« 2014年5月 | トップページ | 2014年7月 »

2014年6月

2014年6月29日 (日)

364.東京の杉原浩司さんの呼びかけ

過ぎたものもありますが、丸ごと転載します。

===================

東京の杉原浩司(秘密保護法を考える市民の会)です。
[転送・転載歓迎/重複失礼]

公明党の山口那津男代表をはじめとする執行部、そして与党協議メンバー
が閣議決定案の実質合意に舵を切ったと報じられています。7月1日の閣議
決定が現実味を増してきました。本当に崖っぷちの局面ですが、粘り強く
出来ることをやっていきたいと思います。週末に出来ること、たくさんあ
ります。可能な範囲でぜひご参加、ご協力ください!

集団的自衛権行使容認 来月1日閣議決定へ(6月27日、NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140627/t10015546261000.html

公明・北側副代表、党内の意見集約に自信(6月27日、TBS)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2236173.html

「解釈改憲でなく再整理」 集団的自衛権めぐる「想定問答集」の概要判明
(6月27日、産経)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140627/plc14062708480008-n1.htm

集団安全保障を容認 政府、想定問答集に明記(6月27日、東京夕刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014062702000280.html

【アクション提案】
・本日、公明党地方代表への緊急アピール行動へ!
・自民党総務会のキーパーソンに大至急ファックスを!
・土壇場、公明党議員にファックスで要請を!
・地元の公明党地方議員に大至急要請を!
・7月1日の閣議決定を許さない!連続官邸前行動へ!

---------------------------------------

★本日の緊急アクションです!

踏みとどまってよ!公明党
がんばれ!地方代表
~閣議決定ありきのアリバイ説明会にしないで!~
6・28 公明党本部周辺アピール行動

6月28日(土) 11時30分~12時30分
             <11時30分にJR信濃町駅改札外に集合します。>

◇党本部での説明会は12時30分~15時の予定です。駅周辺から党本部にか
けての場所で、横断幕やプラカードを掲げて、地方代表にチラシを配布し
ながらアピールします。

※当日、公明党本部周辺の警備が厳しくなることも予想されます。地方代
表への激励行動として、平和的に行いたいと思いますのでご了解ください。

<呼びかけ>

集団的自衛権の行使に道を開く解釈改憲の閣議決定が7月1日に強行され
ようとしています。山口那津男・公明党代表は、所属議員の会合で批判が
噴出し、意見集約ができておらず、また地方の意見を汲み取っていないに
も関わらず、集団的自衛権の行使を容認する考えを表明しました。

そして、7月5日の地方代表者会議の前、6月28日に地方代表を緊急招集
して、集団的自衛権問題の説明会を行おうとしています。これは、はじめ
に閣議決定ありきのアリバイ説明会に他なりません。

山口那津男・公明党代表が5月20日の記者会見で、「人の生き死にに関
わる集団的自衛権の問題に関して、取り引きで安易に妥協することはあり
得ない」と明言されてから、1ヶ月ほどしか経っていません。

私たちは今までも公明党に対して、平和主義の「命綱」としての役割を
果たしてほしいと訴えてきました。この土壇場で、地方代表に、「解釈改
憲に反対する声を党執行部にぶつけてほしい」「少なくとも7月5日の地方
代表者会議を待って最終判断するよう、執行部に要求してほしい」と直接
訴えかけたいと思います。緊急のご案内ですが、ぜひご参加ください。

呼びかけ:秘密保護法を考える市民の会
   http://stophimitsu.cocolog-nifty.com/
          連絡先 090-6185-4407(杉原)

※6月17日に公明党本部前ヒューマンチェーンを、24日には公明党全国会
議員事務所への要請行動を呼びかけた、市民有志で作るグループです。

---------------------------------------

★自民党総務会のキーパーソンに大至急ファックスを!

30日(月)にも行われる正式な与党合意を受けて、当日中にも自民党の総
務会で了承手続きが行われます。既に自民党執行部は慎重派議員に対する
根回しを始めています。今こそ、自民党内のチェック能力を発揮すべき時
です。解釈改憲に反対するよう、議論を尽くすよう、声を届けてください。
以下にキーパーソンとなる議員をまとめました。ご活用ください。

【自民党総務会キーパーソンのFAXリスト】 (文責:杉原)

注)◎は反対の人:「がんばって」と激励を。
○は慎重と思われる人:「しっかり声をあげて」と。

◎会長:野田聖子(岐阜1区) (FAX)03-3591-2143
○会長代理:森山裕(鹿児島5区)(FAX)03-3508-3714
○副会長:岸宏一(山形) (FAX)03-6551-0315
○副会長:武見敬三(東京) (FAX)03-6206-1502
○総務:大島理森(青森3区) (FAX)03-3508-3932
○総務:金子恵美(新潟4区) (FAX)03-3508-3722
○総務:渡海紀三朗(兵庫10区) (FAX)03-3508-3613
○総務:野田毅(熊本2区)   (FAX)03-3501-7538
◎総務:村上誠一郎(愛媛2区)  (FAX)03-3502-5172
○総務:金子原二郎(長崎) (FAX)03-6551-1202
○総務:木村義雄(比例) (FAX)03-6551-0305

<全員のリストはこちらから>
自民総務会FAXリスト
呼びかけ http://kyujokowasuna.com/?p=385
一覧表 http://bit.ly/1nLWByT

---------------------------------------

★土壇場、公明党議員にファックスで要請を!

25日、26日に引き続いて、来週30日にも公明党所属議員による会合が行わ
れます。党執行部は30日の会議で「一任」を取り付け、7月1日の与党協議
での正式合意になだれ込もうとしています。まだぎりぎり間に合います。
公明党議員に対して、ファックスや電話で働きかけてください!

※短いものでも構いません。一人ひとりの言葉で、思いを込めたメッセージを。
例)
・世論調査でも議論が不十分との声が圧倒的多数です。拙速な閣議決定は
やめてください。
・7月5日に行われる公明党の地方代表者会議の前に結論を出すのはおかしい
です。きちんと地方の声を受け止めるべきです。
・山口代表の「人の生き死にに関わる集団的自衛権の問題で安易な妥協は
あり得ない」(5月20日記者会見)との発言に責任を持ってください。

【党代表】
山口那津男(東京) FAX:03-6551-0806

【国土交通大臣】 ※「閣議で絶対に了承しないで」
太田昭宏(東京) FAX:03-3508-3519

◆国会議員FAX名簿(解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会)
※冒頭に公明党の全議員リスト
http://bit.ly/1n6mdLh
<執行部ではない議員に確実に声を届けることが重要です!>

◇電話できる方は
衆議院は 03-3581-5111
参議院は 03-3581-3111
にかけて議員名を伝えれば、議員事務所につないでくれます。

---------------------------------------

★地元の公明党地方議員に大至急要請してください!
(「7月5日の地方代表者会議前に閣議決定しないで」と執行部に伝えて)

公明党執行部は7月5日(土)の「全国県代表協議会」前に閣議決定を認め
ようとしています。6月28日の地方代表を緊急招集しての説明会をアリバ
イづくりにしてはいけません。地方の声(地方議員は2954人!)を無視す
ることは許されません。

以下の公明党HPから、お住まいの地域で検索して、地元議員に「地方
の声を聞かないまま閣議決定しないで」と党執行部に対して声をあげるよ
う要請してください!

公明党 所属議員検索
https://www.komei.or.jp/member/

※「議員を探す」の「複数条件から探す」から、都道府県、市区町村名を
入力して検索すれば、議員情報が見られます。

---------------------------------------

★来週、7月1日(火)17時30分からの臨時閣議で閣議決定すると言われて
います。大詰めのアクションにぜひ参加してください。

閣議決定で「戦争する国」にするな! 官邸前行動
(解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会)
6月30日(月)18:30~19:30(19:30~ 戦争をさせない1000人委員会)
7月1日(火)午前9:30~10:30(1000人委員会と共同行動)
7月1日(火)17:00~(1000人委員会と共同行動)

2014年6月28日 (土)

363.決意、誰のためか

口先で「集団的自衛権」を協議している政治家達に腹が立ってきた。

3.11直後、考えに考えて「福島原発暴発阻止行動プロジェクト」を呼びかけた山田恭暉さんが6月17日に亡くなった。山田さんについて書いた原稿を読み返し、その「決意」の対比で、腹が立ってきた。

立ち向かうべき「闘い」は、遠いシーレーンや飛んでくるミサイルにあるのではない。今、相変わらずそこに続いている危機である東京電力の福島第一原発の後始末ではないか。

被曝の制限で一〇分、一五分で帰ってこなければならない中ではまともな設備は作れない。三、四時間続けて作業をしなければというのが私たち技術者の実感。ロボットを使うにしても、手で触りながらやらないとできない仕事が残る。誰がそれをやるか。自衛隊がやればいいと言う人がいるが、若い奴にやらせるわけにいかない」。

2011年4月、山田さんは、退役技術者のプライドをかけてプロジェクトを立ち上げた理由をそう語った。その思いを遂げることができずに亡くなったことは、本人にとっては無念、ご家族にとっては安堵なのかもしれない。

「集団的自衛権」を協議している政治家達よ。「福島第一原発」にある危機を、あたかもなくなったものであるかのように振る舞い、作ろうと思えば作れる国家間の平和を脅かし、前世紀の遺物となるべき国家主義を持ち出して、悦に入っている政治家達よ・・・!

==================

高齢技術者「若い奴にはやらせない」
原発暴発阻止プロジェクト(2011/4/22)週刊金曜日アンテナより 自己抜粋

 福島原発を注視する技術者、山田恭暉さん(七二歳)がこのほど「福島原発暴発阻止行動プロジェクト」を呼びかけている。山田さんは住友金属工業で技術者として三〇年勤続した経験をもとに、技術者仲間との議論の末、以下のような決意を呼びかけた。

 (1)原発の暴発を防ぐには、一〇年作動する冷却設備を設置しなければならない(2)高度に放射能汚染された環境下での作業となる(3)それができなければ広範な汚染が発生する可能性がある(4)阻止するには、現場作業や技術を蓄積した退役者たちが次世代のために働くしかない。

 当然、被曝するわけであり、大半の人間は賛否の判断にとまどう。「人のせいにしているのは気楽なことですけども、我々は原発で作った電気を享受し、それを許してきた」と山田さんは決意の理由を次のように語る。「被曝の制限で一〇分、一五分で帰ってこなければならない中ではまともな設備は作れない。三、四時間続けて作業をしなければというのが私たち技術者の実感。ロボットを使うにしても、手で触りながらやらないとできない仕事が残る。誰がそれをやるか。自衛隊がやればいいと言う人がいるが、若い奴にやらせるわけにいかない」。

 実現の道筋も探り始めている。「東京電力に言っても受け付けないでしょう。政治の力を使わない限りこのプロジェクトは実現しない」との認識で政治家と話し、「長期にわたる国の体制として退役した元技能者・技術者のボランティアによる行動隊を作ることを提案」したいと呼びかけ文に記した。「原発専門の技術者に聞くと数カ月なら応急措置でも回せる。その間、作業の訓練を一、二カ月行なう。技術者といっても原発作業の専門家ではありませんから」と実現可能性を追求する。

 「反対や批判は承知の上。だけど最悪のシナリオを書いて、やらなければいけないことからやる。これは技術者が心をこめてやらなければ。報酬があってやっちゃダメです」と捨て身である。

 五〇〇通のメール、二〇〇〇通の封書で呼びかけを始め、すでに二五人が参加を表明した。この覚悟を東電と政府はどう受け止めるのか。

==================

「福島原発暴発阻止行動プロジェクト」は後に、公益社団法人「福島原発行動隊」となり、「東京電力株式会社が採用している多重下請けを排し、事故収束から廃炉に至る作業管理及び作業従事者の被ばく管理を一元化したマネジメント体制を確立すること」 など提言活動を続けてきた。

2014月7月29日 憲政記念館で山田さんを偲ぶ会が開かれる。
http://svcf.jp/archives/5022

2014年6月27日 (金)

362.平成の大本営発表。これじゃ戦争は繰り返される

筋ぐらい通せないのか。
 
「高村正彦」なる一議員は、
かつての「防衛大臣」であり「外務大臣」であるかもしれないが、
政府の一員ではない。たかが「自民党」の副総裁でしかない。
 
なぜ、その「一議員の私案」を「公明党」と協議して、
それが「閣議決定」という運びになるのか。
 
なぜ、マスコミは、そのおかしさに「せめて筋を通せ」と突っ込めないのか。
 
少し振り返る。
 
安倍首相は、「外交」「防衛」「安全保障」という本来は政府が責任を持つことについて
単なる「私的諮問機関」を立ち上げて議論させた。
 
本来、税金を使っているので「私的」ではありえない。しかし、
外交や防衛はもちろん法律の専門家ですらない~たとえばJR東海会長など~
お友達ばかりを集めた実に「私的」な懇談会で議論をさせた。
 
中身を見ると「素人か」「床屋談義か」と思うほどのズサンな議論をしている。
厳選するまでもない、目についた一つの例を挙げる。P.14にこうある。
 
===============================
②事例2:米国が武力攻撃を受けた場合の対米支援
―― 米国も外部からの侵害に無傷ではあり得ない。例えば、2001年の米国同時多発テロ事件では、民間航空機がハイジャックされ、米国の経済、軍事を象徴する建物に相次いで突入する自爆テロが行われ、日本人を含む約三千人の犠牲者が出た11。仮に米国が弾道ミサイルによる奇襲といった武力攻撃を受け・・・、
=================================
 
