じ、その職務の遂行に欠くこと
のできない最小限度の客観的且つ画一的な要件を定めることができる。」、国家
公務員法第100条で「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはなら
ない。その職を退いた後といえども同様とする」で十分である。
 適合事業者については、事案に応じて守秘義務契約を細かく定めることが合理
的である。

========

「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を
図るための基準(仮称)(案)」に対する意見

内閣官房特定秘密保護法施行準備室御中

項目ごとに意見を記す前に基本的な考え方を記す。

【基本的な考え方】
この法律は、「安全保障」を「国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家
及び国民の安全を保障すること」と呼び、安全保障に関する情報のうち「特に秘
匿することが必要であるものを「指定」、その「取扱者の制限」を行うために
「適正評価」を行う体制を作って、秘密の漏えいを防止することを目的としてい
る。

いわば戦争状態を前提とした法律であり、平和憲法を持つ日本には必要がない。
政府に対しては、2つの問いを反映した対応を願いたい。

第一に、好戦的に考えた場合、秘密を守れるか人物かどうかを「適正評価」して、
守れそうな人にだけ制限をして秘密を守るという極めて内向きな「体制」に、意
味はあるのか?第二に、厭戦的に考えた場合、先の戦争から考えて、あまりにも
無反省ではないか?

第一の点を考えてみる。戦後、古くは「エシュロン」(米国、英国、カナダ、オー
ストラリア、ニュージーランドが行っている軍事目的の通信傍受システム)、今
となっては米国の国家安全保障局(NSA)が通信監視プログラム「プリズム」によ
って、情報「漏洩」ならぬ、国家による「傍受」「盗聴」が行われていることは
誰もが知っている。

エシュロンについては、欧州議会が報告書「REPORT on the existence of a
global system for the interception of private and commercial
communications (ECHELON interception system) (2001/2098(INI))」を出してい
るが、米国はその存在すら認めていないと言われ、プリズムは、その存在を暴露
したエドワード・スノーデンは本国アメリカにはいられなくなっている。

後者のプリズムによって、米国がメルケル独首相ら35人の外国首脳の電話など
を盗聴していたとされる問題で、オバマ大統領自身が「諜報機関を持つ国ならど
の国でもやっていることだ」(『オバマ大統領「情報機関がある国はどこでもや
ること」』朝日新聞2013年7月2日)と開き直り、米国クラッパー国家情報
長官も、2013年10月29日の下院情報特別委員会の公聴会で、盗聴を認め
る証言を行った(『NSA盗聴問題、米情報長官認める』VOV5、2013年10月
30日)。

オバマ大統領の開き直りを肯定したとしたら、日本の持つ情報など米国はもちろ
ん全方位的に筒抜けではないか。わざわざ時間と税金と貴重な人材を使って、職
員や関係業者をアナログな方法で適正評価を行って「秘密」を守る政策の優先性
はどこにあるのか。国家公務員法第100条で「職員は、職務上知ることのでき
た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」で十分
ではないか。これに多少の罰則と公益通報に関する例外を加えればよいだけの話
である。

第二の点を考えるために、第二次世界大戦を考えてみよう。また日本が自衛隊を
派遣したイラク戦争を考えてみよう。なぜ起き、なぜ拡大し、多くの人命を失っ
てなお、なぜ、なんの問題解決にも至らないのかと考えるとき、それは真実が隠
され、曖昧にされ、時として意図的または非意図的に誤った情報が流布され攻撃
や侵略に至ったからではなかったかと思わないか。そしてそれは次の火種を残す
こととなったという事実を鑑みれば、戦争にどのような意味があるというのか。
そのための秘密保護になんの意味があるのか。

それらの検証を日本は行ったか。靖国神社には軍人たちが祀られているが、本土
や沖縄の日本国土で犠牲となった一般国民は祀られていない。誰が加害者で誰が
犠牲者なのか、最終的には誰が加害者でも被害者でも、次の戦争につながる殺し
合いでしかないことを学ばなかったのか。

時として、誤った情報収集や活用により、なかった大量破壊兵器があったことに
され、世界を巻き込む戦争が起きたのではなかったか。もっと言えば、結果的に
(現時点ではまだ)専守防衛の憲法を持った日本の情報を傍受することに力を注
いだ国はあったのか。

先の戦争に加え、戦後の日本が「平和憲法」を維持することによって得た特異な
国際的な立場から考えて、あまりにも無反省ではないか?

