108.大飯原発の活断層を巡る学者の議論を見て
今日11月7日(水)は午後、
原子力規制委員会の「大飯発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合」
http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/ooi_hasaitai/
第二回会合が開かれる。
大飯原発敷地内に活断層が走っているのではないかと
警鐘を鳴らしてきた渡辺満久教授(東洋大学・変動地形学)の議論は
見ておきたいと思い、11月4日の第一回評価会合を動画で見た。
他のメンバーの素性は分からずに見始めたが、
岡田篤正立命館大学教授が動画1:56:30~で
http://www.youtube.com/watch?v=D3lSO4r2fK8&feature=plcp
「地形が分かる人が見たら、馬蹄形にへこんでいますよね」と言った瞬間
変だと思った。八ツ場ダムの水没予定地が地すべり地形だらけであり、
「馬蹄形」は見慣れているが、岡田氏はそうとは言えないところを指している。
変だと思ったのはそれだけではなかった。
問題となっている地層を論じる時も、
活断層だと即断するのは危険だといって周辺図を論じる時も、双方とも
岡田教授は自分の資料で根拠をあげて語るのではなく、
渡辺教授の作った分かりやすい資料で、その持論を展開した。
地すべりを主張するなら、自らの資料に十二分にそう書けばよいところ、
自らの資料では“すべり”と曖昧な表現でしか書いていない。
http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/ooi_hasaitai/data/0002_11.pdf
しかも、「見たことがないトレンチ。異様だ」とも述べた。
「見たことがない」なら判断ができないはずが・・・・。
一方で、活断層であると主張した渡辺教授の資料には活断層であることが明言されている。
http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/ooi_hasaitai/data/0002_14.pdf
そして、渡辺教授は、岡田教授に対して
「岡田先生は大断層、大破砕帯を調査してきている」、F6はそうではないと指摘。
これに対し岡田教授は、小さな断層も見てきたとは言うのだが、
今回のような断層は「見たことがないトレンチ。異様だ」と言ったのだから説得力がない。
市民団体情報を見ると、岡田教授は元原子力委員会委員だったとある。
残念ながら、なるほどと合点がいってしまった。
もう一方で、地すべり説が否定できないことを繰り返す岡田教授を
勇み足で唯一擁護した重松紀生・産業技術総合研究所主任研究員は
渡辺教授から「海から陸に向かって乗り上げるような地すべりはありえない」と言い返されて、
「あ、そうですね」と引き下がった。
そして、この有識者会合を率いる肝心の原子力規制委員会の
島﨑邦彦・原子力規制委員会委員長代理は
「横ズレは全然みてなかったんですが
東の端にある横ズレが、本当にそうであれば重要なもの。
私は見落としていたので、コメントのしようがない」とコメント。
この重い責任を持つ委員長代理は、見るべき所がどこかが分かっていなかったか、
調査受け入れ側(案内役)がしっかり問題箇所を見せなかったことになる。
残る廣内大助・信州大学教育学部准教授も
「僕も正直そっちの時間が少なかったものですから
現段階ではもう少しじっくりその部分を調べて欲しいと申し上げたが
写真を見る限りにおいては活断層、動いていてもおかしくはないんじゃないか。
解釈図を見る限りで矛盾はない」と発言。
岡田教授は形勢が悪くなったのを感じてか、
自分が地すべりの専門ではないことを述べた上、
「ここが分からない。判断できない。地すべり学会から専門家を入れて、
こういったことが起こるのか起こらないのか判断すべきだ」と言い始めた。
廣内大助・信州大学教育学部准教授は
地すべりかもしれないから地すべりの専門家に聞くのはいいが、
地すべりの専門家は活断層の専門家ではないから
活断層であることを否定できないだろう、との主旨を発言し、ごもっとも。
今回の調査の目的は、敷地周辺に活断層の定義に当てはまるところがあるかどうか、
12.5万年以降に動いたかどうか、これから動く可能性があるかどうかだった。
そして、島﨑邦彦・原子力規制委員会委員長代理は次のように4日の議論をまとめた。
「“すべり”があって12.5万年以降のものと見られる。
活断層によるものと考えても矛盾はないが、
地すべりの可能性が否定されているわけではない」
岡田教授の顔をつぶさないように気を使った前半のコメントだけでも
十分に黒からグレーだが、マスコミでは
活断層説と地すべり説が互角に近く取り上げ、結論を避けたもの目立った。
しかし、注目すべきは、地すべり説は論拠も説得力もなかったことだ。
学者は、根拠なしには何かを肯定も否定もできない資質を持っている。
だから、地すべり説を主張した側の論拠が崩れ、破綻している限りは
現実の世界では否定されたと見てもいい。
しかし、学者の合議でも、活断層であることは否定できなかった。
これで本来は十分だ。
重要なことなので、2時間を超えるが、報道を鵜呑みにせず
http://www.youtube.com/watch?v=D3lSO4r2fK8&feature=plcp
見てみて欲しい。こうした議論の見方にみんなで慣れよう。
さて、この会議の模様は11月2日の現地調査の模様と共に
5日(月)の報道ステーションで報じられ、
それを見た地質の専門家から翌朝6日(火)にメール★が来た。
先に裏とり情報を言うと、
関西電力と電力中央研究所と原子力規制委員会に確認をしたところ、
関西電力の情報で、現地調査に関西電力側として当日対応したのは30名で、
以下のメールに出てくる佐々木俊法氏を含めて電力中央研究所から2名、
関西電力の本店から4名、事業本部から数名が大飯原発の人間に加わって
参加していたというのである。この人たちが、少なくとも島崎氏、廣内氏に
問題の箇所を見せることに意識を払わず、時間を配分しなかったとも言える。
岡田教授もまた、「一時間見ただけで早急に結論を出せという。
我々こういうトレンチだと本当に長い間時間をかけて
いろんなものを測定しながらですので、やり方としてまずいと思いますよ」と
最後に述べている。
これだけ問題となった活断層論であるにもかかわらず
5人中3人が「見おとした」「時間が少なかった」「1時間見ただけ」と
述べる現地調査とはなんだったのか。さて、
★報道ステーションを見た地質の専門家から来たメールをかいつまむと以下の通り。
『報道ステーションで大飯原発のトレンチ内で
渡辺満久氏と議論して「ボーリングデータで活断層が判断できるのか」と
やり込められていた関西電力側の中心人物(長身でめがねをかけた面長の人物)は
電力中央研究所の一組織で地球工学研究所主査の「佐々木俊法氏」という人です。
なぜ、電中研の彼が関西電力側の人物としてでてきたのかを考えると面白いです。
トレンチ調査業務を請け負ったのは原子炉を作った三菱グループで、
ダイヤコンサルタントという地質調査能力が業界で疑問の多い大手コンサルです。
しかし、あのような掘削トレンチを見ても
地質断層や活断層・地すべりの関係を見抜けない状況からは、
両者のひどさがよくわかります。
話題の岡田篤正氏の地スベリ説が駄目だという決定的な場所は、海岸の露頭ですね。
海側の下の地層が断層を挟んで陸側の上の地層に乗り上げる「逆断層」が
2箇所も画像に写されているあの画像をみれば、活断層の専門家でなくても、
地すべりで説明するのは無理があるというのが私の印象です。
岡田氏がなぜあそこまで「地すべり」にこだわるのか理解に苦しみます。
地震に伴う活断層の変位がきっかけで滑り落ちたとしか思えませんが・・ 』
そんなわけで、今日11月7日(水)は午後、
原子力規制委員会の「大飯発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合」
http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/ooi_hasaitai/
第二回会合が開かれる。
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