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2012年11月11日 (日)

110.利根川・江戸川有識者会議(27)ブラックボックスのまとめ

おさらいです。
第7回利根川・江戸川有識者会議(平成24年10月16日)で、
関良基委員が述べた意見をまとめると次のようなものでした。

2011年6月8日に日本学術会議に提出された谷誠委員と窪田順平委員の資料に基づけば、
八ツ場ダムが建設される吾妻川流域(第四紀火山岩)は、
降った雨の32%しか川に流れ出て来ず、残り7割は地下に浸透する。
しかし、国交省は40%ぐらいが川に出てくるという計算をする。

Photo

同じく谷・窪田委員の資料に基づけば花崗岩類の地域では
約68%が川に流出する。しかし、国交省は100%として計算している。

Photo_2

出典http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/doboku/giji-kihontakamizu.html
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/doboku/takamizu/pdf/haifusiryou09-2.pdf 

定数を意図的に操作すれば、流量は過大に計算される。
裁判所ではすでに論じられたブラックボックスが
ようやく国土交通省が設置した会議においても語られ始めたのだ。

逆に言えば、今までは、国交省が導きたい結論に反する学者は
招かれざる客として、人選からはずれていたことを物語る。

5.虫明功臣委員の反論

この説明に対し、「御用ができる学者でいたい」と以前、私に語り、長年、
「御用」を務めている虫明功臣・東京大学名誉教授の意見は次のようなものだった。

「関委員は第四紀と第三紀は一時代しか離れていないから
同じようなもんだという発言があったが全く違う。
第三紀層は海の中で堆積して陸化したものですから
噴火した火山とはまったく違う

花崗岩と第三紀を一緒にするのはいいが、
第三紀と花崗岩は1になっても不思議はない。流域の土壌は飽和に近い。
ただ第四紀の火山岩類というのはいつまでもいつまでも浸透する」

・・・書いていて気が付いたが、そうだとしたら、1ではなく「0.68」という数字を出している
2011年6月8日に日本学術会議に提出された谷誠委員と窪田順平委員の
資料に異論を唱えていることとなる

関委員の言っていることを否定しようとして、
日本学術会議のデータを、根拠をあげずに覆そうとしたことになる。

Photo_3

国交省の結論と合わない都合の悪いデータにスポットがあたった瞬間
論拠なくそのデータを否定するというのは、東大の風土とも思えないが・・・。

虫明委員は、続けて加えて、違う観点から次のような意見も述べました。

「(目標流量については)どういう安全度を考えてという議論をすべき。
日本のように沖積地、氾濫源に住み、治水安全度は相対的に低いと思う。
施設整備を進めることと、それでできないことはソフト対策をやる。
後者について議論は始まっています。
大規模水害に関する検討会を三年以上やりましたけれども、
実際に氾濫したときにどう対応するかという議論は進んでいて、
ここは、ただ、この議論の場じゃない
我々は、河川法で決められている河川整備計画を議論する。」

(これについては後述したい)

6.虫明功臣委員の反論への関委員の反論

さて、虫明委員の意見(前半)に対する関委員の意見は、以下のようなものだった。

第三紀層、第四紀層は全然違う」という虫明先生の指摘がありました。
「違う」んです。第三紀は「0.4」じゃなくて、「0.7」だという違いがありまして、
まったく違う。0.4ではないですが、1にはならない。
花崗岩もそうだと思います。実際のデータでそうなっております。
しかし、国交省はかならず1.0と決めている。
先入観を排して決めれば1.0にならないと思います。」

虫明委員からの再反論なし。勝負はついた。
データを否定する根拠を虫明委員は持っていないのである。

【ブラックボックスについてのまとめ】

さて、まとめてみると、小池委員は
 ○森林の保水力は上がったと当然認める。
 ○しかし、その分、都市化や河道の変化で相殺された。
 ○従って、森林の保水力の変化が検出できなかった。
と述べた。しかし、小池委員はこの「主張」を裏付ける根拠を、
虫明委員がそうだったように、何も示していない。

日本学術会議に提出された回答でも、同様に、なんの論拠もなく突然、
言葉でそう「主張」されているだけで、実際にあるのは以下のデータである。

10

出典:関良基委員提出資料(p.8)

このデータは、国交省ですら、新しいモデルを構築する際に
昭和33年から平成19年に到る10洪水では
年々増加する飽和雨量を用いなければ、
その再現計算ができないという事実を示している。ここでも勝負があった。

・飽和雨量による川への流出量への変化(関委員と小池委員)、
・地質の違いによる川への流出量の変化(関委員と虫明委員)

この双方が国土交通省が明かさない「ブラックボックス」として機能し、
ダムの必要性の根拠となる数字の操作が可能だったことが明らかになっただけではない。
そのカラクリが明らかになってしまった後でも
平然とそのカラクリを否定する主張を述べて、
事実とは合わない結論(日本学術会議の回答)を支持しているのが
小池委員と虫明委員である。

宮村忠委員は、こうしたまとめを一切行わずに
「ではこれで」と国土交通省の事務局に司会を渡した。

おさえていくべき共通認識をおさえずに、なぜ、官僚に丸投げができるのだろうか。
こうしてダム事業のいい加減さは放置され、
できた途端に無駄と分かるダムが建設され続けてきた。

ここ↓から始まったブラックボックスの話はここで一端終わりです。
1. 地質の差で、山に降って川に流れてくる量が違うこと
http://seisaku-essay.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-2141.html
(明かされ始めたブラックボックスⅠ)
2. 飽和雨量によって、山に降って川に流れてくる量が違うこと
http://seisaku-essay.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-5bfb.html
(明かされ始めたブラックボックスⅡ)
3. 小池委員の反論
http://seisaku-essay.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-0d8b.html
(明かされ始めブラックボックスⅢ)
4. 小池委員の反論への関委員の反論
http://seisaku-essay.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-0957.html
(明かされたブラックボックスへの反撃)
5.虫明委員の反論(このコマ)
6.虫明委員の反論への関委員への反論(このコマ)

議論の端々で明らかになったその他の問題についても記録していきたいと思います。

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