「国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障するこ
と」という、この法律の根幹を考える上では、戦争を前提とした秘密保護法を廃
止し、閣議決定による集団的自衛権の解釈を捨て去る方が、よほど国民の安全は
守られると考える。

以下、項目ごとの意見とその理由を述べる。

●「Ⅱ 特定秘密の指定等」について

【提案1】P.9「(4) 特に遵守すべき事項」を「(4) 秘密に指定に関する例外
事項」に変更して、以下の事項を加えること。

【提案1-1】・情報のもたらす公益が、公開によって生じる損害を上回るとき
には、その情報は秘密に指定してはいけない。
【提案1-2】・人々が知る権利を有する政府の活動に関する情報や、国内法や
国際人権の原則を侵害する行為を説明する情報も秘密指定されてはいけない。
【提案1-3】・汚職、人権侵害、その他の刑事犯罪、公衆衛生や安全に関する
情報は秘密に指定してはいけない。

以上は、アメリカ合衆国の米外交・安全保障の専門家 モートン・ハルペリン氏
の意見(出典:http://www.himituho.com/%E3%83%8F%E3%83%AB%E3%83%9A%E3%83%AA%E3%83%B3%E6%B0%8F%E3%81%AE%E3%83%91%E3%83%96%E3%82%B3%E3%83%A1/
)であり、これに賛同し、提案する。(米国大統領令(E.O.13526)の3.1(d)
節は、政府職員はある情報の秘密指定の解除をするかどうか考慮する際、「その
情報の公開により当然予期される安全保障に対して生じうる危険を、公開による
公益が上回るかどうか」を判断しなければならないと規定しているという)

   提案理由:特定秘密保護法第3条第1項に基づく別表は、秘密指定の対象
とする情報としてて、防衛、外交、特定有害活動、テロリズムについて、あまり
にも広すぎる範囲を指定しているため。

●P.11「4 指定の有効期間の設定」
【提案2】秘密指定の有効期限は、公文書管理法第5条において定められた保存期
間及び保存期間の満了日を超えてはならないことを追加する。廃棄する場合は、
保存期間が最低でも10年は上回るようにすること。
   提案理由:闇から闇へ秘密が葬りさられるのを回避し、検証を可能にする
ためである。

●P.11「Ⅲ 特定秘密の指定の有効期間の満了、延長、解除等」について
【提案3】秘密指定の有効期限を延長した場合は、自動的に保存期限も同程度延
長しなければならない。
【提案4】移管・廃棄の検証のために特定秘密移管廃棄簿を作成し、保存期間の
満了、国立公文書館等への移管もしくは廃棄を記載して、永年保存すべきである。
   提案理由:闇から闇へ秘密が葬りさられるのを回避し、検証を可能にする
ためである。

●P.11「6 指定した特定秘密を適切に保護するための規程」について
【提案5】「 (1) 施行令第 12 条第1項に規定する規程(以下「規程」という。)
には、同条各号に掲げる措置及び特定秘密の保護に関する業務の実施体制の構築
その他特定秘密を適切に保護するために必要な事項を定めるものとする。特に、
施行令第 12 条第 1 項第 10 号に掲げる緊急の事態に際する特定秘密文書等の廃
棄について、危機管理に万全を期すため、その実施手続その他必要な事項を定め
るものとする。」を削除
   提案理由:  これは戦闘現場を想定した条項であると考える。専守防衛しか
想定できない日本の平和憲法では、この条項の必然性がないからである。

●P.12 「指定時又は延長時に定めた有効期間が満了する場合」について
【提案5】有効期限が満了した場合、または指定の解除が行われた場合、それ以
前に情報公開法に基づく開示請求が行われ、不開示通知を出した者にその旨を通
知した上で、インターネット上に公開することも加えること。
 したがって、指定された秘密を含む行政文書の開示請求および不開示の記録は
保存を必須とする法改正を関係法に新たに加えるべきである。
   提案理由:開示請求者に対し、秘密指定解除がなされた時点で非開示の処
分を取り消す通知するのは、説明責任を果たす上で当然であると考える。ただし、
移転や死去ににより、開示請求者に届かない場合が考えられるので、インターネ
ット上に公開に公開することは道義的、技術的に合理的である。

●P.14~27「適性評価」および「適合事業者」について
【提案6】 以下の趣旨に無関係な条項はすべて削除する。
 行政機関職員については、国家公務員法第38条の他、「国家公務員法第43
条  第四十四条に規定する資格に関する制限の外、官職に就く能力を有しない者
は、受験することができない。」、「国家公務員法第44条  人事院は、人事院
規則により、受験者に必要な資格として官職に応じ、その職務の遂行に欠くこと
のできない最小限度の客観的且つ画一的な要件を定めることができる。」、国家
公務員法第100条で「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはなら
ない。その職を退いた後といえども同様とする」で十分である。
 適合事業者については、事案に応じて守秘義務契約を細かく定めることが合理
的である。