「自爆テロ」という言葉が出てくるのは、あとにも先にもこの一言である。
この「自爆テロ」からいきなり「弾道ミサイルによる奇襲」に飛躍する。
しかも、それを「米国が武力攻撃を受けた場合の対米支援」の事例として語る。
 
同じページにこうもある。
 
==================================
―― 我が国を攻撃しようと考える国は、米国が日米安全保障条約上の義務に基づき反撃する可能性が高いと考えるからこそ思いとどまる面が大きい。
==================================
 
え?そうなんですか?
それに「我が国を攻撃しようと考える国」ってどこですかと聞きたくなる。
 
こんな議論をまがりなりにも一国の首相の私的諮問機関の報告として残すのは、
後世に対して恥ずかしい。
 
こんな稚拙なお友達のお喋りすら1年3カ月かけた。
 
そして、さすがに、このお友達の稚拙な意見
2014年5月15日に出てきたばかりの報告書をポイと蹴飛ばしたかと思うと、
今後、いきなり出てきたのが、なぜか、
自民党の同僚である「副総裁」高村正彦の「私案」である。
 
それは、憲法では国民が永久に放棄した武力を、
摩訶不思議な「要件」なる言葉にまぶして、
それを「集団的自衛権」と呼ぶものだった。
 
国を縛るはずの「憲法」になぜ、一議員が「要件」をつけただけで
180度変えることができるのか不明だが、
 
自民党と選挙同盟の立場にある「公明党」と協議を始め、
しかも、クルクルと目まぐるしく1カ月の間、変わり続け、
●●日までに「閣議決定」する、
それがダメで過ぎてしまうとまた●●日までにと煽る。
 
マスコミはなぜか、その「戦況」を刻々と煽り気味に国民に伝えている。
 
そのような「大本営発表」を垂れ流すことが
国民を泥沼の惨禍へと導いた歴史がありながら
なぜ、また同じミスを犯すのか。
 
この意思決定に至るまでの道筋を以下に示す。
 
安倍晋三首相
安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会有識者
  岩間陽子  政策研究大学院大学教授
  岡崎久彦  特定非営利活動法人岡崎研究所所長・理事長
  葛西敬之  東海旅客鉄道株式会社代表取締役会長
  北岡伸一  国際大学学長・政策研究大学院大学教授
  坂元一哉  大阪大学大学院教授
  佐瀬昌盛  防衛大学校名誉教授
  佐藤謙  公益財団法人世界平和研究所理事長(元防衛事務次官)
  田中明彦  独立行政法人国際協力機構理事長
  中西寛  京都大学大学院教授
  西修  駒澤大学名誉教授
  西元徹也  公益社団法人隊友会会長(元統合幕僚会議議長)
  細谷雄一  慶應義
高村正彦 衆議院議員 私案?
公明党協議??
閣議決定???
憲法「解釈」の変更??? は?
 
ちなみに、こういうことのために作ったはずの国家安全保障会議ですら、
当然ながら、「高村私案」なんて議論していない。
意思決定のラインがグチャグチャである。
 
何よりもおかしいのは、根幹にあるべき手続をまったく経ていないことだ。
憲法第九十六条  この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
 
この手続はどこかへ行ってしまい、摩訶不思議なプロセスで、
「武力行使」が可能な国にしようとしている人が「首相」を名乗っている。
 
なぜ、今、政府・与党が行っていることは憲法違反だ、
現・首相は狂っている、と、マスコミは
「知性」とは言わない、「常識」で国民に伝えることができないのか。
 

361.都議会だけではないセクハラ・ヤジ-岡山市議会

「今、東京都議会でのヤジで本当に失望していますが、
 岡山市議会でも最低なヤジがありました。」

そんな怒りがあるMLに飛び込んできた。
この方は、岡山市北区にある産業廃棄物処分場の上に
斎場が建設されることに向き合っている。

その現地を一緒に歩き、貯水池(以下★)の水の色を確認した上で、
強引な事業の進め方に疑問を持つ住民を代弁し、
「見直しが必要ではないか」と岡山市議会で質問した女性議員がいたという。

傍聴へ行った彼女は、そこで驚くヤジを耳にすることになった。
以下は、彼女が書いた質問とヤジの部分の引用である。

=====================
さらに、あきれ返ったのは、
鬼木議員が残り16秒の質問で、
「今回の産廃跡地への斎場建設は、見直すべきではないでしょうか!」
と言われた直後のことです。

自民党市議団無所属の会の田口議員が、
「見直すべきではないでしょうか?・・・・見直さん!いうとけ!!」
と・・・それはそれは品のない人を見下した言い方をしたのです。

私は思わず、
「地元住民の私たちが傍聴しているのを知ってのご発言ですか!!」
と傍聴席で立ち上がろうかと思ったくらいです。
(傍聴人ですので、そこはやはりつつしみました。)
=====================

「私は今日ほど腹立たしさと怒りを覚えたことはありません」
「岡山市議会も異常です」と彼女は訴える。

市議会のウェブサイトでその質問とヤジの主をさがしてみた。

質問者は、当選2回の若い女性議員 
 鬼木のぞみ議員 市民ネット
 http://www.city.okayama.jp/gikai/gikai_00242.html

ヤジ議員は、当選4回の年配男性議員
 田口裕士議員 自由民主党岡山市議団・無所属の会
 http://www.city.okayama.jp/gikai/gikai_00197.html

これは都議会におけるヤジと同じような構図ではないか。

私は、ここの現場を見ていないし、取材はしていない。
だから、中身については分からない。しかし、行政チェックは議会の仕事であり、
行政にはアカウンタビリティ(対応する責任)があることは全国共通だ。

「見直すべきではないか」と一議員から提起があったことに対し、
「見直さん!いうとけ!!」と別の議員がヤジるのは、
この議員の職務放棄である上に、行政の職務放棄を勧めていることにもなる。

議員失格である。

しかし、それだけか?このヤジは一見、セクハラではない。しかし、どうか?

果たしてこのヤジ議員は、これと同じヤジを
同年代、同性の議員に対して、飛ばしただろうか。

このようなヤジを女性議員になら軽く飛ばしてもいいという空気が
この自民党会派議員の無意識の中に根深くあるのではいか。

北原みのりさんが「セクハラは意図の問題ではなく、意識の問題である。
女性をそのように嘲笑してもいい、と捉える意識や、環境の問題だ
。」と
WEBRONZAの『結婚・妊娠ヤジ「謝罪」に思う――
「セクハラ」の本質はまだ理解されていない
』(2014年06月25日)
で述べておられるか、ここで言われている「意識」と共通しているように思う。

そうした「意識」や「環境」を許してはいけない、仕方がないと諦めない「意識」を
女性の間でも男性の間でも根付かせていかなければ、
次世代にこの社会を手渡すことができない。

なお、上記の現場については、環境行政改革フォーラムの青山貞一さんが
以下でレポートをしている。

特集:住民無視で暴走する岡山市北区の火葬場建設問題
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col5555..html
 ①高齢化社会と火葬場建設問題
 ②火葬と有害化学物質発生
 ③最終処分場跡地に火葬場建設
 ④処分場跡地の環境汚染 
 ⑤処分場跡地に石綿埋設の事実
 ⑥異常な処分場跡地買収価格
 ⑦不透明で正当性なき立地選定
 ⑧産廃業者の許可取り消し処分

2014年6月23日 (月)

360.あべしんぞう君に持ちかえてもらいたい大切なオモチャ

集団的自衛権は、国際法で認められていようとも日本国憲法で禁じている。

この単純な理解ができない人が首相になり、
「憲法」をまるで自分の「オモチャ」のようにいじろうとする。
まるで水鉄砲を「オモチャ」箱に加えるのように武器商人になろうとする。

「かくぎけってい」という使い方がわかっていない「オモチャ」で
「こくみん」に押しつけようとしている。

この厄介な子どもに他の「オモチャ」をもたせて、
先に握りしめている「オモチャ」を忘れてもらうことはできないだろうかと
グルグルと考える。一つある。

2003年、米国がブッシュ大統領(当時)の指揮のもと
大量破壊兵器を理由にイラクへの攻撃を開始した。

2007年7月12日、このイラク攻撃の中で最も衝撃的な事件の一つが起きた。
米軍ヘリによる「民間人殺害」事件だ。
取材中だった英国ロイターの記者二人を含む現地民間人が
米軍ヘリから狙撃されて11名が死亡した。

これ<戦争の姿>を私たちが知りえるのは、2009年に
米兵ブラッドリー・マニング氏が、WikiLeaks に提供したからだ。

 (これはショッキングな映像なので↑もしあなたが18歳以下なら
  保護者の方に見てもらってから、一緒に見てください)

2011年にオバマ大統領は米軍を完全撤退させたが、
2013年夏、その政権下でこのマニング氏に、禁錮35年の有罪判決が出された。

マニング氏は、公益通報者として全世界から絶讃されるべき存在だが、
一方で、武器を持たない民間人を狙撃した米兵が訴追されたというニュースは
少なくとも日本に届いていない(・・・ご存じの方はお教えください)。

だから、あべしんぞう君は、こっちの「オモチャ」で遊んだ方が面白いのではないか?

マニング氏の告発したヘリからの民間人狙撃など
大国の軍隊が犯した過ちについて、
国際社会としてつまびらかにして断罪する大切な仕組みだ。

「戦争犠牲者の保護のためのジュネーブ諸条約」が採択されたのは1949年、
「戦争犯罪人を処罰する常設の裁判所を設置する条約
(国際刑事裁判所設置に関するローマ規程)」が結ばれたのは1998年。

暴走した軍隊や兵士が確実に国際社会で断罪されるための仕組みはまだ新しい。

うん、こっちの方が新しい「オモチャ」なんだよ。しんぞう君。

日本が他国よりも国際社会により貢献できる分野は「平和」であり、
歪んだ戦争で生じる「戦争犠牲者の保護」に貢献することであって欲しい。

集団的自衛権は、国際法で認められていようとも憲法で禁じている。
だから要らない。持てない。使えない。

だからこれで遊ぶのはやめて、新しい「オモチャ」の方がいいんじゃないかなぁ。
しんぞう君。

359.地域の未来はコンサルには作れない

山形新聞によれば、「小国川漁協」は先週土曜日(2014年6月21日)、理事会を非公開で開催し、「山形県」と最上小国川(最上川の支流)の流域自治体である「最上町」と「舟形町」の4者で、流域振興を目指す協定を結ぶことを決めたとある。

これは、県が主催する「最上小国川流域の治水対策等に関する協議」第三回目での提案がもとになっている。(その第二回の打ち合わせ直前に前漁協組合長が自死され、いわば自死の引き金となった協議だ)

「最上小国川清流未来振興機構(仮称)」を設置するというもので、ダム容認を前提とした構想だ。控えめに言えば「絵に描いた餅」、こちらの品位が疑われるかもしれない言い方をすれば、正直なところ、「頭がおかしいんじゃないか」と思う表現が並んでいる。

Photo

出典 第三回協議資料2のP4

流水型ダムがアユ等の生息環境に影響が小さいとしても、これまでの「ダムのない川」以上の清流・最上小国川を目指し総合的な取組みを進める。」 (上図の右上)

ん?影響は「小さい」としても、影響があることを認めている。が、それでありながら、「ダムのない川」以上の清流・最上小国川を目指すとは、どゆこと?

税金を使うメニューを書き並べて、「アユ・サケ・サクラマス等の漁獲量の増大」とぶち上げている。さらに次の頁では、ダム建設への罪悪感を打ち消したいのか、『「ダムのない清流最上小国川」に代わるキャッチコピーを作る。』として、「キャッチコピー例」で、「アユの宝庫 清流最上小国川 (参考:河川上流から下流まで釣りが可能)」等を挙げている(下図の右上)。

Photo_2

注文を受けて、コンサルが書いたのだろうか、地域はこうやって税金をたくさん使うメニューと目先の利益を追う業者によって破壊されてきた。「飴」であるメニューは本来の目的(ムチ)の達成とともに、霧散した例(八ッ場ダムはその一例)も各地にある。それが始まった昭和から平成の時代にかけて、その結果は見えてきた。

その教訓は何か?答えはコンサルの書くペーパー上ではなく、地域の人々と自然の中にある、ということではなかったのか。もっと、過去から学ぼうよ。

廃れる民主主義と日本に蔓延する独裁OKムードは、安倍政権とともに終わらせていきたい、と考える。

2014年6月22日 (日)

358.女性都議に投げつけられた言葉が繰り返し報道されることでさらに傷ついてしまった女性たちへ

女性都議に投げつけられた無神経な言葉が繰り返し報道されることで、さらに傷ついてしまった女性たちへ。

授からない子どもを思って涙を流している傷ついてしまった女性たちへ。なんてヒドイんだろう、と思う言葉は、そこいら中から発せられています。

カサブタができてもまた傷つけられて、また血が流れる。今は血が流れて涙が出るぐらい痛いかもしれない。大丈夫ですか?

