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2012年12月31日 (月)

145.地域にこそ未来がある。

「霞ヶ関」に会議を設けても何も変わらない。
「永田町」に人を送るだけでは何も変わらない。
「地域」にこそ知恵と未来がある。
「地域」で気づき合うことが、唯一とは言わないが
未来へと通じる必要不可欠な答えである。
 
2012年11月17日、ダム問題の老舗NGOである水源開発問題全国連絡会総会での地域レポートは圧巻だった。北は北海道から南は熊本まで、その要点をまとめてみた。ダムができてしまった地域からのレポートは、現在進行形の計画に関する報告に劣らずショッキングだった。
 
ダム建設後に問題が表出してきた当別ダム(北海道)
「当別ダムは10月に完成してしまったが、完成したあとに問題が山積してきた。ダム事業はダムができただけでは終わらない。そこから導水し、蛇口に水が運ばれるまでに導水路、浄水場などの新設にさらなる支出が必要となり、水道代に跳ね返る。利水は来年から石狩市、当別町、小樽市などに供給が始まるが、水道料金が石狩市で16.7%値上げ、当別町で当面10%、2019年からはさらに値上げする。
 
札幌市では13年後、2025年まで水は一滴も使用されないが50億円も支出する。その50億円を福祉や教育に回して欲しいと要望してきたが、『水が余っているからといって水道企業団から脱退するということはできない』と言う。このダムを強力に進めたのは北海道知事、札幌市長、その他の首長だ。新たな浄水場を作ろうとしているが止めたい。その札幌市は日量4万4千トンの水が必要になると言いながら、一方で14万トンの水が余るという計算を出し、豊平川という別の支流に水をバイパスさせる「水道水源水質保全事業」という新たな目的を出してきた。これに187億円の支出が新たに追加されるが、このバイパス事業と浄水場の事業を止めたい」
(当別ダム周辺の環境を考える市民連絡会 安藤加代子さん)
 
Photo左から安藤さん、佐々木さん、市野さん
 
厚幌ダムを巡る質問経緯を見ると学識経験者は自由に物が言えない人たち(北海道)
北海道の場合、焦点となっている地域の人が動けない場合がある。
厚幌ダムについては「厚幌ダム建設事業地域代表者会議」代表の大学名誉教授に公開質問状を出したが、回答は北海道(行政)から来た。検証主体は北海道であり、「厚幌ダム建設事業地域代表者会議」には専門的な知見や科学的論拠に基づくご意見を伺っただけで「厚幌ダム建設事業地域代表者会における学識経験者の役割についての質問状」には回答できないという。しかし、私たちが質問を出したのは、まさに具体的な問題について「科学的根拠に基づいて回答」してもらいたいという意図だった。この経緯を見ると学識経験者は自由に物が言えない人たちである。
 
サンルダムについては国交省の治水のあり方有識者会議が10月にダム継続を承認。私たちはパブコメで、「ダム推進の先頭に立っている下川町は、ダムの治水効果がなく、地域振興のためにダム事業を要望しているが、問題である」と指摘しても無回答だったことを書いたら、北海道開発局が「きちんと答えた」と回答がきたので証拠を示して闘いを継続する。
 
沙流川の平取ダムで最大の問題であるアイヌ文化については、アイヌの方々が調査に駆り出される。「記憶による保全」と称して文書に残すというやり方をとる。しかし、たとえば平取ダムの予定地にある祈りの場「チノミシリ」はそれぞれの場所それぞれの人のやり方による祈りがあるものだ。同じ沙流川で1997年に完成した二風谷ダムの堆砂は16年間ですでに貯水容量の45%に達している。
(北海道自然保護協会 佐々木克之さん)
 
検証の場で治水効果を過大に評価した成瀬ダム(秋田県)
Photo_2 成瀬ダムはもともとの灌漑事業に治水目的をつけた事業。横手盆地の土地改良区で皆瀬ダムから水を供給しているが、渇水時に貯まらないという理屈で成瀬ダムが進んでいる。しかし、負担金を払うべき農家の負担を秋田県が肩代わりしている。違法であると裁判でも訴えている。
 
