241.石木ダム地権者が国土交通大臣に不服審査請求
長崎県が進める石木ダム計画、そこに住む住民の一人、石丸勇さんが、強制収用の前提となる事業認定処分(=土地収用に基づき、強制収用してでも進める公益性があると国交省が認める手続き)を不服として、10月3日に行政不服審査法に基づく審査請求を提出している。
強制収用のための事業認定申請を行ったのは長崎県。その申請を認定したのは国土交通省九州地方整備局。この認定を行うにあたって九州地整は、社会資本整備審議会公共用地分科会に意見を聞いているが、審査請求書で石丸さんは「社会資本整備審議会公共用地分科会議事要旨では、公共用地分科会における各委員の主な意見は、石木ダム建設工事に対する疑義や反対の意見が主である。それなのに事業認定されてしまうのは納得がいかない」と書いてる。
九州地整のウェブで探してみると、分科会では確かに次のような疑義しか出ていない。
・自治体が過去に見積もった水需要が実態と乖離し、財政処理に困っている例も見られる。利水起業者が、将来にわたって事業費を負担することが可能なのか、途中で撤退することがないのか。
・渇水と洪水に対する対策として理解しているが、工場用水もあるため、人口が全体として減少する中では、最終的に企業のためだけという形にみられてしまうのではないか。
・用地の取得状況について、ダム事業にしては、未買収の率が高いような気がする。
・山林の保水力を鑑みれば、山林を開発する施策を行う一方で、ダムを造るという関係は、今後の洪水・利水対策などの議論で、もう少し深く議論する必要があるのではないか。
(国土交通省九州地方整備局サイトの社会資本整備審議会公共用地分科会議事要旨 より)
石丸さんたちの不服審査請求を、上級庁である本省の国土交通大臣が受け取り、九州地整が行ったこの処分について、審査をすることになる。
【参考】
●国交省九州地方整備局 二級河川川棚川水系石木ダム建設工事並びにこれに伴う県道、町道及び農業用道路付替工事に係る事業認定理由について
●石丸勇さんが10月3日に提出した審査請求書は以下の通り。
====全文を転載させたいだきます=========
審査請求書
平成25年10月3日
国土交通大臣 太田昭宏様
審査請求人 石丸 勇 ㊞
次のとおり審査請求をします。
1 審査請求人の氏名及び住所
氏名:石丸 勇 年齢: 才
住所:ここでは略
2 審査請求に係る処分
平成21年11月9日付長崎県から事業認定の申請があった二級河川川棚川水系石木川石木ダム建設工事並びにこれに伴う県道、町道及び農業用道路付替工事について、平成25年9月6日土地収用法に基づき行われた事業認定処分
3 審査請求に係る処分があったことを知った年月日
平成25年9月6日
4 審査請求の趣旨
「2記載の処分を取り消す。」との裁決を求める。
5 審査請求の理由
〇 「意見書及び公聴会における主な反対意見の要旨と当該意見に対する事業認定庁の見解とを併記した意見対照表」に記載された認定庁の見解は、起業者への加担が著しい。第三者機関?とは到底言えないものである。起業者の言い分を追認する内容がほとんどだ。これだけ多くの反対意見が出ているのに、その意見を良とする認定庁の見解は1件もない。ということは、石木ダム事業に対する反対意見と、起業者側と一体になった認定庁の見解に対して対立の構図が見えてくる。本来なら、第三者機関であるべき認定庁は、起業者が見解の相違を解決できないで、「当該事業に対して激しい社会的な反対運動があり、事業認定の時期を遅らせても事態の改善がないことが判明した」のだから、事業認定すれば極めて大きな社会的混乱が予見されるとして認定を拒否するべきだ。
〇 事業認定申請から認定までのプロセスが「石木ダムありき」の進め方だった。そこに人が暮らしている。佐世保市民と同じ人権を持った、川棚川下流域の住民と同じ人権を持った者が石木ダム計画地に生活していることを忘れている。都市がよければ村や町はどうでもいいのか。東京がよければ福島はどうでもいいのか。その視点が欠けている。
〇 起業者の言い分を追認しているだけである。その証拠に、認定庁の見解の端々にそのことがにじみ出ている。例えば、「石木ダム案が優位であるとされている。」という表現が見られるが、このことは認定庁がひとつひとつ検証することなく追認したことを意味している。また、「・・・と思われる」や「・・・と思う」の類の表現はまったく根拠がないことを表している。これは長崎県と認定庁がべったり手を組んでいるとしか言いようがない。
〇 見解の中に「新規水源の開発が急務となっている」という表現があるが、半世紀に亘る賛成・反対の歴史があり石木ダムがなくてもどうにかなっている。長崎県が石木ダム以外の新規水源開発を佐世保市に認めなかった事実も判明している。