なんの慰めにもならないかもしれないが、一つだけ例を挙げてみます。不妊治療の現場で、医師に「金に糸目は付けないんだね」と言われて凍ってしまったことがあります。(「金目」発言との化学反応で思い出してしまったのだけど)

今考えると、密室で医師と患者の関係性でそう言われる状況は、パワーハラスメントの上にセクハラですが、私もその場では泣き寝入りをしてしまいました。後日、メルマガや本で世にその状況を世に知らせていきましたが、本当は、その場で、その医師に抗議すべきだったのではないかと思うことがあります。

なんてことを言うんですか!
私は今の言葉で傷つきましたよと。

失敬な発言をするヤツは、その場で言ってやらないと、社会は一歩前進しても、その人はそれで良いのだと勘違いをしたまま生きていって、その人の周辺にさらなる犠牲者が現れるのではないかと。

さらに一つ、関係ないことを思い出しました。

あるとき、こんなことがありました。

ある地域に呼ばれて、不妊治療体験をお話したことがあります。ほんの10年前だけれど、私のような者が呼ばれていくこと自体、当時はまだいかに「不妊」がおおっぴらに話せない話題であり、それだけに、いかに密かに傷ついている人がいるかを物語っていました。

お話の後、主催者は参加された女性たちが、私とこじんまりお話ができる時間と別室を少し設けてくれました。主催者も私も想定していたのは、誰にも話せないことを、二度と会うこともないであろう赤の他人に少しだけ悩みを吐き出して気を少しだけ楽にしてもらって帰ること。

ところが、真っ先に私のところに来たのは、男性の医師でした。この地域には、不妊治療クリニックが他にはないとのことでした。「不妊治療」での悩みを打ち明けるとしたら、それは結果的にその医師に関するグチになってしまう可能性がないとはいえませんでした。男性医師は「治療する側」の悩みを打ち明けて帰りました。

女性たちは距離をおいて遠巻きに、その男性医師の話が終わるのを待ち続けましたが、あまりにも長いので、やがて、1人、2人と帰っていってしまいました。「不妊」を巡っては、夫婦間や親子間や友人間や職場、人生観などオールラウンドな悩みが生じるもので病院との関係はその一部でしかありません。同じ立場の人に少しでも吐き出せることで少しは楽になることもあり、私が受け止めるべきは、あの諦めて帰ってしまった女性たちの話でした。

その医師は、待っている女性たちがいて、私が彼女たちの方に目線を向けて焦っていることを知っていたし、何かあればまたメールででもご連絡くださいと打ち切ろうとしているのに、延々と話を止めませんでした。

あの時も、私がもう一歩強く出ればよかった。医師が真剣に医師として悩み、はけ口を求めていたとしても、彼女たちの不妊治療のグチを話させたくない気持ちがこの医師にまったくなかったと言えるだろうか・・・。当時、かすかに心の中に浮かんだ疑問が、あとになると増幅されて戻ってきます。

「この場は、私と同じ立場の女性たちの気持ちを受け止める場です。」なぜ、しっかりとそう言えなかったのか。後悔の積み重なりで、二度と同じ後悔をしないように、私は強くなったような気がします。次はもっとしっかり言えるように。次はもっと、他の女性の分も言い返せるように。基本は弱っちい単なる泣き虫だが、多分、もう誰も、私を見ても、弱っちい泣き虫だと思う人はいまい。1枚めくれば基本は単なる弱っちい泣き虫だったとしても、めくらなければ強いし、めくる必要は到底ない。

だから、女性たちよ、傷つけられるからこそ、強くなろう。カサブタを厚くしよう。なんてヒドイことを言うんだろう、と思うヤカラに、立ちすくまずに投げ返してやる言葉を準備して持っておこう!

2014年6月20日 (金)

357.全員の同意を求める漁業権に関する通達

日々、頭をきしませながら、勉強する。今朝は、以前から入手しなければいけなかった水産庁の通達のコピーを出して欲しいと、連絡をした。(結果、農水省図書館に「漁業制度例規集」を自分でコピーに行くことになったが。)

山形県は、知事を先頭として、憲法や漁業法や水協法を勉強して、慎重に行政権を執行するという遵法精神がない。ほぼ半数の総代がダム建設を容認していないにもかかわらず、そして、ダム建設による漁業権の侵害に対する補償は、憲法29条に基づく補償、すなわち、全員の同意が必要であるにもかかわらず、「過半数」という脱法的な既成事実化で物事を推し進めようとしている。そのこと指摘するためには、こちらもその根拠を一つひとつ確実に入手して勉強するしかない。

熊本一規明治学院大学教授によれば、漁業権が侵害される際には、最低でも漁協組合員の「全員の同意」が必要である。このことが漁協のみならず、監督権を持つ自治体職員にも理解されてこなかったために、以下の通達が過去、水産庁からは出されている。

昭和47年9月22日漁政部長通達
埋立事業等に伴う漁業補償契約の締結にあたっては、組合は関係する組合員全員の同意をとって臨むよう指導されたい。

昭和51年3月13日漁政部長通達
 漁業協同組合が組合員の漁業に関する損害賠償の請求、受領及び配分を行うことは、組合という社会的公益的組織体の存立目的の範囲内の行為であり、組合の行いうる業務には含まれると解する。
 また、この場合において、関係海面においても漁業を行っている組合員からの委任行為が必要と解する。

昭和45年11月21日漁政部長通達
 配分委員会等で作成された漁業補償金の配分の基準は、漁業協同組合の総会の議決により正式に決定するものとする。なお、この配分基準については、個々の組合員からもこの配分の基準の内容に同意する旨の同意書の提出を得ておくものとする。

これらをゲットした後、以下に行く予定だ。

●2014年6月20(金)13:30~ 803号法廷
江戸川スーパー堤防事業江戸川仮換地処分取り消し請求事件(行ウ 第744)

●14:00~16:00  参議院議員会館 101号室
「原発事故子ども・被災者支援法」 制定から2年 記念集会
~どうなる? どうする? 被災者支援と子どもたちの未来~

356.失敬な発言撃退イメージトレーニング

環境大臣の「金目」発言と時を同じくして、都議会の自民党都議とおぼしき人のヤジが話題になり、厳正な処分を求める署名も始まっている。

周囲からのこうしたキャンペーンはもちろん大切だけど、
こういう輩は、その場で、しつけないとダメだと思います。

例えば、「誰だ!」といって指を指して、
その場でとっ捕まえて「謝れ!」と言ってやる。

こういうときに泣いてはいかん。普通の人じゃないんだから。
議員という「立場」で、気持ちを奮い立たせて、たたかえ!

この議員さんはまだ新人で、想像を絶する下品さに、
いきなりでビックリしたのでしょうから、

 1.その失敬なヤツの方向へ向かって指を指す。
 2.「誰ですか!」と太く低い声で空気を刺す。
 3.「謝罪を要求します。議長」と議事を止める。

というようなイメージトレーニングをしておくと
次に何かあったときには、役に立つのではないだろうか。

というわけで署名 はこちら。

2014年6月18日 (水)

355.閣議決定で国権は変えられない

憲法改正をすっ飛ばして「集団的自衛権の行使」を憲法解釈の変更で閣議決定すると言い始めたかと思ったら、今度は、「自衛権発動の要件」というごまかしが始まり、実を結びつつある。

しかし、国ができること、つまり「国権」は閣議で決められることではない。憲法が禁じていることを閣議決定で要件を付けたらできると考える独裁者な内閣は総辞職をすべきだ。

閣議決定とは、「実務上行われている内閣の意思決定の一形式。憲法または法令に定められた法律案・政令・予算など内閣の職務権限として明示された事項および保管重要な事項について行われる」(大辞林)とかいている。

法律にはなんと書いてあるか。

 内閣法第四条 内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。

つまり、内閣とは憲法と法律に定められた職権を行うだけの存在だ。法律を編んだり、改正したりするときには、法律案を閣議決定して、意思一致させて国会に提出する。

 憲法第四十一条  国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である

だからだ。

内閣府では「閣議決定」を国民に対して次のように説明している。

閣議決定 憲法及び法律により内閣の意思決定が必要とされる事項や、法令上規定がない場合でも特に重要な事項について決定
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gijiroku/sagyou1/1siryou5.pdf

「憲法及び法律により内閣の意思決定が必要とされる事項」であり、そのよってたつ憲法に書いてあることをはみ出る解釈を決定してよいわけではない。また、武力行使については「法令上規定がない場合でも特に重要な事項」どころか、憲法に明確過ぎるほどに規定されている。

 第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 これを変えるには、憲法の改正が必要であり、法律よりも格段高いハードルが設けてある。

 憲法第九十六条  この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

野党を仲間はずれにした首相のお友達(内閣)が集まって、「やっぱり、要件をつけて行使したいよぉ」とゴネて決めていい話ではない。

なぜ、こんなことが分からないのか、分からない。

だが、憲法も辞書も読めない独裁者が出てしまったのが現実だ。

国会がその独裁者を選んでしまい、良識ある多数によって引きずり下ろす意思も見せない。その情けない構成員を選んでしまったのはバカな私たち国民だ。だから腹が立つ。だから、もう一度、憲法を読みなおしてみることも大切だろう。

憲法前文(抜粋)  日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。(略)日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ

憲法第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

言論の自由があるうちに、何度でも言う。

憲法が禁じていることを「閣議決定で要件をつけたらできる」と考える独裁者は内閣を辞職をすべきだ。

2014年6月16日 (月)

354.母を介護しながら息子が仕上げた本

ひねりなし。緻密。ただただ、記録されなければならない『戦後河川行政とダム開発』のことが書き付けられている。これは放っておいても、河川行政の研究者なら、工学専攻も歴史学専攻も社会学、法律学専攻の人も読まなくてはならなくなる本である。河川官僚、コンサル、水道事業関係者はもちろん、農業用水、工業用水、自治体関係者も言うまでもない。
 
むしろ、この本を書いた若者が、今の時代の一面を象徴している気がするので、出版パーティの後、そのことについて聞くことにした。著者、梶原健嗣さん(カジケン)が、お母さんの介護・看病をしながら、時にブログを書き、時に大熊孝新潟大学名誉教授の「これは本にすべきだ」との勧めで、東大大学院時代に2006年12月に仕上げた博士論文を本にする作業をしているのは知っていた。作業を終えてホッとしたのか、初めて介護の大変さを少しばかりメールでよこしてくれた。ちょっと聞いてみると原因不明の病だとのことで大変そうである。紙媒体に売り込む余力がないのでブログでの紹介を許してくれるかと聞いたら、よいという。
 
そこで昨日、3つの質問をした。朝から始まる一日の介護パターン。お母さんの具合。辛い生活からの解決策はあるのか、だ。すると緻密な彼の説明が始まった。本を書いたことがある人なら多分ほとんどがそうだろうが、仕事や家庭や経済状況やら社会的な責任や時間やら色々な「事情」を乗り越えなければ書けるもんじゃない。だから、大変さは想像していたのだが、それを絶していた。
 
一日の介護パターン
「父がまず2時に起きて、ご飯を食べますから、2時半に交代します」と、彼の説明は、お母さんを24時間体制で診るパートナーとしてのお父さんの生活パターンから入る。面食らって、「ん?」とまずこちらの脳みそが止まる。
 
遡って聞けば、お母さんは身体の苦しみと痛みで、晩ご飯を食べるのに夜の8時から12時まで4時間かかり、それから歯を磨いたり着替えをしたり眠る準備にさらに2時間半かかるのだという。
 
そして、朝の2時半にカジケンは介護から開放されるのだ。てっきりそれで眠りについて一日が終わるのかと思い、先回りして「何時に起きるの?」と聞いたら「まだ寝ません」というのでまた脳みそが止まる。「そこから2時間余りが自由時間です。少し前までは、介護終了が4時でそこからが自由時間でした」。
 
つまり、カジケンの一日は、朝2時半から本の執筆、メール、ブログ書きと始まり、時に裁判支援のための頭脳労働を頼まれることもある。うまく終われば朝4時半に終了するが、それ以上は睡眠時間を削ることになる。
 
眠りについて昼12時~13時に起床。お昼ご飯を頬張りながら買い物に行き、帰宅すると父と介護を交代する。
 
お母さんの具合
問題はその「介護」の中身である。お母さんの身体の痛みは腹部のしこりから来る。家族や本人だけではない、医師の触診でもおへその上部にこぶし大のしこりがあることは確かだが、レントゲンにもCTにも、エコー(超音波)にもMRIにも映らない。癌ではない。25~26軒の病院を回ったが原因は不明のまま。
 
しこりと、しこりから来る痛みと発汗が連動しているようで、苦しさに歯を食いしばって耐えるために歯がボロボロになり、発汗量は異常に多く、布団を通り越して畳が腐ったことがあるほどだ。厄介なことに、発汗ができないとしこりが内臓を圧迫するような苦しさで寝ても起きても辛い。かといって汗をかきすぎると消耗する。
 
苦痛の緩和策として、体調と体重にあわせて、父はミシンを踏んで寝間着や下着のサイズをこまめに調整してやるのだという。1日2回の洗濯も父の分担、カジケンは買い物や料理をこなしながら、母のマッサージを分担する。
 
