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2013年1月29日 (火)

158.突然の利根川水系一部区間の河川整備計画公表

国土交通省関東地方整備局は、1月29日午後2:00に
八ッ場ダムの上位計画である「利根川水系河川整備計画」のうち、
突然、公表した。
 
この原案によれば、対象の計画期間は、概ね30年間
 
目標の流量は基準点である八斗島(やったじま)で17,000m3/s
ダムで調節して14,000m3/s程度を河道で流下させる計画だ。
 
そのために八ッ場ダムを建設するとされている。
 
一方で、利水事業としてこの計画に位置づけられる可能性のあった
南摩ダム事業と霞ヶ浦導水事業は、
「その扱いを検討し、その結果を踏まえて対応する」と先延ばしになった。
 
利根川水系河川整備計画の前提となる目標流量は
2012年9月から10月に開催された「利根川・江戸川有識者会議」において、
ねつ造や不適切な係数の設定に基づいていると指摘され
紛糾していたが3ヶ月もの間、中断されたまま、
今日、突然、その説明のつかない根拠に基づく
(後に旧建設省資料でも覆った)計画が公表されることとなった。
 
以下、問題点を整理しておく。
 
1.治水計画と事業内容が矛盾
 
17,000m3/s14,000m3/sの差3,000m3/Sをダムで貯めて調節する案だが、
八ッ場ダム(群馬県)の洪水調節流量は600m3/S程度と見られており、
計画と事業内容に大きな乖離がある。
Photo
 
 
2.使い続けている暫定水利権を考慮せず
 
水資源開発促進法に基づく
水資源開発基本計画に位置づけられた水資源開発施設」を表に記載している。
しかし、どの自治体がどれだけの水を必要としているのかは書かれていない。
水需要と供給を書き込むと水余りが顕著に分かるためか、書かれていないが
なんのためのダム事業なのかが分かるように書くべきである。
Photo_3
 
また、今まで使い続けてきた「暫定豊水水利権」はまったく考慮されていない。
 
「暫定豊水水利権」とは平たく表現すれば、
ダムができるまでの間、ダムができることを前提として
 川から取水できる水利権」のことだ。
 
皮肉にもダムがなくてもやりくりができたことを示している。
制度を柔軟運用するだけで(と言ってもこれまでやってきた通りで)
新たな投資をしなくても取水は可能である。
 
「暫定水利権」は不安定だという理由は説得力をもたないにも関わらず、
利水計画の全体像のうち「暫定水利権」しか書いていないのは異常である。
Photo_2
 
3.手続きの不公正性・不透明性
 
関東地方整備局では、学識者の意見を聴く手続(河川法16条の2)として
2012年9月に、4年ぶりに利根川・江戸川有識者会議で再開させた。
 
ところが、批判的な検証を行う委員からは、
目標流量」を巡って数々の論拠をもって反論・異論が噴出し、
10月16日を最後に再び、開催されなくなっていた。
 
また、有識者会議の委員に対しては、3ヶ月間で計9回に渡る日程調整が行われ、
開催予定が告げられては、そのすべてが理由もなくキャンセルされてきた。
 
さらに、会議の対象が利根川全体の一部である利根川・江戸川のみに限られ、
鬼怒川・小貝川、霞ヶ浦、中川・綾瀬川など支流を含めた
全体の検討は行われず、原案にも含まれていない
 
一方、同河川法16条の2に基づく関係住民の意見はどうか。
 
2007年時点では、個々の鬼怒川・小貝川、霞ヶ浦、中川・綾瀬川
の他、支流を含めた全体に対してもパブコメや公聴会が行われ、
多くの八ッ場ダム事業への反対意見が含まれていたが、
その意見は反映されないまま5年にわたって放置された。
 
2012年には先述の利根川・江戸川有識者会議に先駆けて、
一部の河川区域である「利根川・江戸川」の「目標流量」に限定して
再度パブコメが行われた。しかし、この時は、
「河道で14,000m3/s程度」との記載はない。
また、「20年~30年」が「30年」となった説明もない。
 
4.自然環境の保全と再生
 
些細だが、滑稽なことがある。今回公表された原案には
右肩に「2013/1/23Verに1/24意見・環境修正・見消し版【最終(公表)版】」
という文字が見えないように隠れている。
(と言うとそれが消えてしまう可能性もあるがお試しあれ)。
 
以上、1)治水計画と事業内容との矛盾、2)暫定水利権の整理統合のサボタージュ、3)手続きの不公正性、不透明性に加え、4)利根川における過去の河川開発による環境、社会、経済への事後評価や反省を踏まえておらず、それができない限りは何をもって「再生」かも分からない。次世代に渡す公共事業の根拠計画として不適格ではないか。
 
 
 
 

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