〇 4 法第20条第4号の要件への適合性 (1)事業を早期に施行する必要性の中で、佐世保市内の既存ダムの施設更新及び上砂浚渫のために石木ダムが寄与すると平気で言っている。既存ダムの施設更新及び上砂浚渫が、強制収用までして造らなければならない理由のひとつであるとは到底言えない。なぜなら既存ダムの改修のために一時的に水を貯留する方法はいくらでもあるからだ。
〇 この位の理由付で半世紀ももめている石木ダム計画を認め、石木ダムを造ることはできない。あまりにも軽率である。
〇 Ⅵ.起業者の姿勢欄の認定庁の見解では、「起業者や関係行政機関において、本件事業に関する説明の機会を確保し、地域住民等の理解を得ながら事業を実施することは重要であると思慮するが、事業認定は、土地収用法第20条各号の要件に照らして判断するものであり、本件事業認定において考慮すべき事項でないと考える。」と見解を述べている。ここで、土地収用法第20条で「・・・申請に係る事業が左の各号のすべてに該当するときは、事業の認定をすることができる。」としていることは、「事業認定しないこともできる。」ということで、すなわち「事業認定拒否」ができることである。
見解は、「反対者の心情等は・・・事業認定において考慮すべき事項ではない」とバッサリ切り捨てているが、それは間違いである。今後いつまでも尾を引く泥沼の争いに発展する要素を含んでいる。事業認定すれば極めて大きな社会的混乱が予見されるとして認定を拒否するべきだ。
〇 社会資本整備審議会公共用地分科会議事要旨では、公共用地分科会における各委員の主な意見は、石木ダム建設工事に対する疑義や反対の意見が主である。それなのに事業認定されてしまうのは納得がいかない。
〇 認定庁は第三者機関であるべきなのに、社会資本整備審議会公共用地分科会委員の意見に対し国土交通省九州地方整備局の認定調整官は、起業者側に立って説明したという。これは第三者機関としてはおかしなことだ。
〇 土地収用法第20条第2項は「起業者が当該事業を遂行する充分な意思と能力を有する者であること。」とある。が、起業者の長崎県はこの条項に反するものである。その理由は以下のとおりである。
イ 買収地の農地管理 管理不十分なため周囲の環境に悪影響を与えている。年に何回か草刈りを行っているが、農地を農地として利用していない。いわゆる耕作放棄地を創り出し、周囲に迷惑をかけることを起業者自らが行う姿勢は問題である。
ロ 買収地内に放置した産業廃棄物 住民に手本を示さなければならない立場の行政として、環境に配慮せず産業廃棄物を放置する姿勢は、事業を遂行する充分な意思と能力に欠ける者である。長崎県はISO14001を取得しているが、実践は石木ダムでは生かされてないということだ。
ハ 石木ダム建設事業では起業者である長崎県(知事)が、諫早湾干拓事業では「地元の意向を無視して開門をするのか」と法を守らなければならない国に対し批判を浴びせて実力行動をとっている。法を守らなければならない立場の行政(長崎県(知事))が法を無視する行動をとっている。一貫性のないこんな長崎県(起業者)が、「当該事業を遂行する充分な意思と能力を有する者である」とは到底言えない。
以上の理由により、「2記載の事業認定処分」に納得がいかないので、審査請求を求めます。
6 処分庁の教示の有無及びその内容
無
7 審査請求年月日
平成25年10月3日
8 意見陳述 希望する
===転載おわり=========
それから
●予定地に暮らすほーちゃんがナレーションの
「電子紙芝居 石木ダムはいらない!」はこちらから。
http://hozumix.blog32.fc2.com/blog-entry-245.html
●石木川まもり隊の関連ページ
http://blog.goo.ne.jp/hotaru392011/e/8b44cefef77e552dc45644294dd32959
●長崎新聞の石木ダム特集(2008~2009年)
http://www.nagasaki-np.co.jp/press/ishiki/index.shtml
●水源開発問題全国連絡会が地権者を支援するキャンペーンを展開し、現在までに石丸さんとは別に長崎県内外から90人が不服審査請求を行っている。
http://suigenren.jp/news/2013/10/06/4967/
●どうする、利根川? どうなる、利根川? どうする、私たち? Ⅱには地権者が傍聴を願った「今後の治水のあり方に関する有識者会議」(2012.2.22)の動画あり。
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