148.原災法施行令改正の落とし穴
原子力規制委員会が猛スピードで原発利用についてのさまざまなルール作りを行っている。それを同時多発で行っているために重要なことが見落とされつつある。目配りをすべき原子力規制委員会が、野放図に見落としている。
原子力災害対策特別措置法施行令の一部改正パブコメの落とし穴
そのひとつに、「原子力災害対策特別措置法施行令の一部改正」がある。
改正案がパブコメにかけられたが、
その期間は、2012年12月1日~12月30日だった。
総選挙で世の中が騒がしかった期間だ。
この政令案は、「原子力事業者防災業務計画」の協議が必要な施設として
原発と同様、「もんじゅ」や 「ふげん」を追加するというものだ。
しかし、その追加だけが改正内容であれば問題がある。
なぜなら、この政令は同時に「関係周辺都道府県」とは誰かを規定するものでもある。
現状では、その要件を「原子力事業所の 30kmの範囲内」としている。
原子力規制委員会が示した改正案では、この範囲を広げる「案」が提示されなかった。
しかし、福島第一原発事故に直面した多くの人が、
その被害が「30km」では収まらなかったことを体験した。
であるならば、「関係周辺都道府県」の要件であるこの距離を
実際の教訓に基づいて広げるべきであるという意見が出ても不思議はない。
パブコメによって、まさにドンピシャな意見が寄せられていた。
「災害対策地域が概ね 30km というのは危険に対する防災意識が低すぎる。
チェリノブイリの事故では 200km 離れていても、プルームで汚染されている」
「今回の変更で「周囲三十キロメートル」を周囲 50km あるいは 70km と変更すべきである。福島の事故をみてもその影響範囲は 30km を超えており、不適切である事が 明白である。」
ところが、2013年1月9日午前に開催された原子力規制委員会では、
原子力規制庁官僚から、今回の改正案は「もんじゅ」や 「ふげん」を追加するものであると
木で鼻をくくった回答があり、それに対して、
委員からは質問も反論も議論もなしでものの数分で終わった。
このままの“改正”案が15日に閣議決定されるのだという。
(閣議で福島の教訓をもとに異論を唱える閣僚が安倍内閣にいれば別だが。)
意見は3通しかなかったとの発表だ。しかし、本当か?
目を転じて、もう一つのルール作りに目を向けよう。
防災計画策定のための避難基準の検討
上記の政令改正とは別に、原子力規制委員会の原子力災害事前対策等に関する検討チーム が防災計画策定のための避難基準の検討も行っている。
この基準づくりには多くの異論が上がり、以下の署名活動が積極的に行われている。
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緊急防護準備区域(UPZ)30kmは狭すぎる!
これについては、ブログやツイッター、MLなどで幅広く「拡散」され、
署名の輪が広がっている。
さて、この緊急防護準備区域(UPZ)はなぜ30kmなのか?
もっと言えば、もし、原子力事業者防災業務計画についての協議を行う「関係周辺都道府県」の要件が、先述のパブコメで寄せられたように「70km」と改められたらどうか?話は違ってくるはずだ。
ルール作りは有機的なものであり、多元的なものである。多重に考えなければ機能しない。多重に考えることが必要であるからこそのパブコメ(みんなで改善するためのもの)である。
緊急防護準備区域(UPZ)30kmは狭すぎるとの署名活動が大々的に行われているすぐ脇で、それとも整合すべき、「関係周辺都道府県」の要件を広げるべきだとの意見が、たった3通だったと、何の議論もなく蹴飛ばされてよいものか?
「原子力事業者防災業務計画」の協議が必要な施設として「もんじゅ」や 「ふげん」を追加するという「改正案」に隠されて、「関係周辺都道府県」の要件を広げるべきという意見を、「今回の改正案には含まれていない」という説明になっていない説明を行ったのが、原子力規制庁だ。
「関係周辺都道府県とは誰か」を規定する重要な政令であり、その改正案に含まれていなかった(見落とされていた)からこそ、寄せられた意見であるにも関わらず、そして、そのように事務方(ともすれば原子力ムラ)の意図で(あるいは非意図的に)、見落とされていくことを、防がなければならないのが、原子力規制委員会の面々ではないか?
事務局のシナリオ通りに動く原子力規制委員会では、旧原子力安全委員会と大差はない。3.11前に逆戻りしつつある。
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