検討の場では成瀬ダムが一番安いとした。しかし、成瀬ダムの集水面積は1.4%に過ぎない。ところが、最大4.7%の治水効果があると過大に評価した。しかしそれは過去の洪水のうちたった一回のことで、その他の洪水では零点なんパーセントに過ぎない。
検討の場は第1回から4回まで行われており、第4回で代替案との比較評価で成瀬ダム最も有利と出た。年内中に5回目をやって最終としたいというのが見えている。住民から意見を聞くということで公聴会が行われ、「成瀬ダムをストップさせる会」から4人が反対の意見を出した。多少は賛成意見が出るのかと思えば、意見を言った9名全員が反対意見だった。
(成瀬ダム/成瀬ダムをストップさせる会 奥州光吉さん)
 
 
最上小国川ダムでは漁協が反対するも起工式(山形県)
Photo_3 山形県では先に月山ダムが完成し、地下水から水道に切り替わったが住民へのアンケートで75%がまずいと回答。水道料金は倍になった。
 
最上小国川ダムは赤倉温泉流域に計画され、事業費は今80億円だがもっと増大すると思う。東北でアユ釣り師にとって大切な川。釣り客の経済効果は22億円と計算されている。赤倉温泉は川に旅館が川にはみ出して立っている。そこでは旅館が湯量を確保するために県が作った堰があり、そこに土砂がたまりこれが洪水を引き起こしている。漁協組合員9人が反対しているが、10月29日に起工式が行われ、反対住民が抗議行動を行った。11月27日には住民訴訟が始まる。県が作った堰が問題を起こしていることを訴え続けて阻止していきたい。
(最上小国川の清流を守る会 草島進一さん)
 
 
初めてダム慎重派が入った利根川・江戸川有識者会議は開催を日延べ中(群馬県~茨城県)
Photo_5 昨年秋に八ッ場ダムが妥当という国交省の結論が出された。民主党も我々も抗議した。藤村官房長官が本体工事の条件を3つ付けた。生活再建法案の上程、利根川水系河川整備計画を策定し目標流量を策定すること、それらを踏まえての検討。これに対し市民側は2006年に作った利根川流域市民委員会を再開した。4年間の空白の間に目標流量がかさあげされていたため、批判を展開した。一方、国交省は2008年から中断していた有識者会議を再開した。新たな会議が開かれるのかと思いきや、第4回からの再開、しかもその一部である利根川・江戸川有識者会議のみの開催。抗議と意見書を連発してきたが、有識者会議にダムに懐疑的な委員を入れようと動き、大熊孝、関良基委員が入った。現在、その開催が日延べされている状態である。
(八ッ場ダムををストップさせる茨城の会 神原禮二さん)
 
導水により逆効果 藻の発生が懸念がされる霞ヶ浦導水事業(茨城県)
霞ヶ浦導水事業には那珂川漁協が抵抗している。どう考えても利水については説得力がない。現在は那珂川川から霞ヶ関に水を導して霞ヶ浦を浄化する事業に絞られている。しかし、那珂川や利根川のチッソ量が霞ヶ浦より少ないわけではない。むしろ導水によって藻が発生することが指摘されている。漁協が反対しているために、保守系も動けない。一方で放射能問題が起きている。霞ヶ浦へは栃木県の那須や茨城から流れ出してきている。今、霞ヶ浦の問題は固まっている。有識者会議を開いていない。茨城県が取水することになっている栃木県の思川開発も説得力のない状況になっているから二つを止めていきたい。
(霞ヶ浦導水事業を考える県民会議 浜田信さん)
 
ラムサール条約に登録 しかし、原発事故の放射能汚染で葦焼き(よしやき)が困難になった渡瀬遊水池(栃木県)
Photo_6 運動を始めて22年になるが今年ラムサール条約登録湿地に登録された。そこに至るまでに代表世話人の高松健比古から「水源連の励ましがあった、よろしく」というメッセージがあった。渡瀬遊水池総合開発事業は12年間かけて中止にさせた。水質調査などして国交省と交渉を重ねた。8年間かけて2010年に「渡瀬遊水池湿地保全・再生基本計画」が策定された。国交省も積極的に動き、治水増強もかねているとして湿地掘削をするということで、試験掘削が始まっているが、湿地再生はたいへんな仕事であるということを感じている。そこに原発事故の放射能汚染が起きた。例年、葦焼き(よしやき)をしていたが、この2年やっていない。燃やした灰の中に放射能が濃縮されるということで心配している。失った自然を人の手で取り返そうという大実験だ。慎重に行うしかない。
(渡瀬遊水池を守る利根川流域住民協議会 猿山弘子さん)
 