====

2014年8月15日 (金)

376.川内原発バブコメ出しました

以下は、夏休み前に原子力規制委員会に出しそびれ、いえ、というか記事にしそびれたことを泣く泣く、情けない思いで、一国民としてパブコメにして出したものです。私にしてはめったにやらないことですが、家族連れで車で移動する旅をしながら、朝ご飯前に書き(夜明け前から皆が朝風呂している間)、朝ご飯後に仕上げて、宿の無線LANで原子力規制委員会のパブコメ欄に締め切り日に送り、再び移動しながら別の仕事の原稿を仕上げて、無線LANのつながるポイントを探して駐車して記事を送ることに付き合わせして・・・・。慣れないiPadでイライラマックス。送ったあとはiphoneでコピペでこのブログを更新したわよいが、必要最低限のことがらを載せるだけで精一杯でツイートをして、そのまま力が尽きて半端な書き方のまま、少々ここを放置しておりました。

夏休みに入る前に途中下車して三重県伊賀市の治水現場を取材させていただきましたが、それもおいおい書き残していきたいと思っていますが、更新の止まっていたブログにまたも別のパブコメで書いた件をご参考までに載せようとしして再開しようとしてまずこの中途半端なコマに加筆しました(20140824加筆) 

~~~~~~~~~~~~~~

p13
「第4条は、設計基準対象施設が耐震重要度に応じた地震力に十分に耐えることが できる設計とすること」を求めていますが、申請および審査には欠如している点があります。

また、

p113
「重大事故等対処施設及び重大事故等対処に係る技術的能力」についても、申請および審査に欠如している点があります。

そこで、以下の審査に点を審査に加えることを求めます。

1.コアキャッチャー整備を義務付けることを求めます。【理由 過酷事故後3年してもメルトダウンした燃料がどこにあるか分からず、対処が困難であるという福島第一原発の教訓です。】

2・過酷事故時における学校、病院など子どもや弱者の利用する官民公共施設の避難計画と被曝防護策、自治体の住民を対象とした避難計画と被曝防護策、観光都市における観光客を対象とする自治体の避難計画と被曝防護策の策定を義務付け、それを安全審査に組み込み、避難計画と被曝防護策が未策定の主体がある場合は稼働を認めないとすることを求めます。【理由 避難できずに無用な被曝をした犠牲者をだした福島第一原発の教訓です】

3. 佐藤 正啓「原子力発電所における伸縮継手不具合事象の分析」http://www.inss.co.jp/seika/pdf/8/219.pdf で指摘されている課題を克服するための審査を加えることを求めます。【理由 過酷事故後3年しても、どこから汚染水が漏れているか全容が分からない中で、唯一、水漏れ箇所が判明したのが、サプレッションチェンバー付近の蛇腹の伸縮継手です。東電はその漏水の『海水による腐食』と推定する一方で、経年化と地震動によるという考え方も否定もできないと会見で回答しています。また、過酷事故如何にかかわらず、通常運転 においても、同分析によれば、日本と米国の原子炉について「調査の結果,1984 年から 2000 年までの間に伸縮 継手の不具合事象に係る 49 件の事象を収集した. 炉型別では PWR は 28 件,BWR は 21 件である」とされ、「伸縮継手の不具合事象の報 告は,原子炉トリップ等の安全系の作動によって LER 等の報告が行われることが多いため,実際に 発生している事象の一部と考えられるものの,いず れの炉型についてもほぼ同様に発生している」とされていることから、この部品の所在を確認して明らかにし、新設計や部品交換を含めた的確な対処を求めます。

p81
「大きな影響を及ぼすおそれがあると想定される自然現象に対する重要安全施設への考慮」
について、審査に欠如している点があります。

そこで、以下の審査に点を審査に加えることを求めます。

4.変電所を重要安全施設に加えて、耐震対策を義務付けることを求めます。【理由 福島第一原発事故時には、48施設が損壊した他、噴砂などを伴なう液状化、陥没を生じ、その復旧に膨大な時間と人員を費やし、無用な被曝をさせたことの教訓です。】

2014年8月 3日 (日)

375.役割を失った水資源機構の德山ダムと導水事業

 
 見ると、確かに今年の5月15日から「徳山水力発電所2号機」の営業運転を開始していたので、そのように訂正してお詫びしたが、こちらでも改めて中部電力のプレスリリースにリンクを張って、その詳細を書いておく。
 
2014年5月27日の中部電力のプレスリリース