適度に発汗をさせ、2時間に1回、多い日は1日に10回以上の着替えをさせて、小康状態を保つのが、一家の日々の目標だ。睡眠薬を処方されても2.5人分の服用量でひどいときは痛みで5分で目が覚める。服用しても効果が小さいのでその量を減らしてきた。
 
解決策はあるのか
開腹手術でそのしこりを切除してもらうわけにいかないのかと乱暴な質問をしてみたが、医師はそういう判断をしないのだと言う。体力ももたないだろうと息子カジケンとしては考えている。暑さも寒さも自分では分からなくなっている母の様子を見ながら適度な発汗と着替えを繰り返して痛みを抑え、苦しみ始めたらそのしこり周辺をマッサージして痛みを抑えてやることで凌いでいる。
 
本人も目が見えなくなる
これは、彼が博論を仕上げた2006年12月に思い描いていたこととは違う。知人の弁護士に声をかけられ、研究ではなく、法曹の道に進もうと考えていた。司法試験を目指し始めたのは翌年の2007年1月。ところがわずが2カ月の2007年3月に、突然、目が見えなくなった。眼科に行っても理由は分からず、脳神経外科、心療内科を回った。
 
ひょんなことから名医に会う縁を得て、重症な「眼筋疲労」だと分かった。以後、自分でツボにお灸をすえて、目が見える時間を1日何時間か確保する術を身につけた。
 
だましだまし目を使い、司法試験の準備を開始するが、1年経ったところで母の介護が始まった。2008年9月になると母は重症化する。自分の目のケアも含めて朝2時間の自由時間で準備を重ね、司法試験に励んだ。2度目の司法試験ではあと1点のところで不合格となる。3度目のチャレンジを前に、試験問題60問の最初の1問3行すら読み通せない視力の悪化ぶりを直視して彼は司法試験を断念する。
 
「眼筋疲労」と分かってから2年半。注射による治療で少しづつ良くなってはいるが完治の日がいつなのかは分からない。
 
2006年12年の博論完成から7年。『戦後河川行政とダム開発』は完成した。副題『利根川水系における治水・利水の構造転換』は、介護の合間にお母さんと交わした会話の中で生まれたという。
 
ひねりなし。緻密。ただただ、記録されなければならない『戦後河川行政とダム開発』のことが書き付けられている。
 
Photo  Photo_2
 
梶原健嗣著『戦後河川行政とダム開発 利根川水系における治水・利水の構造転換』
2014年6月、ミネルブァ書房より発刊。

353.霞ヶ浦からのニホンウナギ考「ウナギをめぐる冒険」

ICUNがニホンウナギを絶滅危惧種に指定した。

このニュースに大きな関心を抱く人であれば、特定非営利活動法人 霞ヶ浦アカデミーが発行している通信で、元・茨城県内水面水産試験場長の浜田篤信さんが連載している「ウナギをめぐる冒険」にも興味を抱くのではないか。霞ヶ浦の開発とウナギ資源の関係を具体的なデータで論考している。

「自由にお使いください」との許可を得て、全文転載させていただきます。

ウナギをめぐる冒険 そのⅡ(浜田 篤信 )
1 漁獲量、利根川と全国との関係
 

 前回、1963年に霞ヶ浦の下流に設置された常陸川水門の建設や操作が全国のウナギ資源に影響を与えてきたのではないかという疑問について述べました。
 そこでまず、ウナギの漁獲量について全国と利根川水系を比べてみました。
 利根川水系の漁獲量とは、霞ヶ浦北浦、常陸利根川、および利根川の合計値です。

 まず、利根川水系と全国の漁獲量を比較して見ると、利根水系が1967年から減少し始めるのに対し、全国はやや遅れて1970年から減少し始め、しかも減少の大きさも全国で軽微です。また、利根川水系では減少が続くのに対し、全国の漁獲量は1983年までは、漁獲量の減少は認められません。以後2000年までは、全国の漁獲量減少の低下傾向も、利根川水系に比較すると軽微です。しかし、それ以降になると全国の漁獲がより急激になっているようです。(続きは以下からダウンロードを。)

海夫通信15号(2013年9月15日)「kasumigaura2013915.pdf」をダウンロード
海夫通信17号(2014年6月16日)「kasumigaura20140616.pdf」をダウンロード

2014年6月15日 (日)

352.「川上ダムは必要ありません。」

「川上ダムは必要ありません。」

2014年6月8日、「木津川流域のダムを考えるネットワーク」が、国土交通省近畿地方整備局が明らかにした『川上ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)』に対して訴えた。

1.上野遊水地を適切に修正すれば川上ダムは必要なくなります
2.川上ダムを造っても水害防止にはほとんど役立ちません
3.水は足りないどころか余っています
4.他のダムの長寿命化のために川上ダムを造る必要はありません
  詳しくはこちらへ。
  https://www.facebook.com/kdamnet?ref=stream&hc_location=timeline

木津川は三重、奈良、京都の3県の水を集めて本流へと流れる淀川の支流だ。

Photo_4出典:木津川上流河川事務所

ネットワークを立ち上げたのは、青山高原の自然を守る会、伊賀子どもの可能性の芽を育む会、伊賀市民グループ「志(こころざし)」、伊賀・水と緑の会、いのちを守る森の防潮堤応援団みえ、笑顔でつながろう!伊賀の会、オオサンショウウオの川上くん、風と光の森づくり、関西のダムと水道を考える会、トランジション伊賀、なないろの空、名張の未来を考える会、ひまわりの森、緑のネットワーク・青山、リング オブ ライフ Ring of lifeなど。関西地域の住民団体だ。

このダム予定地は絶滅危惧種かつ天然記念物であるオオサンショウウオの生息地だ。関係自治体が次々と水余りにより撤退したため、伊賀市のわずかな利水目的と、他の複数の老朽化ダムの長寿命化という前代未聞の許されるはずのない目的と、代替可能な治水目的で、(独)水資源機構が進めている。予備調査が開始されたのは高度経済成長期まっただ中の昭和42年だ。

Photo_5

川上ダム予定地。撮影したのは2008年11月4日

川上ダムは、淀川水系流域委員会が2003年にすでに原則建設しないと結論を出したダムの一つ。そもそもこの答申に従っていれば、この検証は必要がない。

ところが、これが意に沿わなかった国交省近畿地整は、その結論をたなざらしにして、時と場所を変えて、結論を覆す工作を延々と繰り返してきた。

民主党政権時代には、「ダムによらない治水」の号令に対し、河川官僚は、それをこれまで進めてきたダム事業の「残事業費との比較」でダムありきの結論が出るようにお膳立てをした。自民党政権に戻ってその仕上げをしている段階だ。

その間、11年(ため息)。11年という時が失われた。人にとっての10年は一つのことを成しえるほどの長期間であるが、国にとっての10年はなんでもない。ダム計画は真綿で首を絞めるように民主主義の首を絞める。河川ムラのこだわりが、これまでにどれだけ、国の力を削いできたことか・・・。

それに前向きにあらがう試みが尽きないことに救われる。以下は、川上ダム・パブコメ実践講座の案内。昨日は参加できかった流域住民の方々が22日(土)には参加できますように。

======================

川上ダム・パブコメ実践講座
~僕らの小さな声が社会を変える~

むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、
ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、
まじめなことをゆかいに(井上ひさし)

国に伝わる効果的なパブリックコメントの書き方を学びましょう。

日時:2014年6月14日(土)& 22日(日)14時~16時 
場所:青山公民館 2階中ホール
三重県伊賀市阿保1411 近鉄・青山町駅から徒歩5分
http://www.city.iga.lg.jp/kbn/34770/34770.html
参加費:無料。事前申し込みは必要ありません。
主催:木津川流域のダムを考えるネットワーク

詳しくはこちらへ。
https://www.facebook.com/kdamnet?ref=stream&hc_location=timeline

======================

2014年6月12日 (木)

351.竹中平蔵氏に火事場泥棒の自覚はあるか?

次々と常軌を逸する政策決定が打ち出される。
紙媒体では間に合わない速度で。

残業代ゼロ「年収1000万円以上」 関係閣僚が合意 (2014.6.12 産経新聞)

オイオイ。こんな合意は労働基準法違反だし、公労使三者構成原則を定めた国際労働機関(ILO)条約違反ではないか。

労働基準法は、その第二条で、「第二条  労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」と定めている。閣僚が合意したからといって、勝手に法改正をしてよいことではない。こんな法改正案を通したら国会が法違反を犯すのも同然だ。

東京新聞には「残業代ゼロ制度は四月末に産業競争力会議民間議員の長谷川閑史(やすちか)経済同友会代表幹事(武田薬品工業社長)が提案した」(『残業代ゼロ 閣僚合意』)とある。

この産業競争力会議名簿に目をこらしても「労働者側」は出席していない。

それどころか、「慶應義塾大学総合政策学部教授」の肩書きで委員を務める竹中平蔵氏は人材派遣の株式会社パソナグループ取締役会長だ。 

あとで労働政策審議会を通せばいいというものではない。出口のない漁具に魚を追い込むようなマネをやらせて、厚生労働大臣は何をしているのか。厚生労働省が守るべき「労使参加の下での政策決定」にも真っ向から反している。

安倍政権が作り出す無法地帯での混乱に乗じた火事場泥棒だ。かつて政府の一員をつとめた竹中平蔵氏は、自分が火事場泥棒だと気づいているだろうか。

労働政策とはそういうものであるという「労働基準法」を読んだことがない不勉強な人が閣僚を務めていたとしても、なぜ、誰1人、政府が勝手に決めてはイケナイことだと苦言を呈する人がいないのか?

それこそがまさに産業競争力会議の人選の偏りを表しているのではないか。労働基準法を読んだことのない人が労働政策を議論して、決めてはいけない。読んだことがあってなお、このような決め方をしているとすれば、それはもう犯罪だ。

2014年6月 9日 (月)

350.漁協の決議:熊本一規教授「誤魔化しの手法」

熊本一規明治学院大教授は「誤魔化しの手法」と切って捨てた。最上小国川に協同漁業権を持つ小国川漁協の総代会の結果を見た直後の記者会見でである。
 
2014年6月7日、同漁協は「流水型ダムによる治水対策等の受け入れについての件」という議題で総代会で評決を行い、委任状を含めて110人中、賛成57、反対46で議決したことになった。熊本教授は、これを「法的拘束力がない」、「誤魔化しの手法」だと一刀両断に切り捨てたのだ。
 
その前提としての熊本教授の説明はこうだ。 動画 
 
漁業権には二通りある。
・漁業を営む権利 これは魚資源を販売して収入につながっていることが重要
・財産権を持っている人 これはアユをとって販売はしないけど自家消費している人
 
これらの権利が侵害される場合は、これらの権利を持っている全員の合意が必要であり、補償も必要である。逆に、たとえば、漁業組合員でも販売も自家消費もしていない人は漁業権はないので補償は不要。埋立の手続でも同様、補償しない限りは着工できない。本来の権利者全員に支払わなければならない。
 
開発事業と漁業権がぶつかる場面の代表例は「海面の埋立」と「川のダム事業」だが、熊本教授は、水産庁の漁業法の神様と言われた水産官僚「浜本幸生さん」直伝で学んだ、この問題の第一人者であり、この二つの事業における漁業権補償の歴史を誰よりもよく知っている。
 
記者会見で熊本教授はまず今回行われた総代会の決議の位置づけを次のように語った。
 
「ダムや埋立の際に、総会決議なり、総代会決議をあげて、それで認めるというのは、これは間違いなんです。法的に。総会決議や総代会決議は、漁協の意志、漁協埋立やダムに対してどう考えるか、漁協の意志を決める方法です。漁協が持っている漁業権ならそれでいいが、漁協が決められることではない。権限のないものが声をあげたに過ぎない。
 
なぜ、誤魔化しかというと、本来の権利者がそれで諦めてしまって、配分を受け取ってしまう。補償金を受け取ればそこで同意したことになる。配分を受け取ることで全員の同意をとってきた。それまでは全員の同意が必要だなんて説明はない。
 
やれ総会で決議があがった埋立はできるんだなんとか言って諦めさせて、じゃぁしょうがないから配分受け取ろうかと受け取りますね。そこで全員の同意を事後的に取っている。」
 
つまり、本来なら、「全員の同意→漁業権補償交渉→補償の配分」となるはずが、常套手段化してきた誤魔化しの手法では、「漁協の決議→なし崩しの漁業補償交渉→なし崩しの補償の配分=受け取った時点で事後的に全員の同意を取ったことになる」というわけだ。
 
熊本教授は、熊本県の球磨川・川辺川の例もあげてこうも述べた。
 
「この誤魔化しの手法というのは、ダムで使われたのは、ここが初めてですよ。埋立ではいつ頃かというと、1968年頃です。それまでは漁協が総会決議をあげるとか、総代会決議をあげるとか、そこで3分の2とか、半分取ったとかという決議は一切ありません。
 
ではダムはどうかといえば、ダムでは一つもありません。水協法で3分の2以上とかで決議をあげた例は一例もありません。これは中村敦夫議員(当時)を通じて国交省を問い詰めていったら、資料を出して認めました。一例もありません。あげようとした例はありました。それは川辺川ダム事業です。川辺川ダムでは、総会決議のときは否決されました。可決されたダムの例はこれが初めてです。」
 