 水平・縦・斜めにひび割れ40箇所 貯水を止めるべき太田川ダム(静岡県)
Photo_7 平成20年から湛水が始まり、21年から運用がされたが、貯水をやめさせる運動を起こしている。ひび割れが40箇所、水平クラック、縦クラック、斜めクラックがあり、ダムの堤体が貯水湖側に傾いている。今年の8月末までに9.9mmに及んでいる。水を貯めると下流側に傾くものだが、その逆で、珍奇な現象である。県は湛水中に他の23基のダムのデータをもとに、変位5mmを注意水準10mmを警戒水準と決めていた。この事実に基づいて3月12日に太田川ダムの貯水をやめるよう県に申し入れたが、県は無視をしている。
23基のデータについて情報開示請求をしたところ、開示しないと言ってきたので、異議申し立てを行っており、11月26日に静岡県の情報公開審議会で取り上げられることになった。正常な流水の維持機能というが、この間、大量の植物プランクトンが発生し、茶褐色になっている。これに対しても、緊急申し入れをやった。コメのとぎ汁のような貯めた水が流れてくる。
(太田川水未来、ネットワーク「安全な水を子供たちに」 岡本尚さん)
 
利水容量7300万m3のうち6000万m3が流水の正常な機能の維持の設楽ダム(愛知県)
愛知県が設楽ダムの中身を県民に知ってもらう公開講座を行っている。今度の土曜日23日に第3回目の公開講座がある。今回は、豊川水系の三河湾への影響問題について開かれる。主催が愛知県であり、以前の状況とは変化がある。しかし、事業部署では推進の方針を崩していないので、愛知県に対する公金差し止め訴訟は続けている。訴訟をやる中で分かってきたが、流水の機能維持がダムの大半の容量を占めているが、ダムの大きさが最初から決まっていて逆算しているので、(必要性の)事実を踏まえていないものである。この間、力をいれて明らかにしてきた。
フルプラン改訂後5年が経過したので、中間検証が国で開かれ、審議会の座長宛に意見書を出した。各委員に配布してくれとお願いをして、座長は引き受けた。しかし、3月に開かれて以降、音沙汰なしになっている。フルプランそのものの前提が間違っていることについて意見書を出している。事業者が行っている検証作業では、堤防強化の代替案を除外してしまった。
(設楽ダムの建設中止を求める会 市野和夫さん)
 
氾濫しない別当川 山津波被害にすり替えられてできた内海ダム(香川県)
 皆さんのダム予定地には川があるでしょう。ここは、川がないんです。寒霞渓という山です。1957年に大きな水害が四国ではあった。六十何名かがなくなったが、地質が脆弱なために山津波での被害だった。別当川は氾濫しない。溝みたいな川ですから。それをすり替えたんです。県も国もそういう作文でダムを進めた。県もそのことを認めたのに、前原大臣は予算をつけた。どこから見てもとんでもないダム。鳩山首相も現地へ来て、絶対中止しますと。衆議院選挙のときに、前原も中止をするという約束をした。
(寒霞渓の自然を守る連合会 山西克明さん代理)
 
苫田ダムを作ったから海苔が黒くなると逆宣伝する国土交通省 (岡山県)
 苫田ダムの完成以来、川の水質汚染で、牡蠣やノリなど海産物への影響が出ている。水道料金も3割の値上げが2回あった。問題だらけだ。ノリが白っぽくなり黒くならないことを国交省はこれを逆に利用していて、ダムを放流するとノリが簡単に黒くなる。富栄養化しているからだ。これを利用して、ダムを作ったおかげでノリに色が付くと宣伝をしている。
(岡山県からの参加者)
 
