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2013年12月12日 (木)

279.国土強靭化の変遷と自民党構想への回帰①

結局のところ、自民党が2012年6月に単独で提出した「国土強靱化基本法案」は、公明党による「防災・減災」色、生活の党による「生活」色による自民党色薄めを通して、成立した。
 
しかし、最終的には当初の自民党案へと回帰している。次の通りである。
 
●2012年6月自民党が単独で「国土強靱化基本法案」を提出した。
 
これには「国土の均衡ある発展」という20世紀のキーワードが盛り込まれ、次のような時代錯誤的な特徴や性質をはらんでいた。
 
・既存法や予算措置で実行できることを“災害”を理由に重みづけし、予算を確保する。
・環境保全、自然再生、老朽化対策の視点はなく、抑制・縮小してきた新規開発を復活・拡大させる。
・国民は「参加」ではなく、国土強靱化戦略本部(総理)、国民運動本部長(大臣)のもと、国及び地方公共団体が実施する国土の強靱化に関する施策に「協力」するよう努めなければならない。
 
具体的には次の通りだ。(■印が内容に重複のある既存法だ。)
 
1.他の公共事業長期計画の根拠法との重複がある。
(目的)第1条/(基本理念)第2条、
(国土強靱化基本計画)第7条/(広域地方国土強靱化計画)第8条/
(都道府県国土強靱化計画)第9条/(市町村国土強靱化計画)第10条
■社会資本整備重点計画法、国土形成計画法、国土利用計画法
 
2.他の開発法、基本法の屋上屋となっている。
(基本理念)第2条 国土の均衡ある発展
(農山漁村及び農林水産業の振興)第20条/(離島の保全等)第21条
(東日本大震災からの復興の推進)第11条
(基本理念)第2条 大規模災害を未然に防止し/発生した場合の措置
(大規模災害に対し強靱な社会基盤の整備等)第13条、14条
■北海道開発法/首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律/近畿圏整備法/近畿圏の近郊整備区域及び都市開発区域の整備及び開発に関する法律 /中部圏開発整備法/過疎地域自立促進特別措置法/離島振興法/沖縄振興特別措置法/東日本大震災復興基本法、災害対策基本法/被災市街地復興特別措置法/農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律/建築基準法
 
3.予算措置で可能、増税につながり、焼け太り、バラマキとなるもの。
第6条 必要な法制上、財政上及び税制上の措置その他の措置を講じなければならない。
第12条 必要な道路等の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。
第15条 自然エネルギーの利用の促進、原子力発電施設の地震等に対する安全性の確保
第16条 行政機関の業務の継続のために必要な情報システムの整備その他の必要な施策
第17条 大規模災害の危険を分散するための工場その他の事業所の移転の支援
第18条 高速自動車国道、新幹線鉄道等の全国的な高速交通網の構築
第19条 港湾等の社会資本の整備、アジア地域その他の地域との貿易の拡大並びに経済の分野における交流及び連携の促進その他(略)必要な施策
 
4.公共事業改革、説明責任、情報公開、住民参加の発想は皆無
 “国家総動員”“向こう三軒両隣”並みの発想
第22条 隣保協同の精神に基づく国民の自発的な防災活動に対する支援その他の地域共同体
第24条~39条 ○内閣に国土強靱化戦略本部設置(本部長:内閣総理大臣、副本部長:内閣官房長官及び国土強靱化戦略担当大臣、部員:全大臣)。○国土強靱化国民運動本部による国土強靱化国民運動(国民の積極的な協力並びに国土の強靱化の推進に関する活動への国民の自発的な参加を促進するための活動)。○両本部は、関係機関に資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。○地方公共団体は都道府県国土強靱化国民運動本部、市町村国土強靱化国民運動本部を置くことができる。
 
上記1と2の問題は、■印をつけた既存法ですらスクラップが必要な古い法律がたくさんあるのに、さらにこの新しい法律ができれば、「行政コスト」が嵩み、強靭化の仕事をする組織が増えて肥大化する。また、計画作り業務を受注するコンサルが儲かるだけで、付き合いで新たな計画を作らされる「自治体」の財政をさらに逼迫させるだけで、その分、急務であるインフラ老朽化対策が遅れる。
 
上記2で警戒すべきは、民間事業もしくは民営化したはずの事業(原発、高速道路、新幹線)に国がリソース(人材、財源)を振り向ける旧自民党体制への回帰だ。それがなぜダメかは後述する。
 
上記3の第22条の「隣保協同の精神」には驚いた。「国土強靱化国民運動本部」には吐き気がした。これは前のコマで書いた構図 の理念が埋め込まれていた。これが自民党の本音であることが透けて見える。
 
この法案を一読して、自民党が野党だから、衆議院法制局が「どうせ成立すまい」と手を抜いて政治家の言いなりにいい加減なものを作ったのではないかという印象を受けた。すでに既存法で行っていることを複数あとで盛り込むにあたって「基本法」とつけることでごまかしたとしか思えない。閣法ではありえない法律案だろう。
 
なお、当時、この法案の提出を自民党の総務会で決定した日に、茂木敏充政調会長(当時)が、記者発表を行っている。「事前防災」という考え方で作ったこと、二階俊博国土強靱化総合調査会長、脇雅史参院国対委員長、福井照事務総長が中心でまとめたことが語られていた。後ろ二人は元・国交省官僚だ。
 
茂木・現経済産業大臣は、その会見でこの法律案によって必要になる財源について「自然に200兆円積み上がる」と述べた。以下の通りだ。
当時、公共事業予算は年間5兆円。10年間で国費で50兆円となり、地方を含めた事業費は100兆円になる。東日本大震災からの復興10年間計画で23兆円、事業費で30兆円となる。その他、事前防災の対策、インフラ整備、医療、福祉、エネルギーで、「自然に200兆円積み上がる」と言った。(参考画像→http://ajimura.blog39.fc2.com/blog-entry-2288.html )
 
しかし、その復興予算でさえ、現在までに少なくとも1兆円もの予算が、被災地とはなんら関係のない事業に流用され、そのほとんどが返還されていないことが分かっている。
 
この構想が省益と集票が欲しい政官によって「利権のバラマキ」の裏付けとして悪用されることは、法律案が審議されるよりも前に、民主党政権が倒れる前に、明らかになっていた。(続く)

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