誤魔化しの手法で決議した悪例は山形県が一例目になるというのである。
 
「もしそれ(決議)がどうしても法的に必要で、それが法的効力を持っているならば、今までのすべてのダムであげられていなければおかしいでしょ?では今までのダムはどう進めてきたかと言うと、総代会の決議なしに作られた。
 
球磨川漁協の場合がそうです。球磨川漁協は過去に3つぐらいのダムを作られています。4つめが川辺川ダムだったんですけれでも、そこでは3分の2以上の決議を上げようとして否決されたですけれども、従来の3つダムについて、2分の1や3分の2の決議を上げたことはありません。
 
その代わり球磨川漁協に大事に保管されているのは、組合員全員の配分を受領したという署名です。それはきちんと保管されている。組合としての賛成反対は何の権利もない。」
 
これは大きなヤマ場だと思っていたのだが、法手続き上は正しく理解すれば、実はそうではなかったのである。「ここから先が長い」と熊本教授は言う。
 
しかし、誤魔化しであったにしても、実に変な決議である。誤魔化しの手法をとるとしても、漁業権に関わるとなれば、3分の2以上の賛成多数が決議には必要だが、今回は過半数に過ぎない。(以下、時短のため、乱雑なメモでご容赦いただく)
 
■直後に行われた組合長インタビューの模様を動画で見た。記者との間で行われた次のやり取りが印象的である。
 
 記者:漁業権にかかわらない理由は?
 組合長:案件が、案件が・・・(長い沈黙)、「流水型ダムによる治水対策等の受け入れについての件」ということで議論しました。漁業権については言っていません。
 
■山形県庁の水産振興課にも取材電話を入れたが、そのときには次のようなやり取りがあった。
 
Q:  漁業権に関するなら水協法50条で3分2と書いてあるが。
課員:漁協が意思決定をする場合、多数決でいい。
Q:  そういう指導をされているんですか?
課員:水協法50条を確認する
 
~~~~~数分後の電話(折り返し)~~~~~
 
課員:組合の方では水協法に基づいて定款を作っている。 定款の中に総会の決議事項ということがあり、今回は多分、組合の事業の運営に関する中長期計画の設定および変更の項目があって、多分、組合の方では組合の方ではこれに該当すると考えていたのではないか。
 
Q: 県には相談はありました?
課員:組合は総代会は独自に開きますから、うちは、ここに該当するような格好で採決をしたのではないかと想定している。
 
Q: 想定ではダメでしょ。水協法には定款で変更できると書いてあるけど、3分の2よりももっと多い賛成が必要とする変更はできるけど、どうやっても少なくはできないです。では、今回の議決は水協法何条にあたりますか?
課員:分からないですね。
 
~~~~~三度目の電話(折り返し)~~~~~
 
課員:調べました。水協法32条の方の4項に「 主務大臣は 模範定款例を定めることができる」とあり、 農林水産大臣が模範定款を作っている。
==============
(定款に記載し、又は記録すべき事項)
第三十二条  組合の定款には、次の事項を記載し、又は記録しなければならない。ただし、非出資組合であつて、第十一条第一項第五号から第七号までの事業を行わない組合の定款には、第六号、第八号及び第九号の事項を、その他の非出資組合の定款には、第六号の事項を記載し、又は記録しなくてもよい。
4  主務大臣は、模範定款例を定めることができる。
==============
 これにしたがって、漁業も定款を作っている。
 
Q: では、その項目は、水協法の何条で決議したのかと尋ねているのですか。
課員:定款と水協法の関係は、国の方にお尋ねしていただいた方が分かる。
  
■そこで、水産庁 水産経営課に取材。以下が水産庁の考えだ。
  
・指導監督は県がすべきで、「想定」とかじゃなく、しっかりとどういうことか聞き取ってやってもらわなければならない。「想定」とかいうのは問題。漁協の指導監督権は県にある。
・ダムを受け入れるかどうかは普通議決で問題ない。入り口のところ。
・どれだけ影響があって、補償ということになれば3分の2以上の特別決議が改めて必要。
 
■メモ的なまとめ
○ダム容認派が組合長となってしまった小国川漁協は、誰から学んだか知らないが、日本中前例のない誤魔化しの手法を「普通決議」として試みたが、2分の1を超えて「方向転換」と宣伝をした。
○しかし、3分の2には満たないことも分かった。
○しかし、3分の2を超えたところで、漁業権を持つ全員の同意を取らなければ、補償交渉は終わらない事実は厳然とある。今回の「方向転換」が漁業権を持つ人々に「ダムはできてしまう」という諦めを促す方向にいかなければいいが・・・
○情けないのは、本来の監督権を持つ山形県知事の今朝の会見がこれだったことである。
○そもそも、漁業権に関係してくるのになぜ3分の2ではなく2分の1で決議しているのか、何を根拠にしているのかとの質問に、漁協と県庁で答えが異なっているのも奇妙としか言いようがない。口裏を合わせていないのはよいとしても、あまりにもオソマツで遵法精神の欠落は嘆かわしい。
 
関係報道
最上小国川ダム、小国川漁協が受け入れ 山形新聞(2014年06月08日)

2014年6月 8日 (日)

349.原子力ムラの持ち込みはお断りしたい

正直なところ、田中知氏を巡る原子力規制委員会の人事問題には、やらなければならない情報発信がまったく間に合わないので、見向きもする時間はないと思っていた。

●人事の件その1

しかし、今になって、福島第一原発のダダ漏れの原因が分かりかけているのに、日本原子力学会は、根本原因はもう分かっている、と大飯原発差し止め裁判の判決への見解 を示していることに気づき、腹を立てながら、「誰だこんなことを言うのは!」と思ったら、その調査委員会の委員長をやっていたのが、くだんの「田中知」氏だと知った。

そこで、あるメーリングリストで、それに関する部分を委員長会見の議事録からコピペしておいたところ、読んだ方が、以下のブログに貼り付けてくれた。

http://ameblo.jp/datsugenpatsu1208/entry-11872560284.html
日本原子力学会(田中知委員長)の大飯原発差し止め判決見解について

是非、読んで欲しい。

「原子力学会」が根本原因が分かっていると言っていることに対して問題ではないかと田中俊一委員長に会見で提起したのに対し、田中俊一委員長は、海外に論文を書けばいいじゃないかと、問題をはぐらかした。いや、はぐらかそうと思ってはずらかしたのならまだしも、学会がこの期に及んで事故原因は解明されていると述べ、それを原子力ムラの空気にしてしまうことの危険性を熟考していないように見えることが怖い。

●人事の件その2

前のコマで書いた件とダイレクトに関係するが、サプレッション・チェンバーで起きている水漏れを調査しているロボットのメーカーが日立GEニュークリア・エナジーなのだが、なぜか、東電は公表資料(これのhttp://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2014/images/handouts_140527_06-j.pdf スライド3頁目)では「日立GE テレランナー」と書き、口頭で「これは『日立GEニュークリア・エナジー』の間違いです」と説明するも、あっちもこっちも「日立GE テレランナー」のままで、訂正を行わない。

日立GEニュークリア・エナジーと言えば、今や、田中知氏が寄付金をもらっていたことで有名な会社である。
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-01/2014060115_01_1.html

その田中知氏が研究費をもらっていた原発メーカが作るロボットが、現在、福島第一原発の事故原因にダイレクトにかかわる調査を行っている。しかし、田中氏は、もうすでに根本原因まで明らかになっていると学会として発表したときの責任者だ。

これほど気持ちの悪いことはない。東電は、その渦中にある社名をわざわざ間違えて訂正もしないのかと、トコトン疑り深い私などは考えてしまう。

人事の件その3

田中知氏には2011年に、電話でだが取材をさせてもらったことがある。「上下水処理等副次産物の当面の取扱い」(原子力災害対策本部六月一六日通知)として、8000Bq/kgまでなら埋立可、それ以上は保管と決まったときのプロセスを追ったときだ。

原子力安全委員会では、実質的な議論をした形跡がなく、追加で意見を聞いた専門家3人もまた、2011年5月26日18時から2時間ほどのたった一回の会合で官僚の作った案を了承した。専門家3人の1人が田中知氏だった。

田中氏はその決定への関わりとして、「一回だけ二、三時間の会合に出た」と述べていた。(週刊金曜日2011年8月26日 860号

当時、過去最悪の国際原子力事故評価レベル7が出たばかりで、放射能に対する国民の不安は大きかった。そんなときに、放射能ゴミの焼却、埋立、保管の方針を決めるやり方として、あまりに軽いと思った印象がある。

2番目と3番目は、看過するとしても、1番目の件だけは看過してはならない。原子力ムラの規制当局への持ち込みにつながると感じている。

福島第一原発事故原因がすべて解明されていると思う人が、原子力規制委員になる資格があるとは思えない。

348.薄さ1.5ミリステンレス製の蛇腹の継ぎ手からの水漏れの原因は海水の腐食か経年化+地震動か

2014年5月28日の東電会見で発表があった件について、端的に乱雑に最低限の取材メモをここに置いておく。(誤字脱字ご容赦を)

東電によるサプレッション・チェンバー(S/C:フラスコ型の原子炉の下部、外側の回りにあるドーナツ型の圧力抑制室)の上にある細いラインの継ぎ手からの水漏れがロボットによる調査で分かったという件だ。

「福島第一原子力発電所1号機
S/C(圧力抑制室)上部調査結果について」
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2014/images/handouts_140527_06-j.pdf 

東電のこの説明に対する他の記者の質問で明らかになった「蛇腹の継ぎ手」がたった1.5ミリメートルであり、それに穴が空いたのは海水による腐食であると東電が質問していることに、ふと思うところあり、更なる質問をしてみた。

そこで得られた回答と得られなかった回答に関し、気になって自分でも調べて見たところ、噓じゃん!と分かったので、5月30日に、回答が間違っていると指摘したら、間違っていたことを認めてくれた。

(しかも、会見の最後の最後にこちらが指摘するとやっと認めた。指摘しなければ放置しようと思っていたのだろう。よほど都合の悪いことらしいとの感触を持った。)

そこで、得られた結果を、以下のように忘れないように少しばかりツイートしておいた。(私が今東電会見で追い続けているのはあくまで変電所問題なので)

===================================
●水曜日と今日の東電会見で、少なくとも1号機の汚染水漏れの一因が見えてきた。◾原子炉の圧力を調整するための配管の継ぎ手から水が漏れる現象が明らかになった。◾継ぎ手はパイプとパイプをつなぐもので、熱による膨張を吸収するためにジャバラ状になっている。厚さ1.5ミリ材質はステンレス(続

●◾部品交換は建設以来一度もない。東電は水曜日にその原因を海水による腐食と説明し、基準地震動は耐震バックチェックして大丈夫だったから、地震で壊れたわけではないと。◾でも国会事故調の報告ではバックチェックは間に合わずに3.11を迎えたことが書かれていた。回答が間違っていると指摘(続

●◾するとバックチェックが間に合わなかったことは認めたが、それでも地震で壊れたのではない、継ぎ手からの水漏れ原因は海水による腐食だと判断している、100パーセント否定しないが、と東電は回答。◾100パーセント肯定も否定もする術はないのだからそれで十分だ。終わり。
===================================

すると、思いもかけない貴重な情報がツイートで送られてきた。

かいつまんで言うと、東電の元技術者木村俊雄さんが、2013年10月に、『東京電力「福島原子力事故調査報告書」の考察(その2)~地震動による福島第一1号機の配管漏えいについて~』という考察を試みていて(雑誌「科学」にも執筆)、これもかいつまむと、「東電は、地震動によって安全機能が喪失したことを、少ないデータを基に否定してきたけど、配管などから冷却水がリークしていた可能性があったのではないか」と指摘していた。

そしてその後の分析で、事故直後から冷却水の水位が下がっていたことが明らかになったというのだ。気になっていたが、やっと、昨日、少しだけ調べてみた。

すると、「過度現象解析」なるデータを東電が隠していたことを木村さんが昨年7月に指摘、これを重く見た木野龍逸さんや朝日新聞の木村英昭記者が追及して、ついに公開され、水位の低下がデータで証明されたということが分かったらしいという、おおよその全体像がやっと分かった。

重要データを隠し続ける東電 国会・政府両事故調にも提出せずか
http://kinoryu.cocolog-nifty.com/go_kinoryu/2013/07/post-9c73.html

つまり、もしかすると、今回の1.5ミリの蛇腹の継ぎ手問題は、この件と深くリンクする可能性があると考えてくれた人がツイートしてくれたのだ。ツイッターってやはり凄いんですね。

そんなわけで、飲み込みの悪い私自身は今すぐ、この「過度現象解析」なるデータを理解しにいく時間がないが、ここにそのときの取材メモを公開しておきます。

全国の他の原発の規制強化にもつながらせるべき問題ではないかと思う。

●5月28日東電会見 Aは白井功 原子力・立地本部長代理

Q:今の点で、S/Cの件で、2,3号機はこのタイプのものではないという話でしたが、1.5mmの継ぎ手がついているものは柏崎刈羽にはありますか?

A:柏崎刈羽にはBWRと福島第一の6号機以降のBRWの4あるいは5といったタイプになりまして、こういった圧力抑制室のトーラスといったものはありません。いわゆるS/Cといったドーナツ型の非常に大きなプールになっていますので、同様の構造にはなっていません。(後刻、追加・変更の回答あり)

Q:同様であれば他の社の原発でもこういった1.5mmの継ぎ手がついている原発はある可能性はあると?

