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2013年10月 9日 (水)

240.裁判長、起きてください!

裁判長が寝ている住民訴訟って一体なんだろう。

2013年10月8日、この日行われた審理は、控訴人側の二人の証人によるものだった。
茨城県民による八ッ場ダム住民訴訟は、現在、控訴審のさなかである。

裁判長が最初に寝たのは、二人目の証人、嶋津暉之(水問題研究家)が八ッ場ダム計画の根拠である利根川の「渇水」について証言を行っていたときだ。

「渇水」とひとことで言っても、利根川に関しては、常に矢木沢ダム(独立行政法人水資源機構のダム。東京電力が発電している)がカラになった映像や画像とともに報道されるので、節水意識を促すには効果はあるかもしれないが、実際にそれがどのようなレベルの「渇水」なのか、解説が付かないので一般人には分からない場合がほどんどだ。そして行政はこうした「渇水」をダム開発の根拠とする。

裁判長が寝たのは、嶋津証人のこの日の証言の中盤、行政側が八ッ場ダムの根拠として使う「渇水」がどのようなレベルの「渇水」なのかを示したデータを証言しているときだった。

嶋津証人は、東京大学大学院工学系研究科博士課程にいたときから水利用の研究に携わり、東京都環境科学研究所で、当時(1970年代)、急速に増え続けていた工業用水の節水技術を研究・導入・指導し、水の再利用を劇的に進ませ、水需要の急増を抑制させた実績を持っている。

とはいえ、東京都一職員なので、日本の高度成長の影に、このような研究の成果があり、立役者がいたことは世の中はみじんも知らないわけだが・・・。

さて、この証言が進むなか、原告(控訴人)側支援者(2013.1010訂正)の神原禮二さんが開廷前に傍聴人用に配ってくれた資料を見ていると、このことを説明した図表15はとても小さく縮小されていて、目が疲れる。ふと目を上げて裁判長を見ると、ずっと下をうつむいているん?

それで、証言を聞きながら見ていると、「はっ」と目を開いて裁判官が起きたので、あ、寝ていたのか、と分かった。

裁判長が聞き逃したところの証言はこういうことだ。

渇水といっても段階がある。

一段階目は「取水制限」。これは国交省や各都県でつくる利根川水系渇水対策連絡協議会で、取水制限率10%などと決めて取水することだ。家庭や事業所には影響しない。

二段階目は「給水制限」で、これには二つある。一つは「減圧給水」で、水の供給者が給水する際の水圧を下げて、家庭や事業所の蛇口から出てくる水の出方を小さくするものだ。もう一つが、「減圧給水」でも足りない場合に「時間給水」となる、いわゆる断水だ。

Photo_2

裁判長の居眠りは初めて見たので思わず、その瞬間をメモった。「さいばん官ネル」

裁判長の居眠り発見につながった上記のグラフで見るとおり、嶋津証人が東京都水道局の資料で調べたところ、利根川水系渇水対策連絡協議が利根川で行った渇水対策(取水制限)を検証すると、平成1年から25年のあいだに行われた「取水制限」は平成2年、6年、8年、9年、13年、24年、25年。

しかし、その中身は、白=取水制限がほとんどで、家庭や事業所には影響がない。
黒=「給水制限」(グラフ縦軸が制限率)は減圧給水のみで、断水は一回もない

「渇水」とカラっぽのダムが報道されようとも、実際は、節水の呼びかけだけで、流域住民の生活には影響がない。利根川流域圏は水需給については安泰であることを、このグラフは25年間のデータをもとに示していた。(実際に1964年東京オリンピック以来、半世紀もの間、断水は一回もない)

このデータは、控訴人にとっては、八ッ場ダムへの支出は違法である、ということを立証する一つの重要な根拠であり、それを3人の裁判官に示したことになる。

根拠は全部で34点にも及んだ。証人は、裁判長の顔を見上げて、弁護士の質問に答えながら一つひとつ丁寧に論証していった。

ところが、この論拠を審理する3人の裁判官のうち、真ん中の一番高いところに座っている裁判長が、寝ていたのである。

裁判長、起きてください!

傍聴人として、取材者として、そう言って起こすべきだっただろうか。

いや、そう悩まねばならない裁判所ってなんだろうか。

この八ッ場ダム住民訴訟茨城控訴審は、次回が最終弁論、結審の予定だそうだが、
 日時:12月19日(木)午後3時30分
 場所:東京高裁825法廷
審理中に寝ていて、これが公正な裁判なんだろうか。

果たして、この人は、その判決文に自分の名前を記すことができるのだろうか。

閉廷後、「裁判長が寝ていました」とコメントを促すと、嶋津証人が「そうなんですよ。裁判官のうち左や右にいる人が寝るのを見たことはあっても裁判長が寝るのをこれまで見たことがありません」と怒りながら呆れていた。

次の用事に向いながら、この珍事をツイッターでつぶやいたら、連動させているFacebookから、「だから法廷は撮影禁止なのです。そう思います」とある弁護士から届いた。

裁判官の居眠り防止のために法廷撮影を!?と私の妄想は広がった。

日本の司法公開の第一幕は、ローレンス・レペタさんによる「なんで日本の法廷ではメモを取ってはいけないの?」という当たり前で素朴な疑問から開けた。

第二幕は、八ッ場ダム住民訴訟の裁判官の居眠りから始まったという歴史になれば、それはそれでまた、面白いのではないか?

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コメント

藤田さま
ツイッターでは爆睡裁判官のお話が届きました。寝る、判決文を間違う・・・・。唯一自分が原告になった情報公開の裁判でも、あれ?原告の訴状を読んでいないなと思う受け答えが裁判官からあったことを思い出します。小学校レベルのお作法問題を抱えているような気がします。

政野様
裁判官の居眠りは私も何度か(私は自分や後援会長、会社関係の裁判と、8年間余り殆ど裁判にも明け暮れていました)見ました。
一番ひどくて開いた口が塞がらなかったのは、全く別の裁判の判決書を読み上げたことです。書記官が間違って渡したものだと思いますが、今自分がやった裁判も全く意識していない、何よりの証拠です。ある裁判官経験者は、無罪にするのは判決書を書くのに手間がかるので、検察官の立証をなぞって書く有罪は簡単だから、よほどのことがない限り有罪にすると言っていました。
           藤田恵

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