私たち(石木ダム予定地住民)は絶対反対(長崎県)
石木ダムについては有識者会議を経て国交省の結論に付帯意見がついた。長崎県に対して、「事業に関して様々な意見があることに鑑み、地域の方々の理解が得られるよう努力することを希望する」というものだが、「希望します」と言ってもどこまでが希望か分からない。そこで長崎県に、地権者の地元の理解を得るためにどうするのかと回答期限付きで問うたが、来ないので国に問い合わせたら10日間遅れて解答書が来たが話しにならない。県知事宛に再質問をして、持っていこうと考えていたところが、県の方は話し合うことはないと断ってきた。知事宛で出しているのに、回答は県官僚から来る。おかしいじゃないか、河川課長名やダム事務所名でくるが、知事からの直接の返事はない。知事は見ているのかというと、報告はしているという。県が話し合うつもりがないので、私たちも話し合うつもりはない。2009年に出した土地収用法に基づく事業認定申請についても、国土交通省九州地方整備局(認定庁)に対し、「県は私たちの理解を得られるような努力はしていないですよ」と直接伝え、「私たちは絶対反対だから、強制収用となりますよ、私たちは住んで生活をしている。私たちを水の底に沈めるんですか」と訴えています。公聴会を行うということだがいつになるか分かっていない。2009年に県が道路の付替工事を行おうとしたとき、私たちの強い力で中止させた。今後も続けていく。
(石木ダム水没予定地住民 岩下和雄さん)
 
路木ダムの推進理由には一つも本当のことがない(熊本県)
Photo_8 路木ダムの推進理由には一つも本当のことがない。第一に右岸より左岸の方が2メートル低い。右岸から水が破堤して路木部落を襲うことはないのに、100軒浸かることになっている。第二に、熊本県知事は集落の人が汚れた沢の水を飲んでいるといってある濁り水の放水写真を示してテレビに出た。しかし、写真の濁り水はある家の井戸水の除鉄槽の沈殿汚水であり、その水を使っている家は1軒もない。そう指摘されたらインタビューを受けないとケツをまくった。
 
熊本市内に流れ込む白川に計画されている九州地方整備局の立野ダム計画は穴あきダムだが、上流には阿蘇山がある。洪水時には岩石や土砂、火山灰が流れてきて、その「穴」は埋まってしまうだろう。
 
ダム中止後の生活再建法案が提出されたが、民主党のご乱心で急遽、解散となって、廃案になってしまった。川辺川ダムは自民党が政権を取るとダムの基本計画が残っているから生き返ることがありはしないだろうかと考える。立野ダム計画は穴あきダムだが、どれだけバカげたものか見に来てください。ダムを作って良かったというところがあれば見に行きたい。
(子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会 中島康さんたち熊本県からの参加者)
 
@@@@@
 
「景気対策」としてのダム建設へ警告すべきこと
以上が各地からの報告である。
 
それから1ヶ月以上が経ち、選挙が終わり、以前にもまして、近視眼的に叫ばれる「景気対策」の声が目立ち始めている。公共事業への財政支出が「景気対策」と呼ばれ、雇用と仕事を確保するとして歓迎される傾向は「旧」・「新」・「再旧」政権下でさほど変わっていないのではないか。「地域格差の解消」という名でのバラマキも同様である。
 
声の大きな財界における票田と相まって、改革を叫ぶ政党ですら、地方に行けば公共事業を推進する「上半身と下半身の違い」の原因となってきた。民主党が改革に踏み切れなかった背景の一つもここにある。
 
こうしたいわゆるハコモノ事業の推進には地方自治体での「起債」(つまり借金)も可能だが、その理屈は、将来世代もそのハコモノを使うから「応分の負担」をしてもらうという考えだ。しかし、人口減少が進むと「応分」にならず、不公平な負担となってしまう。このことを顧みずに目先の「景気対策」や「地域格差の解消」として公共事業を「是」「必要悪」として推進する。
 
しかし、本当に必要なのは、未来世代が「応分」に負担できるための事業である。たとえば作りすぎて将来的に維持管理ができない「ハコモノ」を壊しておくことも、現在の雇用と仕事を確保しながら、将来世代の負担を減らす、「応分の負担」につながる。時に自然再生にもつながる可能性もある。地域の知恵に耳を傾ければ、地域に合った知恵が集まり、それは霞ヶ関で一方に決められる政策決定やそのプロセスで出てくるムダを大いに省き、国全体の行革にもつながるはずである。
 
ダム建設による山、川、海への副作用は社会的に認知されている以上に大きい。「美しい日本を取り戻す」と言う人物が首相になったが、鮭の遡上で潤う森、海で卵を生んで川へ戻ってくる鰻など、経済では取り戻すことが困難な美しさや豊かさとは何か、地域での知恵と理解を取り戻して、その知恵と理解で政策決定者を変えていく年に来年がなればいいと願う。
 
 

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