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2013年6月14日 (金)

208.「未来の子どもに残すのは借金じゃないんじゃないですかね」

東日本大震災後の後遺症とも言える予算付けが今、日本列島を覆っている。
 
昨年、自民党が法案として提出した国土強靱化基本法案は、憲法改正草案と色濃くリンクし、「自民党の願望むき出しの平成の国家総動員法」とも言うべき構想だった。国が決めたハコモノを推進する上で、国民や自治体は、単に協力をすればいいだけの存在として下に置かれていた。以下の通りだ。
 
国土強靱化基本法案 「第五条 事業者及び国民は、国土の強靱化の重要性に関する理解と関心を深め、国及び地方公共団体が実施する国土の強靱化に関する施策に協力するよう努めなければならない。」
 
これが万が一、成立していれば、公共事業を進める上で、国民は国が言う通りに賛成・協力しなければならない。立ち退けと言われれば、立ち退かなければならない国になるところだった。
 
昨年末、安倍政権が誕生した途端に、「国土強靱化担当大臣」が誕生した。そういう国作りをする意思がいよいよ明確になった。
 
そして今年、その法案の頭に「防災・減災に資する」という枕言葉がついて新たに自民党/公明党提案の「防災・減災に資する国土強靱化基本法案」が提出された。
 
上記の条文は、以下のように変わった。
 
防災・減災に資する国土強靱化基本法案「第二十七条 国は、広報活動等を通じて国土強靱化に関する国民の理解を深めるよう努めなければならない。」
 
しかし、実のところ、何も変わっていない。
 
法案を通すということは、この件に関しては、行政裁量を合法化するということに過ぎず、この考えに基づく予算付けは、すでに2013年度補正予算から始まり、個々の事業に法外な予算がついて行政裁量によって始まっているからだ。
 
以下は、昨日、議員会館で開催された「参議院選直前 緊急集会 『国土強靱化が日本を壊す』」で、「 NPO 法人 森は海の恋人」の副理事長 畠山信さんによる「巨大防潮堤計画は被災地住民を幸福にするか」 という講演の中で紹介されたスライドだ。
 
電光掲示板が建設予定の防潮堤の高さを示し、赤い点線がそのコンクリート防潮堤の予定断面図を示す。
 
Photo_4
 
海と人との関係は、近代に至るまで、その地域の人が自然発生的に決めてきた。しかし、東日本大震災後に津波に襲われた海岸は、国の意思により、決定的にそれを変えようとしている。数メートルから十数メートルの巨大な防潮堤で覆われようとしている。人と海、海とまちの関係を根本から変えてしまう事業である。
 
この計画がある仙沼市大谷地区では、住民3500人のうち1324人が、住民意見が反映される新たな計画作りを署名によって要請している。
 
国民は単に国が決めた事業に協力するだけの存在なのか、意思決定の重要な主体として地域づくりができる存在なのか、大きな岐路に立っている。
 
国土強靱化基本法案は10年で200兆円、1年で20兆円、「強靱化」の名で使いまくる構想だった。今回の「防災・減災」を枕言葉にした新たな法案は、それが出る前から、東日本大震災後の後遺症とも言える予算付けと予算執行によって具現化が始められている。
 
アベノミクスとは結局のところ、税金をばらまいて産業界を活気づけ、再び税金として吸い上げて、増税をしさらに税金をばらまくという構想だが、そのお金が国庫を通過するたびに、ハコモノ建設のための国債発行で借金が増えるだけではない。
 
それと反比例して、金では回収できない自然資源と、自然資源と人間との関係を減じていくことになる。昨夜、改めて、そう思った。
 
「未来の子どもに残すのは借金じゃないんじゃないですかね」
 
畠山信さんはそういって講演を締めくくったが、何を残すべきかというメッセージは、その問いのあとの沈黙から充分に伝わってきた。
 

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