176.密室で決めた旧計画の呪縛を解く方法(5)
お前は人にダメだしばかりで、自分は何をやっているのだと
思っている人も中にはいるかもしれないので、
提言的なアウトプットをご紹介させていただきます。
詳しくは執筆参加した「ダムを造らない社会へ」(新泉社)の
「市民の意思をどう反映させるか-
米国の仕組みと日本の仕組み」を
ご覧いただきたいのですが、簡単に言うと、
グランドキャニオン保護法
1992年に米国で制定されたグランドキャニオン保護法の紹介です。
ダムができた後、利害関係者が「協議」をする場が法定され、、
その協議メンバー(立場)が法律で決まり、そのプロセスの透明性が
連邦諮問委員会法で確保されているという事例です。
ダムが出来たあとに環境影響評価を行い、基本的に年2回、
状況に応じて管理方法を協働で協議して決めます。
日本に例えれば、
環境省も農水省も国交省も環境NGOも住民団体も一般人も同等の立場で
協議メンバーとして法定されていて協議に参加できる仕組みです。
各自ミッションがはっきりしているから
「中立」のフリをする必要がありません。
学識者はあくまでもその外で
助言者、技術者としての役割を果たします。
これは今後の日本の河川管理のあり方のヒントになるのでは
ないでしょうか、ということをこの本では書きました。
日本の河川法
一方、日本ではどうか?
リアルタイムで行われている利根川の例がそうですが、
「協議」なんて夢のまた夢です。
30年間の河川整備計画を立てるのに、流域住民には
わかりにくい方法で原案が知らされ、
パブコメ(3月2日〆切り)と、
3日間(2013年2月24日(日)~26日(火))の公聴会で
意見を言うだけです。
一方で、有識者は専門性を持ったオールマイティの「中立」の建前で
参加させられます。
そのために行政計画の決定に対する大きな弊害が起きているように思います。
例にあげて申し訳ないですが、
前のコマで紹介した環境を専門とするある委員は、
河川工学が専門でもなく、かつ根拠も挙げずに、
目標流量は17000m3/sを「やむを得ない」と述べています。
聞いてみると、自分はよく分からないから名前を伏せてもらわなければ
答えられないというのです。
それでも、「17000m3/sでやむを得ない」という意見には
「自分はよく分からないから」という言葉は添えられておらず、
国土交通省の進めたい計画作りへと大きく左右します。
こんなことが起きるのは、この委員の責任ではありません。
有識者会議における「責任」と「ミッション」が一致していないからです。
一般論として環境保全を自分の使命(ミッション)と考えていたにしても
その使命に「責任」が伴っていないことが前提の会議なのです。
委員は21人もいますが、前回も11人しか参加していない。
それがそのことを物語っています。
名前だけ連ねて出席もしない、
意見は言うが、結果責任も説明責任も求められていないと考えている。
必ずしも委員個人が悪いのではなく、システムが形骸化している。
そういうことがようやく、勉強と取材を重ねて分かっていきます。
リアルタイムの取材をしながら勉強もするので、
この現実と、よりよい仕組みのギャップにイライラして、
なんで、日本はこうなのさ!と
つい、語気が荒くなるわけです。
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