A:伸縮継ぎ手につきましては、このような構造の発電所はいくつかあります。さきほどお話しましたように、腐食の可能性は高い、原因は海水を注入したということだと思います。ですので、今回のような漏えいについては、そういったことがなければ、腐食などしやすい環境ではありません。5枚目のスライドですが、ここが腐食している図ですか?

Q:伸縮蛇腹というのはパイプとパイプをつなぐそれだけの意味のものですか。伸縮する機能を持たせたものではないんですね。

A:事故が起きたときの熱の膨張とか圧力の変動とか受けることがしやすいように伸縮できるようにしている。

Q:クッション的な。

A:ただ、爆発とかなんかがあったときに急激な振動を受けるというよりは、運転を開始したときの熱の膨張ですとか、そういったものを、運転したときに、圧力容器が厚くなって、格納容器が暖かくなってくるとそういったときにだんだん膨張したりしてきますので、そういったときの熱の膨張を吸収する役割。

Q:地震の影響はないのかとこちらの方がおっしゃいましたが、もともとそういうものであるとすると、爆発とか、地震によってピット切れてしまうとかそういうことはあるんじゃないでしょうか。当時はASで今はSSですとおっしゃいましたが、これは地震の基準のことですよね。すると想定外の地震がきたわけですから、ASを満たしている機能ではダメなのでは?

A:当時はASで確認をしている。そのあとに、バックチェックということで指針の見直しをしていてSSで評価をしました。今回の3月11日に観測された地震はSSとほぼ同等と我々の耐震評価から得ている。今、A:Sで当時OKだった設備がSSで問題がないかどうかを見ているので、大丈夫だという結論を得ているので、3月11日の地震は、SSとほぼ同等であったと、いわゆる地震そのものについては、SSと同程度なので、それによる影響は、問題なかったという。(これは3日後の会見で間違いと訂正)

A:判断しているということですね。バックチェックは何年ですか。

Q:バックチェックをやっていた途中の段階で地震がきています。バックチェックをやっていたのがいつかは確認します。

A:確認をお願いします。この内側は今回は確認できない。これは今後IRIDで開発?

Q:内側はすでに漏れていることが確認できている。他は今後の調査は、その確認できている。

A:先ほどの質問、柏崎刈羽につきましては、6、7号機はA:BRWといった形。それに対して、1=5号機阿BRWの5になります。福島第1~5号機まではドーナツ状のタイプ。柏崎は上にドライウェル、下にトーラスという形ではなくて、釣り鐘型の一つの形になっています。ですので、今行ったベント管といったものですとか、そこをつなぐ真空破壊弁のラインといったものはこちらでは、真空破壊弁そのものはあるけれども外にはみ出るといったタイプのものではありません。

Q:外側にはみ出るタイプのものでなくても、たとえば、福島第一の2~5機もこのような蛇腹でパイプとパイプをつないでいるものはあるのでしょうか。

A:即答はしかねますけど、確認させていただきます。

Q:蛇腹の部分は建設当時のものか、リプレース部品か?材質は?
A:確認する。
(3日後の会見で、蛇腹部分は「一度も交換したことがない」
 材質は「ステンレス」と後刻回答)

●2014年5月30日 東電会見 Aは東電小林さん

Q:水曜日の会見のときに白井本部長代理に尋ねたこと。S/Cの水曜日に発表があった蛇腹の継ぎ手の部分について、地震動で切れたのではないかと聞いたら、腐食であると答えた。

そのときに、基準地震動を3.11のときは満たしていたというが、国会事故調を見ると「耐震バックチェックを急ぐ必要性について、東電も保安院も認識していたにもかかわらず、東電は最終報告書提出予定を2016年1月としており」「地震動に耐えられるような補強がなされないまま、本地震を迎え得ることになった」と書かれているので、水曜日にいただいた答えは間違っていたのではないか。

A:そちらにつきましては、確認をしております。おっしゃられた通り、耐震バックチェックについては、鋭意進めていたところでして、今回の当該部については実施がされていないということのようで、そこにつきましてはおっしゃられる通りです。

で、バックチェックですけれども、その中で、特に重要な配管について実施しているということで進めていたところですので、全体的にはまだ終わっていなかったというような状況でございます。

Q:そうするとこの蛇腹のオリジナルのものかそれともリプレースしたものかということを確認していただいていると思うんですけれども、これが設置当初のものだとすると、経年変化で、今回、地震で亀裂が入ったということもあり得るんだと思いますが、その点はもう確認していただけましたでしょうか。

A:申し訳ございません。ご質問いただいていた件で、今、確認されているものについてご回答させていただきます。

まず一つがですね。今、おっしゃられた伸縮継ぎ手の交換実績がありますでしょうかということについて関しましては、交換実績は特にございません。今まで交換していないということでございます。

それから同様な伸縮継ぎ手が他にもありますかということに関しては、格納容器内にありますかということに関してですが、ま、今回と同じような伸縮継ぎ手というのは、これ以外にはないようであります。この2点が確認できているところでございます。

それから今、ご質問があった、腐食以外の可能性はどうでしょうかというところですけれども、一つは評価が終わっているか、終わっていないかということに関しましては、申し上げましたとおり、まだ終わっていないということです。それから今後確認するのかということについては、現段階でははっきりわかっていません。

もう一つ、言えることなんですが、以前も私、お答えさせていただいているんですが、まずプラントが停止して、その後の挙動の中で確認されていることなんですけれども、まず、しっかりと原子炉が止まったということと、圧力が上がっていていることは確認できています。

今回のような伸縮継ぎ手等は、圧力があがりますと、ここから圧力がどんどん逃げていく形になりますので、そういうところから判断しても、地震がおきて、プラントが停止した段階では、通常のプラントの挙動を示していたと、現段階では考えています。

で、また地震で壊れたかどうかということについては、今、明確に壊れていませんとは言えませんけれども、今のところ、地震によって何か壊れたかどうか、壊れているようなものがあったかということに関しては、そういうところは、当社としては、今のところは確認ができていないっていうようなお答えになります。

ですので、100%否定しているわけではございませんけれども、今後調査していくなかで明確になっていくのではないかと思っています。

=========================

347.記者会見の裏舞台

茂木経済産業大臣が会見で読みげたメモは経産官僚が4日前に原子力規制庁の官房審議官会見を見て作ったものだった件を書く。

この件を記事にするときには、書くスペースとして使うのはモッタイナイ、ことの本筋とは違う、しかし、これからジャーナリストや記者になろうと思う人には、少しは参考になるかもしれない試行錯誤を、先達として書いておく。

たくさん、良い記者が育って欲しいので。

私自身が目指す記者は、過去に起きてしまった不幸なできことが未来の人に繰り返されないよう「政策」に反映されるために書く記者だ。そのプロセスまたは結果を書き残し、社会的な合意形成(世論形成)につながるように目指す。会見を一つの手段として、情報の媒介者となり、考える機会と材料を提供しつつ、被規制者(または事業者)にとって都合の悪い隠された情報を掘り出して、政策決定者に突きつけて、政策転換へと向かう意志決定と社会の合意形成を促したい。

2014年2月26日に福島第一原発に足を踏み入れたことをきっかけで、取材を重ねる中で、その敷地から離れた「変電所」の脆弱性がまったく問題にされず、3.11後の規制強化につながっていないことが問題だとに気づくようになった。問題の核心は変電所(経済産業省)と外部電源の確保(原子力規制委員会)の二つが重なる所管を巡り、相互に責任転嫁が行われている(=彼らとしてはそれぞれ自分の責任の範囲を全うしていると考えている)ことだ。

2014年6月3日、経済産業省の大臣会見室に、「経済産業大臣として変電所の耐震化、強化ということが必要なのではないか」と大臣見解を尋ねにいった。官僚は、法令の壁に閉じこもり、できるだけ、仕事を少なくしようとする習性がある。二つの所管が重なる時、必ずといってよいほど、両方の官庁が自分の職務負担を少なく考えるので、「現実」はその透き間に落ちて、無政府地帯に陥ることがある。

そんな時に残された手段は、常識で判断ができる政治家の見解を引き出すことである。官僚に取材をしていてらちがあかないと思ったら、政治家に見解を聞きに行く。

この日、質問の前提として、液状化していたことを経産省は知らないと言い始めると、経産大臣はそこに反応し、「あなたの決めつけていることではないですか。経済産業省としては、お聞きをいたしております」と質問を遮ろうとする。

私にしてみれば、「大臣が」この時点で変電所の液状化を知っていたのは当然だった。なぜなら、会見室に入る10分前に、経済産業省の広報担当官に「液状化の問題を聞きます」と聞かれるままに通告しておいたからだ。「大臣は知らないと思うので、教えておいてください」とハッキリと頼んだのだ。会見時間は少ないので、時短のためである。

この件については、当事者である東電の会見担当者も、規制者である原子力規制庁も知らないことはそれぞれの会見で確かめてきたので、経産官僚が知らなくても、ましてや経産大臣が知らなくても、全く不思議はないと思っていた。

大臣が知っているか知らないかが重要なのではなく、どこまで知っているのかの感触を得た上で、こちらからさらに情報を提供し、その上で、どのような見解を持つかを得ることがこの日の私の目標である。

その意味で大臣が「ストーリー」を私が私の頭の中で組み立てている、と指摘したのは、その通りなのだが、その「ストーリー」を聞いた上で、その「ストーリー」が事実かどうかをあくまで大臣自身で確かめ、規制に生かしてくれることがこちらの意図である。

そう考えた上で、「即答は不要」とも言って投げかけたのだが、残念ながら大臣は一記者の言うことなど信用していないとでも言うかのように、大臣は、全幅の信頼をもとに、官僚が用意したメモに目を落としてそれを読み上げた。

以後、情報提供となるキーワードを投げても、「ちゃんとお答えをしました」と、それ以上は受け取ってもらえた感触がない。

大臣の読み上げたメモは次の通りである。
============
 東日本大震災の発災以前から変電所の設置に当たりましては、変電機などの電気の供給に直接影響する主要な設備を設置する場合においては、地質調査を行い、液状化の可能性を評価し、そして必要な場合は液状化対策を実施した上で設置をすることといたしております。
 今お話がありました新福島変電所においては、東日本大震災により液状化は発生いたしましたが、電気の供給に直接影響する設備において、液状化被害は生じておらず、これは当時の原子力安全・保安院の電力安全小委員会電気設備地震対策ワーキンググループにおいても、液状化による電気設備への被害がなかったことが確認されていると承知をいたしております
=====================

さて、今後どうすべきか。そう考えていると、会見の午後、このメモを用意した担当課長から電話がかかってきた。本質的なことをやり取りしたあと、「ところで、大臣が読まれたメモはあの10分で用意されたんですか?」と率直に聞いてみた。

すると率直に、「10分じゃ無理ですよ。5月30日に規制庁で質問されていましたね。それで作っておいたんです。」

課長が率直にそう教えてくれたのには理由がある。そう認めなければ、課長自身がどう液状化について知り得たのかを答えることができないのだ。

担当課長は3.11のときには別の部署にいたから、液状化の件を知り得ない。私は次のように詰め将棋を行った。

「事故を検証するワーキンググループの報告書には「液状化による被害はない」と書かれている。火力発電所は、液状化による直接的被害の有無は別として「液状化」があったことの「事実」が書かれ、それによって何が起きたかどうかは別として「液状化の被害」と書かれている。しかし、原発だけ、「液状化の事実」の有無すら書かれていない。でも、液状化について報告を受けていたというなら、報告書にはなくても記録が残っているはずですから、その記録を開示請求しますよ」

すると「文書はない。口頭だったかもしれない」という。
そこで、果たして経済産業省が液状化をどう知り得たのかが不明となった。

そこで、「ところで、大臣が読まれたメモはあの10分で用意されたんですか?」と聞く。すると、なんと、私自身が5月30日に規制庁で聞いた質問がもとだったと担当課長は答えたのだ。

東電は「知らない」、規制庁は「聞いていない」その会見録を目にした経産省が念のために作っておいた想定メモが、会見前の10分間で広報担当から電気安全課に回っていった通告により、引き出されて、大臣の手に渡っていったのだった。

所管の壁はともかくも「規制者」たる政府の一員である大臣が、このとき初めて、自分の口で「変電所が液状化した」事実を認めたことになる。

霞ヶ関にとっては、行政文書に書かれていないことは、問題が存在しないこととイコールである。これを行政文書化させることが、このことを知り得た取材者としてなすべきことなのだと今、考えている。

政策への反映はその次だ。

=====================
http://www.meti.go.jp/speeches/data_ed/ed140603j.html
茂木経済産業大臣の閣議後記者会見の概要から抜粋

平成26年6月3日(火) 9:06~9:16   於:記者会見室

新福島変電所
Q: 福島第一原発につながる変電所の件でお尋ねしたいのですが、先ほど広報の方がお伝えいただいたかもしれませんが、新福島変電所という変電所で液状化が起きて、45カ所の損傷を受けて、変電設備に起きていたのですが、そのことを資源エネルギー庁の地震対策ワーキンググループに対しては、東京電力が報告をしておりません。ですので、経済産業省としてはそのことの事実に気づいておりませんで。
A: それはあなたの決めつけていることではないですか。経済産業省としては、お聞きをいたしております。

