163.浜岡原発OKの安全基準(案)
頭を抱えたくなるニュースが続きます。
複数テーマを、新聞記者とは違うペース、違う視点で取材していますが、
「この質問は今しておかなければならない」というものは記者ペースで取材にいきます。
その一つが日本列島がのっているプレートの話です。
原発の「地震・津波に関わる新安全設計基準」の議論がパブコメを前に
佳境に入りつつあった昨年12月、原子力規制委員長の定例会見で尋ねました。
なぜなら、気象庁は、東日本大震災の後、次のような発表を行っていました。
「国土地理院によると、この地震により生じた地殻変動によって、
牡鹿半島の電子基準点は水平方向に東南東へ約5.3m移動し、
垂直方向には約1.2m沈下した。」
「海上保安庁によると、震源のほぼ真上に位置する海底基準点は
東南東に約24m移動、約3m隆起した。」
以下の地図では、右下の矢印を50㎝換算として、
水平移動した距離感が描かれています。
半端じゃありません。
パブコメを目前に、聴いておかなければならないと思った質問のうち、
その一つは次のように尋ねました。
○記者 最後の質問です。すみません。
女川原発についてですが、1メートル程沈下したと聞いています。
そうしますと、活断層が大変議論になっていますけれども、
プレートの上に乗っているという観点から、
日本独自の新しい基準が必要ではないかと思いますが、
その点は御検討される予定はありますでしょうか。
○田中委員長 最初は何とおっしゃいましたか。
○記者 女川原発は3.11で1m程沈下したということです。
あの付近一体は数mの単位で地面が沈下しているわけですけれども、
そういった観点から、日本列島独自、プレートの上に乗っている列島としての
基準みたいなものが必要ではないかと思います。
○規制庁 地震・津波担当の管理官補佐をやっております、渡辺と申します。
よろしくお願いいたします。
今、御指摘のあった女川の地盤沈下、地殻変動などについては、
検討チームの中でも、地殻変動に対する考慮は、
基準の中に盛り込むべきではないかという議論がございます。
これは東日本大震災の知見を踏まえて、
原子力安全委員会で耐震指針の見直し案を作っていた時にも、
全く同じ議論がございまして、地殻変動を考慮したような評価をすべきということも、
指針の改定案の中には盛り込まれていまして、今回の検討チームによって、
また見直される新しい基準の中でも、
そういうことも考慮したような格好で検討されていくものだと考えております。
○記者 ありがとうございました。
すべてユーチューブで見たはずですが、
そんな議論があっただろうかと後日、議事録を見ると確かに意見は出ていました。
しかし、私が質問をしたその翌日です・・・。
藤原広行 独立行政法人防災科学技術研究所社会防災システム研究領域
の領域長が質問している。議事録62ページ。
「例えば3.11の地震以降、プレート境界の地震については、
すごく大きな地震もまだあるんじゃないのかとか、いろんなことも言われていると。
こういう中で、これまでの選定がそれでよかったのか、
あるいは今後どのように改良していけばいいのかというところなんですけども、
明確な根拠がない中での選定の作業というふうになる中で、それの妥当性について、
何らかの判断基準、そういったものを今後考えていかなきゃいけないんじゃないのか
というふうな気がしております。」
それから丸1カ月ちょっと。
おびただしい量と質のパブコメが一挙に行われることになりました。
日本列島を載せたプレートの話はどのように盛り込まれているのか、
1月30日の時点であった記者向けの説明会で聴いて、骨子案を読んでも分かりません。
時間切れだといって質問を遮られたためぶら下がりで、ここか?と聞くとそうらしい。
http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/shin_taishinkijyun/data/0008_02.pdf
そこでさらに尋ねました。以下は私の取材メモです。
「これは『設置許可基準』と書いてあるが、『設計基準』に読める。
『設置許可基準』なのか、『設計許可基準』なのか。」
「『設計許可基準』です」
「『設置許可基準』と言えば、普通の日本語では、そこに建ててよいかどうかであり
『設計許可基準』と言えば、その建物の基準です。
『設置許可基準』と書いてあるのに『設計許可基準』なのでは
私のような馬鹿にはわかりません」と自分を落とし、
「たとえば、プレートの境界にある浜岡原発は、
この基準ではどうなりますか」と食い下がると、クリアするのだと言う。
「え?プレートの境にあるのに、これでは浜岡原発は稼働できてしまう?」
「はい」
ここで書かれている「設計許可基準」をクリアすればそうなると言う。
個別事業のことは私は分からないがと言いながら、そう答える。
また、『設置許可基準』なのか『設計許可基準』という言葉の紛らわしさは
保安院時代に変えた以下の二つで使われている言葉がごっちゃに使われているから
それは整理されると言う。
・発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(改訂案)(平成 24 年 3 月 22 日)
・発電用原子炉施設の耐震安全性に関する安全審査の手引き(改訂案)平成 24 年 3月 22 日)
果たしてパブコメにかけられた骨子ではどうなっているか。
見るとこうなっている。
http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu130206/kossi_eq.pdf
(↑http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu130206.html)
2012年12月27日に田中委員長に記者会見で聞いて、
田中委員長が答えられずに、
「渡辺」という地震・津波担当の管理官補佐が答え、
2013年1月30日会見後のぶら下がりで事務方にかみついたところは
設置が設計へと言葉だけ変わったことになる。
日本列島をのせたプレートごと動くことへの基準が必要ではないかという質問に対し、
返ってきた答えは、浜岡原発オッケーの設計基準骨子案だった。
設計基準をクリアしたと言えば
どんなところに建っていてもオッケーな「安全基準」なのだ。
これが今、パブコメにかかっている。
記者が受けた説明会のようなことも、ぶら下がり取材もできないままに。
静岡県民のみなさん、どうしますか?
山梨県、神奈川県、愛知県のみなさん、どうしますか?
原発を地域に抱えた皆さん、どうしますか?
ちなみに田中委員長は会見で電力会社職員からの
パブコメもパブコメだと平然と答えていますから、
大量に組織パブコメが出ると思います。
3.11の日本列島を再掲します。
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