186.旧計画の呪縛を解く(15)論説委員たちの意見
2013年3月8日13:00に開始。
今日もロの字型の利根川・江戸川有識者会議(第10回)。
議論が白熱するうちに、今日ほど
たくさんの矛盾が浮かび上がってきた日はない。
傍聴者に背を向けた河川官僚の背中ばかりが目立つ。
最後列の官僚達は一言もしゃべらないので、
ここに座っている必然性が何もないのだが・・・・。
本日のメモをまとめる前に、
前回までに出席が少なく、文書で意見を寄せた委員の中で
興味深いもの、特にマスコミ関係者の意見が興味深いので抜粋する。
(順不同/太字は当方で)
で配られた ↓
いただいたご意見について より抜粋。
*斜めは当方の感想。 赤字に関する感想は最後に記す。
●千葉日報 論説委員 渡辺鉱 委員
同会議第5~7回は、安全の水準を八斗島地点で年超過確率70分の1~80分の1、目標流量を1万7000立方メートル(1秒あたり)とする関東地勢局が示した案が妥当かを検討してきた。設定流量を「過大」と考える委員が複数おり、専門知識をもたない実には案の妥当性の可否を判断することは難しい。
ただし、6、7回会議で犠牲になった「群馬県水害被害図」については、「実態を示しておらず、誤り」とする指摘があった。整備局は「元図を補正し、推定・試算した」と説明し、その正確さについては論証しなかった。加えて、「試算結果は、新たな流出計算モデルの構築には用いていない」と強調した。この、議論の経緯を踏まえれば、同図を議論することには意味がない。同図は資料として意味はなく、取り下げるべきと考える。
*この図を問題視した委員たちは単に取り下げというより「撤回すべきだ」とした。元々日本学術会議(河川流出モデル・基本高水評価検討等分科会 (第21期・第9回))で使われたものであり(補足資料 資料2 P.15)、そのことも問題視した。また、計算流量と実績の乖離を説明するかのように誤解をさせていると批判した。
●茨城新聞 編集局次長 川上俊也 委員
示された流量の是非を今ここで求めることは強引すぎる。この会議の趣旨は、河川に関する専門分野に限らず、さまざまな分野のさまざまな知見を生かしていくことではないのでしょうか。それらを生かして、よりよい河川計画づくりを進めていくことにあるのではないでしょうか。
ところが、今回は「17000」の流量の是非とその根拠の妥当性に絞って判断を求められている。技術的側面の強い判断のみを求められているということ。流量の是非だけに絞るなど技術的側面の強いテーマに特化した判断を求めるのなら、当該分野に関する専門性を有する者に特化した議論の場を設けるべきではないでしょうか。
最後に、本来は政治がすべき判断の根拠づくりを押しつけているのではとの思いにかられる、との感想を付け加えます。
●上毛新聞 論説室論説副委員長 須田 雅彦 委員
3回にわたり議題となった「治水対策に係る目標流量について」の項目は、河川の専門家ではないので、示された流量について数値のみで評価することはできない。
目標流量以外に河川整備計画の具体的な施設計画等で、「河川環境の整備・保全」「堤防強化」「内水対策」などが検討項目にあるようだが、ほかにどのような課題があるのか、どのような手順で進めるのか、スケジュールを事前に提示願いたい。
●埼玉新聞 編集局長 石野栄一 委員
論点今後20~30年間で目指す安全の水準洪水流量17000立方㍍/秒が確信を持って妥当と言いきれる知識は持ち合わせておりません。(略)以上から、私は整備計画案の内容を支持致します。
その他ついて
有識者会議の日時設定について、2年ほど全く開かれず、その間も開かれない理由を知らされる機会はありませんでした。今年、初夏ごろから急に開催したいとの連絡があり、開催日程も事前の調整がされないまま一方的に示され、出席できない状況でした。しかも1カ月に3、4回の会議設定は、委員の都合というより整備局の都合を優先したのではと受け止められ、誠に遺憾です。会議設定の調整の仕方を再考願います。
*上毛新聞と埼玉新聞の各氏が述べた日程に関しては、関良基委員と大熊孝委員が2月14日に公開質問状で、2012年10月25日(木)~1月28日 (月)と日程調整をした会議を、9回連続で中止した理由を公開質問状で尋ねたことにも通じる。
また、次を開くのか開かないのか、いつ開くのかも含めて、記者からも毎回のように質問が出ているが、次回日程を示さないことを国交省は何とも思っていないようだ。
さて、赤字についてだが、これこそがまさに従来型の審議会のなせる技だ。
つまり、河川工学者と素人のマスコミを会議に入れておくことで、
素人には分からないから、専門家である河川工学者にお任せすることになる。
喜んで行政のための仕事をする御用学者と
幅広くご意見を聞いたことにするための素人(免罪符)の組み合わせで
会議を構成することにより、
自分たちが持っていきたい結論に反する意見がでないようにする。
今回の利根川・江戸川有識者会議については関東地方整備局は、
結論を出すためのものではない、ご意見を聴くためだけのものだと
繰り返してきたが、実は、普通の「審議会」であっても
本当に審議させたためしはない。
自分たち官僚がやりたいことへの同調意見を述べてくれる御用学者と
大衆へのガス抜き用に少人数の良識派を混ぜて、
言いたいことを言いっ放しにさせるだけで、
答申案をつくっておいて、意見を聴いて、「案」を取るのが
官僚の仕事であり、意思形成のやり方、政策決定の手法だった。
赤字にしたマスコミ委員の発言がそれを物語っている。
ちなみに、第4回有識者会議(2008年5月23日) までは
7. 資料-4 今後の進め方 などのように
今後のスケジュールはしっかりと示されていた。
それが、上記で苦情が示されているように
この回で中断されたまま、突然2012年に再開されたのち、
無計画な計画づくりに陥った。
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