「徳山水力発電所ですが、2つの発電機を備えた発電所で、このたび、営業運転を開始した2号機の出力は22,400kWです。徳山ダムからの河川維持に必要な放流水を利用して常時運転する、高稼動な電源となります。一方、1号機(出力131,000kW)につきましては、2015年6月の営業運転開始を目指し引き続き建設を進めてまいります。」
 
構想から57年
 この德山ダムは1957年、揖斐川上流に電源開発促進法に基づく調査区域に指定された。一時期は「揚水ダム」といって原発の夜間電力で汲み上げてまた発電する上下2つで1セットのダムが構想されていたが、下ダムは中止となった。1976年から水資源開発公団(現・水資源機構)が事業を進めてきたが、完成したのは2008年だ。
 
 このダム事業の実態を拙著『水資源開発促進法 立法と公共事業』から一部抜粋する。
 
上げ底4割、年3回の観光放流をする德山ダムの今
「 一九九一年~一九九三年に行われた木曽川水系フルプランの協議では、徳山ダムを進めようとする国土庁原案に対し、建設省以外の関係省が「根拠なき計画は削除すべき」と主張したことが岐阜県図書館に収蔵された「木曽川水系における水資源開発基本計画全部変更協議経緯」と「木曽川水系水資源開発基本計画全部変更基礎資料」に記録されていた。
 
 筆者が二〇〇〇年に岐阜県庁に徳山ダムに関する取材を試みたときには、担当部局を探すことに難儀した。ご当地である揖斐川のある西濃地域は地下水が豊富でダムの水は不要、治水については国が所管しているので分からないという立場だった。岐阜県は受益自治体として財政負担をさせられることが分かっていながら、その理由を説明できる部局がなかった
 
 建設事業費一五〇〇億円の予定が、二〇〇八年に完成したときには三三四一億円に膨れ上がり、岐阜県の負担は二〇パーセントの六八一億円、しかし利息を含めると一一五七億円となり二〇五二年まで払うことになった。これには管理費は含まれない。
 
 最大の受益者である名古屋市は、完成前に水利権の半分を返上した。しかし、長良川の東側に位置し、長良川の水さえ余らせている名古屋市に、その川を西に越えた揖斐川の水がいるはずもない。図表5-5はなんとも虚しい徳山ダムの貯水容量の内訳である。
 
(略)
 
 七番目が発電の二%だが、先述したように上げ底分も加え、四割が発電容量のようなものだ。
 
 「底水」「不特定」「渇水対策」と次々と繰り出された建設の理屈は、水資源開発促進法に基づく「広域的な用水対策を緊急に実施する」目的とは余りにも乖離があり、建前に過ぎず、その歪みは「費用負担」に現れる。
 
 水資源機構中部支社総務課によれば、容量内訳では二割に過ぎない治水が負担の六割をかぶる。容量内訳四割を占める発電を担う中部電力の負担は一・四割でしかない。
 
 建設費から算定する一キロワットあたりの発電コストは、二〇〇〇年七月に故・石井紘基衆議院議員が質問主意書で尋ねたときには、一九八五年の当初予算一五〇〇億円をもとにした単価計算で一キロワットあたり三五万円であると国が試算を明らかにした。当時は揚水式発電が予定され、下ダムの建設費と発電所の建設費も含まれていた。しかし、下ダムの建設は中止され、建設費は倍増したため、単純に計算すれば一キロワットあたり七〇万円以上となる。二〇一二年四月の経済産業省の調達価格算定委員会資料によれば、建設コストで比べると、太陽光(非住宅用)で三二.五万円/キロワット、住宅用で四八万円/キロワット、風力で三〇万円/キロワットとされているので安くはない。
 
 ダム計画と同時期に、一九八二年一二月の第九〇回電源開発調整審議会で電源開発基本計画に位置づけられた徳山ダム発電所の事業主体であった電源開発株式会社は、その後、撤退し、中部電力だけが、最大で唯一と言っても良い徳山ダムの恩恵を受けることとなる。運転開始は二〇一四年となる。このダムを長期にわたって推進した梶原拓元岐阜県知事は元建設官僚だった。」 (P.112~114より抜粋)
 
 抜粋終わり。
 
 そんなわけで、2012年にこの本を出させていただいた際に「2014年」に運転開始されることになっていたる15万3400kWのうち2万2400kW(7分の1程度)の発電がこのリリースにあるような小屋で始まったが、フルに発電してもダムの目的の2%分に過ぎない。
 
 発電と同時に予定され、確保された水道・工業用水は、いまだに一滴も使っていない。もう一度繰り返すが、このダムの根拠法である水資源開発促進法の目的である「広域的な用水対策を緊急に実施する」こととは余りにも乖離しているのである。




 
 
 

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