Q: それは先ほどお伝えしたのです。
原子力規制庁は経済産業省の所管であるということで。
A: 規制庁は経済産業省の所管ではありません。

Q: 原子力規制庁にこの原発からつながる変電所について聞いたところ、変電所の所管はあくまで電気事業法に基づく経済産業省の。
A: 変電所についてはそうですけれども、規制庁の所管は経済産業省ではない。

Q: もちろん知っています。変電所の所管は経済産業省です。ところが。
A: 正確に申し上げると、電力の安定供給のために必要な設備に関する所管は我々であります。

Q: ところが、事故を受けて、経済産業省は安定供給のための送電施設について、ワーキンググループで検討しております。そこで東京電力は変電所について液状化被害なしということで、規制の評価につながっておりません。実際のところ、原子力規制庁の方で行っている再稼動に向けての審査で(まさの加筆:川内原発では)、115回やっていますが、もちろん変電所については何の審査も行っていません。
 例えば、九州電力に聞いたところ、変電所についての耐震化は500ガルまでということでやっているのですが、新福島変電所の場合、1,069ガルの加速度、震度、揺れを経て、45カ所損傷したということであります。
 ですので、質問です。
 経済産業大臣として変電所の耐震化、強化ということが必要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

A: 東日本大震災の発災以前から変電所の設置に当たりましては、変電機などの電気の供給に直接影響する主要な設備を設置する場合においては、地質調査を行い、液状化の可能性を評価し、そして必要な場合は液状化対策を実施した上で設置をすることといたしております。
 今お話がありました新福島変電所においては、東日本大震災により液状化は発生いたしましたが、電気の供給に直接影響する設備において、液状化被害は生じておらず、これは当時の原子力安全・保安院の電力安全小委員会電気設備地震対策ワーキンググループにおいても、液状化による電気設備への被害がなかったことが確認されていると承知をいたしております

Q: 大臣、それは東京電力が1,000本の杭を打って締め固めをしたり、水抜きの井戸を掘って対策をしていて、たまたま重要なところはそれで助かったということを担当者は言っているのです。この事実も1,000本の杭を打っていた。それは中越沖地震を受けての対策を密かにやっていたのです。それを公表していないんですよ、一切。取材でようやくわかったわけです。
 それを踏まえていないので、もう一度言います。川内原発では、電気施設の技術基準、それから建築基準法、そして変電所等における電気設備の耐震設計指針で確保していますが、従来どおりのものであって、今回の地震を受けては一切評価をしていないのです。それは九州電力のせいではなくて、経済産業省がこの事態に気づいていないからだと思うのですが、即答は不要ですので。
A: 今のお話について、私は前段と後段でお話ししました。その前段できちんとお答えしています。よく聞いてください。あなたはあなたの考えでストーリーを組み立てていますけれども、今2段にわたって私はお話ししました。その前段で、今あなたが言っていることについて、しっかりお答えしています。

Q: 一言たりとも1,000本の杭を打っていたとか、取水井戸を掘っていたことは。
A: あなたの頭の中で、いろいろなストーリーを組み立てているのだと思うのですけれども、あなたの質問を聞いて私もお答えしました。その答えの前段の中で、あなたが今言われていることについて、きちんとお答えしています。

Q: でも、これは全国の原発の安全にかかわることです。ですから、東京電力の答えと同じことを大臣はおっしゃっているのです。つまり液状化というのは、被害にリンクしていないから報告しなかったのだと言っています。
A: そうは言っていません。ちゃんとお答えしています。あなたは自分のストーリーを組み立てて、自分のストーリーどおりにお答えいただけるかどうかということで期待していますから、私がきちんとお答えをしても、その部分は全く聞かずに自分の質問に入っているわけで、もう一回自分で私の答えを起こしてみてください。

Q: 大臣のお答えは規制強化は必要ないということですね。
A: そうは言っていません。ちゃんとお答えをしました。
 私の答えを言ってみてください。

Q: 大臣が前段でおっしゃったのは、液状化というものによっての被害は起きていない。
A: それは後段の話です。前段の話を言ってみてください。

Q: 前段の話はこれまでの対策をとってきていて、既にそれを十全に果たしてきているということをおっしゃいました。
A: 違います。ちゃんと起こしてください。

================

この前後で、1.東電→2.原子力規制庁審議官→3.東電→4.経産大臣★→5.原子力規制委員長→6.東電→7.経産大臣→8.東電と 会見での詰め将棋はまだ続いている。上記は★の部分である。

2014年6月 6日 (金)

346.ダムのための赤倉温泉でいいのか?

「赤倉温泉」を守るためのダムであるにも関わらず、実際はダムを作るための「赤倉温泉」になってしまった。

Photo5月18日朝、小雨が降る中、最上小国川から見れば高台に工場を構えている早坂建具製作所の早坂義範社長の元を訪れた。

早坂社長は県が開催する「最上小国川流域の治水対策等に関する協議」に赤倉温泉町内会長として参加されている。どんな発言をしてきたか、今後、どうあるべきかを聞かせて欲しいとお願いをした。かいつまむと、こんな話だった。

「ダムの建設に応募したのは昭和62年。もう25年以上経っている。一日も早く本体工事に着工して完成させたいとお願いした。最終的には、話するネタもなくなったから、宜しくお願いしますと、漁協の組合長に言った」

「組合長が6月8日の総代会で決めますという話だった」

実際には、6月8日に「ダム計画容認」を小国川漁協の総代会で議題とすることへの賛否が、5月16日に漁協の理事会(10人)で問われ、6人の賛成、4人の反対で、議題とすることが決まったという話である。

そこで、6月8日に漁協組合員の中から地域ごとに選挙で選ばれている「総代(そうだい)」さんたちによる「総代会」でダム計画を容認するか否かが決まると報道されている。(実際には「漁業権」は漁業権を持つ一人ひとりの権利であり、所属している漁業組合が多数決でダム計画に容認かいなかを決めることができるものではないのだが。)

自死された前組合長が指揮した「ダムに頼らない治水」を引き継いでいくかどうか、総代たちがどのような態度を選ぶかは大きな分岐点となる。

ここから先は、周辺取材によって分かったことだ。

5月17日(ダムに頼らない治水派が新庄で集会を開いた日)に、最上町を拠点に持つ地元の建設業者である株式会社大場組が組織している建設会社の協力会「大友会」のメンバーが集まった。

この会には大場組の社長と40年来の友だちである塗装業の社長高橋光明さんも入っている。実は、この高橋氏が、2月10日、自死された小国川漁協組合長の後を継いだ、新・組合長だ。

この高橋組合長は、5月17日に、そこで、ダム賛成に回ったということを語ったという。県に、魚道の整備などの交換条件を付けられて、グラっと来たのだろうという人もいた。

それだけではなかった。その後、高橋組合長は、6月8日に開く組合総代会を前に、ダム賛成の声を、赤倉温泉町内会と旅館から漁業組合に、少し大げさに強く、文書で要請して欲しいと頼んだと言う。

まさかと思ったが、実際、5月29日、赤倉温泉町内会の「早坂義範会長ら5人が小国川漁協を訪れ、高橋光明組合長に書面を手渡した。要望書では赤倉温泉地区の住民が安心して住み続けられるようダム建設促進への配慮を求めた。」(日テレNEW24)と報道されている。

「地元」の要請は、信じがたいことに新組合長が描いたヤラセだった。

「赤倉温泉」を守るためのダムとしてその口実に使われていたはずが、今やダムを作るための「赤倉温泉」になってしまった。

しかも、その構図を作ったのが、ダムに頼らない治水を要望していた小国川漁協の新組合長だった・・・。

県はそれを知っているか。本日、電話でそう取材すると、「知らない」と述べた。本来のニーズが抽出されることなく、偽物(あるいは産業界に偏ったというべきか)の意志決定の上に成り立って、自治体が運営される。その集まりと結果が、今の日本なのだ、だから、方向転換をすれば、未来には違う結果が残っていくはずだが、どうだろう。

2014年6月 5日 (木)

345.角哲也教授への呼びかけ

国際大ダム会議という国際的な「河川ムラ」がある。これには日本版の「日本大ダム会議」もあり、コンサル、ゼネコン、電力会社、および国交省から水源地環境センターへ渡りの最中の元官僚(渡邉和足・元河川局長)や、もう一つの天下り機関である水資源機構の理事までが集っている。
 
突然そんなことを書いたのは、「穴あきダム」を推進する場に必ず呼ばれる京都大学防災研究所の角哲也教授の、山形県最上町での講演のパワーポイント画像にその名前が出てきて、懐かしいとさえ思ったからだ。1990年代にその存在を知ったが、当然のようにまだあったのだ。
 
角哲也教授講演 http://youtu.be/uc7P7N9R-Jo  (11:40~)
 
角氏は、穴あきダムをなぜ推奨するのかを語ったあと、その名前が出てくるところで、「100年間あたり数週間程度、貯留するだけの構造物は、環境順応型でいいんではないかと国際的にも言われている」(11:40~)と述べた。
 
しかし、そのもとの英語は環境に「いい」とまでは言っておらず、角氏の論文を辿ると、Lemperierさんがそう言っているだけで、しかも環境の観点から許容できる(acceptableな)根拠は不在。国際大ダム会議での議論ならさもありなんだ。
 
続けて角氏はダムの大きさ比較に入り(12:00~)、さらりと、「アメリカでは非常に大きなものがありますし、日本の場合は比較的ヨーロッパに近い。いわゆる山岳地ですので、ダムの高さは50から100メートルぐらい」と述べた。
 
グラフを一瞬見せられて、耳で聞いただけでは、ヨーロッパの穴あきダムも50から100メートルぐらいである印象を得てしまうが、角氏の論文で、オーストリアにある穴あきダムは5.8~23.3メートルと日本の穴あきダムの4分の1から半分ぐらいの規模でしかないことがわかる。(この 2~3頁目に出てきます。)
 
しかし、一方で、洪水が頻発しているEU諸国ではオーストリアを含め、「可能な限り、本来、河川の土地である氾濫原を河川に戻すことが大切である。つまり洪水対策が河川復元を推し進める構造」(*)となっていることなどの情報はまったく提供していない。
 
 
少々不愉快な思いになり、一連の動画を送ってくれた草島進一山形県議や「最上小国川の真の治水を求めて」のシンポジウムの参加者に「学者として許せない」と感想を送ったところ、同じ京都大学の防災研究所に席を置いていた今本博健教授からも、講演 と質疑を聞いた感想が共有された。
 
時間制限なしの徹底公開討論をしようよ」との呼びかけが含まれ、共感するので、以下、それを転載をさせていただくことにする。
 
○まず、角氏の人物像について紹介しておきたい
 角氏は京都大学大学院修士課程を修了して建設省に採用され、土木研究所での勤務のあと、京都大学防災研究所に移り、現在、同研究所の教授である。
 海外の事例を紹介していたが、現地調査はいずれも国交省の外郭団体の経費によるものである。発言内容はつねに国交省の主張を代弁しており、典型的な御用学者といわれている。
 
○穴あきダムが推奨される理由について
 角氏は、穴あきダムが推奨される理由として、これまで国交省が主張してきた利点をそのまま述べているが、いずれも確認されたものではなく、願望に過ぎないといえる。
 穴あきダムが採用されているのはその利点によるのではない。多目的ダムで計画されたものが、利水が脱落したがために治水専用となり、環境についての懸念を払拭しようとして、確たる根拠もなく採用したにすぎない。最上小国川ダムも当初は多目的ダムとして計画されている。「どうしてもダムをつくりたい」が事業者の本音であり、御用学者がそれを支えている。
 本音は、貯水型ダムをつくりたいのであり、角氏の「流水型ダムにもゲート設置が有利な場合が多い」との発言は、このことと軌を一にしている。ダムさえできてしまえば、「いつでも貯水型に変えることができる」が事業者の本音ではないか。
 
○アユへの影響について
 角氏も「アユの成育には新鮮な苔が必要で、土砂が流動することが重要」としながら、最上小国川ダムが90m3/sを超える洪水をすべて調節し、最上小国川のダイナミズムを破壊することを無視している。ダムができれば環境が破壊されるとの懸念は払しょくされず、たとえ影響が小さいとしても、ダムがあることがアユ釣り人を遠ざけることになる恐れがある。風評被害であっても、ダムが原因であれば補償する必要があるが、事業者にその覚悟はあるのだろうか。
 
○穴あきダムの閉塞問題について
 角氏は「土砂は貯水池の上流端に堆積するのでダムには到達しない」といっているが、間違いである。
 土石流が発生した場合、巨礫は最先端を流動する。土石流の発生は洪水のピーク時とは限らない。これまでの調査では、流量がピークに達する前に土石流が発生することのほうが多い。もし土石流が発生すれば、ダムより100m上流の砂防ダムを軽々と乗越え、ダムに到達する。
 「巨礫は撤去すればいい」ともいっているが、豪雨のなかでは不可能である。裁判資料の被告側準備書面によれば、河道には巨礫が存在するとされているので、土石流が発生すれば、それに乗って巨礫は流下し、ダムに到達する可能性はある。角氏は現場を見ていないのではないか。
 
