121.増税で公共事業バラマキを許さない集会(後半2)
2012年11月16日、公共事業問題に取り組む113の団体が参加して開催された、「公共事業徹底見直しを実現する集会」の後半その2(最終)である。各公共事業分野別の報告のあと、個々の事業に取り組む人々からこれまた分刻みの報告が続いた。(赤字は訂正箇所)
○泡瀬干潟埋立/小橋川共男さん(泡瀬干潟を守る連絡会)
今年度、事業が進んでいる。国が今、埋め立てをやっている。東埠頭のしゅんせつ土砂をいれる土砂処分場です。必要性も緊急性もない。沖縄市の要望にそった形で埋め立てをしている。2010年の裁判で経済合理性がないという判決を受けた。面積は半分になったが事業費は変わらない。市が立てた計画がうまくいったとしても2億3億の赤字が出る事業。国がムダな税金を使い、沖縄の資源環境を破壊する最たるものだ。
○辺野古埋立事業/安部真理子さん(日本自然保護協会)
今進められているのは日米合意に基づくV字型の案。環境影響評価の補正評価書を作っているところ。有識者研究会が助言をしたが、とんでもない助言だということが明らかになってきた。オスプレイ配備は評価書まで書いてなかった。埋め立て土砂についても書かれておらず、今も分からない。有識者会議は、本土のダムのしゅんせつ土砂を埋めればいいじゃないかというが、どういうつもりなのか!評価書ではジュゴンやウミガメを保存できる保全措置が示されていない。今後の補正評価書で公告・縦覧が行われる。
○成瀬ダム/奥州光吉さん(成瀬ダムをストップさせる会)
1530億円の巨費を使っているが、295億円しか使っていない。検証を一昨年から始まり、第4回検討の場まできたが、コストをメインに検証して成瀬ダムが有利としている。一番腹立たしい目的は「流水の機能維持」。ダムで水を貯めておいて、貯めた水を流すことで580億円の効果を代替案で実現すると専用ダム建設で690億円かかるという論理だ(怒)。
○最上小国川ダム/草島進一さん(最上小国川の清流を守る会)
最上川の支流でアユで有名な川。年間3万人が来て温泉に泊まり、22億円の経済効果がある。漁協は反対を続けている。9月に住民訴訟を開始し、12月27日に公判がある。たった40軒の旅館や家屋を対象にした治水ダムだが、旅館街は川にせり出している。浸水被害と言ってきたのは内水被害(川からの洪水ではなく、川に排水ができなった被害)。赤倉温泉の中に県が作った堰があり、土砂が貯まっている。県が原因を作り出している!訴訟の中で明らかにしていきたい。
○思川開発事業(南摩ダム)/高橋比呂志さん(思川開発事業を考える流域の会)
南摩ダムは鹿沼市に建設が計画される多目的ダム。水資源機構の事業。科学的な根拠がないとして裁判をしている。八ツ場ダム、湯西川ダムと合わせ3つの訴訟で利水と治水の争点がある。南摩ダムは県南の市と町が参加しているが、計画が存在せず、水道事業の認可を得ていない。ところが栃木県は2分の1の補助金を受けていると判明した。八ツ場ダムでは、足利市などが治水上、利益を受けると10億4千万円の治水負担金を負担しているが、利根川に接してもいない。公開質問状を出したところ、足利市長は貝となって答えない。答えない理由すら答えない。鹿沼市長は南摩ダムの水は買うが使わないと堂々とムダ使い宣言をした!
○八ツ場ダム/渡辺洋子さん(八ッ場あしたの会)
1都5県の議員の会、あしたの会、市民連絡会など3つの会が連携をして進めている。昨年12月、前・前田国土交通大臣が小渕優子の後援会に長野原町で万歳三唱で迎えられ、再開を表明した。しかし川内博史さんが会長、初鹿明博さんが事務局長の議連の監視のもと、八ッ場ダムは本体着工されずに来た。ダム推進派は民主党が八ツ場ダムを政争の具にしていると批判しているが、自民党こそがこの三年間、政争の具にしていた。川原湯温泉駅に降りると4本目の橋ができているが、計画から60年、吾妻渓谷にコンクリートは打ち込まれていない。この地域には、文化遺産が濃密に分布していることが分かった。ダムに代わる代替案として、国の史蹟として保全する遺跡パークを提案していきたい。
○設楽ダム建設事業/市野和夫さん(設楽ダムの建設中止を求める会)
愛知県の一番東の豊川のダムは、「流水の正常な機能維持」が6割のムダなダム。住民訴訟を初めて6年になる。一審は行政裁量を認めた。二審では打破して、勝利判決を勝ち取りたい。12月20日に結審し、3月には判決が出るかと思う。裁判で勝つことを目標にしているが、その他にやれることで地元地権者の協力を得て、立木トラストで頑張っている。
○ 内海ダム再開発/ 藤田恵さん 寒霞渓の自然を守る連合会を代弁
何故反対するか。県は水が足らないというがウソ。平成9年に構想がでたが、平成9年は小豆島で一番大きなダムができ、貯水量は161から390万トンと2.5倍に増えた。四国の早明浦ダムが貯水率が0になったときも70%を越えていた。水は有り余っている。昭和49年と50年の水害で被害がでた。洪水対策で必要だといったが、土砂が家屋を潰しての犠牲であり、川の氾濫では亡くなっていない。強制収用を前提とした事業認定取り消し訴訟で、原告側の証人尋問が年内にあるはずだったが、来年の連休明けにすると言ってきた。
○石木ダム/岩下和雄さん(石木ダム建設絶対反対同盟)
県営の小さなダムだが、13世帯が生活をしている。もう40年になるが計画を変えず、必要性を訴えているが治水も利水もムダなダムだと分かってる。ダム検証で国も継続を決めたが、地域の理解を得るよう付帯意見がついている。県は話し合いをしたいと言っているが、土地の交渉の問題だと言う。それなら、事業認定の申請を取り下げてから話し合いをすべきである。市議会は早く事業認定をせよと言い、このままでは私たちは話し合いはできない。事業認定が認可されると、土地収用法によって家屋敷が取られる。長崎県内外から支援を受けている。
○川辺川ダム/中島康さん(子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る熊本県民の会)
コンクリートから人へと言っていた政権が、人から大きくコンクリートになって消滅した。ダム中止生活再建特措法に期待をかけていた。今までダムを作ればカネになる。これはダムを作らなくてもカネになる法律だった。解散で廃案になったが、もう一度、閣議決定させたい。路木ダムはウソで固められたダム。知事がウソの片棒を担いでいるが、地域住民の無関心が反対運動を阻み、半分、できあがっている。
○サンルダム・平取ダム・厚幌ダム/佐々木克之さん(北海道自然保護協会)
サンルダムは国交省の検証が終わり、平取ダムは地勢局の検証が終わって作ることになった。地元は地域振興のためにサンルダムを作るという。平取ダムはアイヌの聖地に作るが、調査費で雇われてしまい、反対ができない。サンルダム予定地の下川町でもダムのダも言えない状況が作られている。ちゃんとした議論ができないのが最大の問題。決まったけど絶対に作らせないという気概でいく。
○当別ダム/安藤加代子さん(当別ダム周辺の環境を考える市民連絡会)
計画から42年という時をへて完成し、まったくムダなダムが増えた。札幌と石狩と当別の市民が集まり、水道水に関心を寄せてきた。札幌にはすでにダムが3つあり、30%以上の水が余っている。当別ダムも完成したが13年後の2025年までは水は使わない!ところが一滴も水を使わないのに、来年から125億円のうち50億円を札幌市が払う。維持管理費も払う。ダムが完成しても水道料金の値上げはないと言ってきたが、石狩市も当別も値上げする。利水の理由を失った代わりに推進される「豊平川水道水源水質保全事業」もムダ!
○ 東京外かく環状道路/大塚康高さん(外環ネット)
埼玉、千葉、練馬、世田谷、武蔵野など7市等の住民で外環ネットを構成している。全国で交通センサスという調査をやった。東京を含む周辺はすでに交通需要が落ちている。2回連続落ちている。なかでも外環に沿う国道8号線は2割も減っている。その2割をさばくための計画が外環だったはずだった!9月5日に着工式があった。立ち退きを防ぐために地下を通すというが地下に入る道路を三鷹から造るという問題に取り組んでいる。
以上が取材メモ。 関係URLはこちら→http://suigenren.jp/news/2012/11/21/3297/
【まとめ】共通した問題は、1)高度成長期に計画されたが必要性や経済合理性を失い、単なる金食いムシとなった事業であるにも関わらず、2)選挙で選ばれた政治<国と地方の議会>が政策転換をさせられず、3)それどころか辻褄を合わせるために行政機構がつくウソがまかり通ったまま、4)議会はそれを是正させる能力も持っていない。そして5)ほとんどの場合、司法による行政チェック機能も働かない。5)ひたすら官僚機構が前任者の進めた事業を踏襲して、歪みきった社会を維持しようとしている、ということに尽きる。
その解決に向かって動いている人々の分刻みの報告を聴いていて共通しているのは、それぞれの人々は次に何をやるべきかが見えていることだ。その声が「コンクリートから人へ」というスローガンに凝縮されたはずだったが、官僚に囲まれその声が聞こえなくなっていったのが民主党政権だったということになる。そして自民党政権ではハナからその声に耳を傾けることすらしなかったから倒れたのであり、未だにそこ声は届いてはいないのである。
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手前ミソだが、「水資源開発促進法 立法と公共事業」は、「ハコモノ事業推進スキーム」とも言える数々の法律はその使命をとうに終えていることを、その一つの例として描いた本である。その根拠法を廃止しないことには、この法律に連なる政官業学の官民のピラミッド組織は壊れないことを描いてみた。
「公共事業に知識のない人でも2時間あれば読める。面白く、そしてムカツク」と、これを読んだ友人からは感想が寄せられてきた。是非、面白くムカツイて欲しい。一つの時代はとうに終わり、そしてそれを終わらせたくないと考えている構造とはどのようなものかを読みとって欲しい。
そしてそれを壊すには、遠回りのように見えても、実はその根拠法を廃止し、部署(ムラ)を丸ごと閉じて、そのムラに閉じこめられているまだ若い才能ある人たちを開放し、本当に必要とされる次の時代へと送り込むことが必要なのだということに目を向けて欲しい。
衆議院が解散された2012年11月16日は長い1日だったが、すべての毎日がそうであるように未来に続く一日だったと後で振り返ることができるようにしたい。
2012年11月16日の目次:午後1(国交省前)、午後2(集会に訪れた議員達)、午後3(集会に集った弁護士達)、午後4(集会を企画した主催者達)、そしてこのコマ、そして夕方(官邸前)。
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