○反対派との討議について
 個人的には、角氏に「時間制限なしの徹底公開討論をしようよ」と呼びかけているが、反応がない。実質的に事業者が主催する会しか念頭にないようであるが、私は、「いつでも」、「どこでも」、「誰が主催しても」、喜んで応じる。
 ぜひやりたいものである。

344.最上小国川ダムに頼らない治水、頼る治水(動画)

最上小国川ダムを巡る動きが激しい。いくつかに分けてお伝えしていきたいが、その前に資料置き場として以下を並べる。忙しい人は★だけでも見ていただきたい。
 
■5月17~18日にシンポジウム「最上小国川の真の治水を求めて」(*)を踏まえ、
最上小国川の清流を守る会らが、赤倉温泉における「真の治水プラン」を発表した。
 
(*)最上小国川の真の治水を求めて 2014 5 17 
その1 明治学院大学教授・熊本一規さん 漁業権
  北里大学教授・朝日田卓さん 環境
その2 ★3分で分かる争点説明1:10~3:30 (草島県義)
   水源開発問題全国連絡会 嶋津暉之さん
その3 山形大学教授 川辺孝幸さん 地質学者
その4 京都大学名誉教授 今本博健氏 河川工学者
その5 新潟大学名誉教授 大熊孝氏 河川工学者
 
■一方、穴あきダムありきで手続 を進めてきた山形県は、上記への出席は断った上で、5月26日に最上町中央公民館で穴あきダムを推進するための集会「流水型ダムと内水面漁業振興を学ぶ町民のつどい~最上小国川流域の治水対策と地域振興の両立を目指して~」を開催した。
その1 県職員 穴あきダム進捗状況
  原 慶明最上小国川流域環境保全協議会 委員長講演
その2 角哲也教授 講演 
その3角哲也 教授 質疑応答の穴あきダムへの閉塞について+
  ★草島県義によるインタビュー
その4 小国川環境保全協議会委員長 原慶明 
  特にアユの環境についてとインタビュー
 
■参加者感想
 後者にも聴衆として聞きに行った「最上小国川の清流を守る会」の高桑順一さんからは、以下のように感想が寄せられきた。了解を得て、以下、貼り付けておきます。
 
「かなり空席がありました。最近の漁協の動きから、かなり盛り上がった集会になるのかなと思っていましたが、予想に反して盛り上がりにかける印象をもちました。行政が必死に旗をふっているのに町民の動きが鈍いという感じです。トークセッションでの発言者も、熱くダム建設をのべていたのは、消防団の金田氏ぐらいで、つけたしでダム建設を述べているという感じでした。我々のチラシが効果をあらわしてきているのかな!?と思ったりしました。
 
角教授の話と県の話にはかなりの落差を感じました。流水型ダム(穴が河床近くにあいているものを言い、上部に空いているいるのが穴あきダムとのことです)は今後とも自然環境への影響を継続して調査・研究していかなければならないと発言していました。
 
我々としては、漁協の動きに落胆せず、チラシ折り込みを出来るだけ多くして、町民・漁協組合員にはたらきかけていかなげればならないという気持ちを強くしました。
集会で配られた資料を添付します。
                                高桑」

343.普通の議論を国立競技場で

以下の案内と前後して、その登壇者の一人、原科幸彦・元IAIA(国際影響評価学会)会長からメールを受け取った。15日は先約があり行けないが、「どうして、こういう普通の、健全な議論ができないのか。権力者が発言するとその空気に負けてしまう専門家や行政官が多すぎる」との訴えに共感する。率直な議論ができない国にはしたくない。

■案内 緊急シンポジウム
神宮の森から新国立競技場を考える
日時 2014年6月15日(日) 午後1時30分~4時30分(開場1時)
会 場 日本建築家協会 建築家会館本館1階ホール
http://2020-tokyo.sakura.ne.jp/

■メール 許可を得てこちらに掲載します。

==転載始まり

原科です。

国立競技場の建て替え問題について。緊急事態。7月から解体工事が始まります。不透明性な意思決定で、気が付いた時にはこんなことに。

これを建て替えでなく改修にして、1964年の東京オリンピックの遺産を残せないか。しかも、神宮の環境を守り、1000億円近くもの無駄な税金使用を無くせます。

この件、建築家の槇文彦、鈴木エドワード、落合恵子、安野光男さんらの文化人をはじめ、谷根千の森まゆみさんらが声を出しています。私もこれに協力しており、15日には緊急シンポジウムを東京で開くのでアセスの話をと頼まれています。

しかし、そんなことでは埒があきません。世論はなかなか動かない。以下、森まゆみさんたちのサイトを見てください。酷い話です。

  http://2020-tokyo.sakura.ne.jp/

「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」です。
まさに、持続可能性をという声です。

昨日のJAPA総会とシンポジウム
昨日は、私が会長を務めていた日本計画行政学会の総会とシンポジウムがありました。今年から一般社団法人になりましたので、その設立総会です。大西隆さんが私の次の会長を務めました。4月からの会長は中央大学の細野助博教授。彼は公共選択論が専門です。

シンポジウムは、以下のような企画です。

 テーマ「東京オリンピックとスマートシティ」

 基調講演「お台場の開発とオリンピック」
   青山 やすし(明治大学公共政策研究科教授)

 パネルディスカッション「スマートシティ構想とオリンピック」
  パネリスト
   青山 やすし(明治大学公共政策研究科教授)
   鈴木 寛(元文部科学副大臣)
   山本 浩(法政大学スポーツ健康学部教授)
   大野輝之(自然エネルギー財団常務理事)
   河野通長(前・日立製作所主管技師長)
  コーディネータ:
   大西 隆(日本学術会議会長
       日本計画行政学会前会長)

この議論で、基調講演を行った元東京都副知事の青山やすしさんは、暗に、国立競技場の建て替えを批判していましたが、明言はしませんでした。IOCは、leagacy と sustainability を特に重視しているとして、スライドで国立競技場の建替え計画を示し、面積は4倍にもなり、15メートルの高さが70メートルもの巨大なものになると説明しました。環境へのインパクトは強烈で、地区の景観計画など吹っ飛びます。

そして、これは屋根を開閉式にしたためで、4倍もの面積とあの高さになってしまったと批判的に説明していました。しかし、明確にこれはダメだとは言わない。それは、解体が7月で、もう決まったことだからでしょう。しかし、東京都は、500億円も出せないとは強調していました。当初、1700億円の建設費、減額しても1400億円弱の予算です。改修なら700億円台。

鈴木寛元文部科学副大臣は、国立競技場は老朽化したためと強調。そして、開閉式にしたのは、森元首相がラグビーの世界大会をここで開きたいためだというのです。しかし、そのためなら8万人収容の競技場は不要。観客は2万人も入らないでしょう。横浜スタジアムで十分。

どうして、こういう普通の、健全な議論ができないのか。権力者が発言するとその空気に負けてしまう専門家や行政官が多すぎる。

私は5時までしか参加できませんでしたが、会場を出て飯田橋駅の歩道橋で沢山の人が、ブルーインパルスが飛んでくるとカメラを構えていたのを見て、驚きました。昨日は、国立競技場でお別れのイベントが行われていたのです。自宅ではテレビニュースで、このイベントを報じていました。

これで良いのでしょうか。

レガシーは、オリンピック開催で重視されており、環境はスポーツ、文化と並ぶ、オリンピックの3本柱と位置づけられています。この建て替え計画はオリンピック憲章に、明らかに抵触しますが、IOCはそのことを認識していません。事実が伝えられていないようです。

皆さん、社会工学を学んだものとして、社会の意思決定を合理的で公正なものとするよう、知恵と力を貸して下さい。

==転載終わり

342.スーパー堤防裁判(撮影録音不許可の件)

●公共事業市民改革会議が、除却(強制収用のようなもの)処分の迫る江戸川区北小岩のスーパー堤防事業を巡り、第五回目の公開質問を行っている。

スーパー堤防裁判、裁判所から撮影許可について返事
2014年4月18日、スーパー堤防裁判を巡り、東京地方裁判所民事38部の谷口豊裁判長宛で、「撮影および録音の許可願い」を出していた。

6月3日、電車に乗っているときに電話がかかり、折り返して、返事を受け取った。

「不許可ということになりました」それだけ言って電話を切ろうとする。
「理由は?」と尋ねると、
「詳しい理由はお答えしていません。
 裁判タイとしては申請に対する判断を行いました」
「判断基準はありますか?」
「申請に対する裁判タイとしての判断です」
「基準はない。裁判タイのタイは自衛隊の隊ですか」
「身体の「体」です。裁判体。裁判長と2人の裁判官ですね」

私が出した「撮影および録音の許可願い」の内容は次の通り。

===============================
■以下の公判につき、公判中の撮影(スチールおよびムービー)と録音の許可を、
 民事訴訟規則第七十七条に照らしてお願い致します。

2014年6月20(金)13:30~ 803号法廷
江戸川スーパー堤防事業江戸川仮換地処分取り消し請求事件(行ウ 第744)

■許可願いの理由
この事件に関する記事、原稿を執筆するため。
===============================

申請を出す際、裁判所事務局は、
許可申請には「理由」の他、「活動内容」も書けといっていたが、
私は、バカじゃなかろうかと思った。裁判所は何時代に生きているのか?
最近、行政でさえ、情報開示請求する際に「理由は?」とか聞かないし、
まして、日頃の活動内容を書けなど絶対に言わない。
これが単なる個人なら、完全なプライバシー侵害だ。

しかし、事務局とのやり取りから、
今まで裁判開始前に静止画像のような動画を1分撮らせるぐらいしか例がないのだろうから、一歩踏み出してもらうには
「判断材料」が必要なのだろうと、前向きに考えることにして、
著書2つのタイトルとその他多数、と書いておいた。

=================
■許可できない場合は、その理由も合わせてお教えください。

2014年4月18日
=================

しかし、結局は、判断基準も示さず
ただ「不許可」と言うために1カ月以上もの時間を要したのだ。
では、何のための「理由」でありなんための「活動内容」だったのか。

今回の要請の根拠にした民事訴訟規則第七十七条には次のようにある。

=================
民事訴訟規則 (法廷における写真の撮影等の制限)
第七十七条 法廷における写真の撮影、速記、録音、録画又は放送は、裁判長の許可を得なければすることができない。
=================

しかし、事実上、問答無用で許可しないための根拠になっている。
そう分かったことでまずは一歩だ。

●なお、この裁判官は、フリーランスのジャーナリストらによる「特定秘密保護法訴訟」を裁く裁判官でもある。私は手一杯なので参加しなかったが。

第一回裁判期日 6月25日(水)11時~ 東京地裁第803号法廷
東京地裁民事第38部・谷口豊裁判長
詳しくは、例えば、畠山理仁さんのブログへhttp://hatakezo.jugem.jp/

341.福島第一原発と節電の話

2014年6月1日(日)に気候ネットワークが開催した
気候女子トーク 原発も温暖化もない新しい未来に向けた7つのポイント
でお話した内容を共有しておきます。
(動画 http://www.ustream.tv/recorded/48275623 )では25分目ぐらいから15分間)

ここをクリックすると、スライドで見られるようです。

340.本日中にやらなければならないことリスト

死にものぐるいでやらないとやるべきことが終わらない。自分用のメモを公開して自己プレッシャーをかけて頑張ってみる。

■山形県の最上小国川ダムその後(緊急)
■スーパー堤防裁判、裁判所から撮影許可について返事
■国立競技場(緊急)
■吉野川河口干潟
■海岸法改正その後(環境女子会☆)
■変電所液状化問題フォロー
■図書館に本を返しに<『放射線被曝の歴史』中川保雄著
 情報が密で手元に置いておきたいので買ってしまった
■水資源機構 開示情報分析
■フルプランその後
■辺野古~瀬戸内
■小豆島の水漏れダム
■「沖縄の真実、ヤマトの詐欺」 紹介
■A.L.への情報提供
■M.A.への情報提供
■農場へのお礼状
■気候女子トーク

2014年6月 1日 (日)

339.不合理な多目的ダム計画はなぜ続くのか

と、動画を見やすくまとめてくれました。
 
彼はお母さんの介護中心の生活を送られており、
私がやりたい!と思いながら、くたびれて寝てしまってやりそびれていることを
こうして時々、介護の合間の時間を使って、まとめてくださっていて、
その度に感謝をしてツイートさせていただいています。
    
この梶原さんは、今月、7年前の博士論文を加筆・修正した
 
(帯の言葉)
 「無駄な公共事業」という言葉に対して、条件反射のように「利権の構造論」を思い浮かべる人が多いのではないか。しかし、それだけでは全容の解明は難しい。多目的ダム計画においては、治水と利水の絡み合いが鍵となる。本書は、技官の世界とされ、社会科学のブラックボックスだった河川・ダム政策の問題点に迫る。河川行政史を縦糸に、利根川開発を横糸に、社会科学・自然科学を越境するアプローチで、ダム計画の問題点を鮮やかに描き出す。
Photo
「不合理な多目的ダム計画はなぜ続くのか」、
同じ問いを問われている方の頭の整理に
ムダなダムを作ってしまったと後悔の念を密かに抱えている河川官僚に、
そして、今後、河川行政に携わってみたいと考える若者に
呼んで頂きたい本です。

« 2014年5月 | トップページ | 2014年7月 »

2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