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2012年9月23日 (日)

71.住民と分断された有識者会議に意味はあるか(後半)?

25日に開催すると21日にリリースされたこの会議の話、後半です。

利根川・江戸川有識者会議
http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/river_00000052.html 
日時:2012年9月25日(火) 10時00分から
場所:日本青年館 3階国際ホール  (東京都新宿区霞ヶ丘7-1)
最寄り駅:「千駄ヶ谷駅」「信濃町駅」「外苑前駅」「国立競技場駅」

利根川・江戸川有識者会議 委員 (並びと●○の印は私が加筆。以下で解説)

●淺枝 隆 (埼玉大学大学院教授)
江崎 保男 (兵庫県立大学教授)
○大熊 孝 (新潟大学名誉教授)※
岡本 雅美 (元日本大学教授)
● 小池 俊雄 (東京大学大学院教授)※
小瀧 潔 (千葉県水産総合研究センター内水面水産研究所長)
阪田 正一 (立正大学特任教授)
佐々木 寧 (埼玉大学名誉教授)
清水 義彦 (群馬大学大学院教授)
○関 良基 (拓殖大学准教授)※
●福岡 捷二 (中央大学研究開発機構教授)
藤吉 洋一郎 (大妻女子大学教授)
●宮村 忠 (関東学院大学名誉教授)
●虫明 功臣 (東京大学名誉教授)
鷲谷 いづみ (東京大学大学院教授)

石野 栄一 (株式会社埼玉新聞社編集局長)
川上 俊也 (株式会社茨城新聞社編集局次長)
須田 雅彦 (株式会社上毛新聞社論説室論説副委員長)※※
野呂 法夫 (株式会社中日新聞社東京新聞特別報道部次長)
山越 克雄 (株式会社下野新聞論説委員)
渡辺 鉱 (株式会社千葉日報社論説員)※※

オブザーバー
関係都県(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都)
※ 新たな委員(利根川水系の洪水流出に関する分野の学識経験者)
※※所属機関からの申し出を踏まえ交代

これは一体なんの会議か?

上記案内URLをクリックしていただくと分かるが
以下のように書かれている。
==============================
河川管理者である関東地方整備局長が、
「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(案)」を作成するにあたり、
河川法第16条の2第3項の趣旨に基づき
学識経験を有する者等の意見を聴く場として設置するものです。
(審議等により何らかの決定を行うものではありません。)
==============================

どんな会議になりそうか1(以下、敬称略)
元の名簿で50音順に並んでいたものをアカデミアとマスコミにわけて、
八ツ場ダムをはじめ多くのダム関連事業の受注法人の理事と
これまで「過大」であると批判されてきた水需要や想定の目標流量の
見直しの機会や責任を与えられながら
積極的に黙認もしくはお墨付きを与えてきた立場の人物に●印、
今回初めて委員として任命され、
ダムありきの結論に明確に異論を唱えてきた人物に○印をつけてみた。
賛成反対という近視眼的な解説で言えば、推進に偏っている。

どんな会議になりそうか2
オブザーバーを除き、全員が1分喋るだけで21分。3分づつで1時間強。
おそらく40分ぐらい「ご説明」があって、1時間強で2時間の会議か?
実質、何も言わせず、かつ多様なご意見をいただいた既成事実を作る会議デザインだが
改善の余地はある。

どんな意見を持っている人か
まず、これをご参考いただきたいが、
利根川の支流・吾妻川から流れ出る八斗島(やったじま)地点で想定される流量を巡って
公文書改ざん」があったことが、馬淵国土交通大臣時代に明らかにされた。
(問題とされたのは過大さゆえに八ツ場ダムが必要となる、
つまり結論が先にあって資料が作られたと考えられているからだ)

Photo

○そのことを八ツ場ダムの住民訴訟の中で証言したのが関良基
意見書「森林の機能を無視した国土交通省による基本高水計算の誤謬」
http://www.yamba.jpn.org/shiryo/tokyo_k/tokyo_k_g_iken_seki.pdf
意見書2「利根川の基本高水流量毎秒22,000の計算モデルの虚構」
http://www.yamba.jpn.org/shiryo/tokyo_k/tokyo_k_g_iken_seki_2.pdf

大熊孝は利根川の洪水想定について過大であることを、
博士課程時代から見抜き、現在も同様に復元流量に誤りがあると主張している。
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-3f75.html(←拙文で恐縮だが)

小池俊雄、福岡捷二、宮村忠、虫明功臣 各氏は
過大であると批判される基本高水流量を含む利根川水系河川整備基本方針を
元河川局長が率いる小委員会で決定
したときのメンバーに名を連ねている。

● さらに、小池俊雄は、上記の改ざんについての検証を大臣から河川局長を通して
日本学術会議へ委嘱され、開催された「河川流出モデル・基本高水評価検討等分科会」 の委員長を務めた

ここでは、改ざんがあったかどうかはまったく取り合わずに終わった。
なぜなら、改ざん資料は、上記の改ざんデータをもとに作られ、
小池俊雄、福岡捷二、宮村忠、虫明功臣が委員に名を連ねていた会議に出されて
その改ざんを見抜けないまま、お墨付きを与えてしまっていたからだ。
これがその資料です。見抜けなかったことを認めたくない心理ですよね。

Photo_2
出典(第28回河川整備基本方針検討小委員会 資料1「利根川に関する補足説明資料」P.7目)

●滑稽なことに、日本学術会議での検証が始まり、
過大な流量をはじいた資料を小池委員長らが国交省に請求をすると資料がないことになった。
常識で考えれば、改ざんしたことがバレたから、隠したと考えるのが普通だが、
この分科会は、国交省がシレっと新たに出したデータで算出した値にお墨付きを与えた。
(その計算を行ったコンサルと分科会の関係は略)

一方で、住民はしっかりと一部の関係資料を開示請求で入手。
国交省は、一部を非開示にしたが開示訴訟で負け、住民は勝利を収めた。
http://www.yamba.jpn.org/shiryo/johokokai/johokokai_hanketsu_hokoku.pdf
一方で、国交省側は公文書偽造でも、告発されている。

利根川流域1都五県の地方紙の論説クラスの記者も委員だが、この会議を読者に知らせたのは、ネット上で検索する限りは、以下の通りで下野新聞のみ。

八ッ場ダム建設:着工条件、利根川整備計画で25日に有識者会議 /群馬
毎日新聞 2012年09月22日 地方版
八ツ場ダムで25日有識者会合 利根川水系洪水を再検証
西日本新聞 - ‎2012年9月21日‎
有識者会議4年ぶり再開へ 25日に国交省 八ツ場ダム着工の前提議論
下野新聞 - ‎2012年9月21日‎
4年ぶりに有識者会議=八ツ場ダム本体着工で-国交省
時事通信 - ‎2012年9月21日‎

ちなみに、上記の「改ざん疑惑」を報じた新聞はこれまでに東京新聞だけ。

●要となる委員長になる可能性が高いのは第4回まで委員長だった宮村忠だが
ダム・インタビューで、これからは「線(堤防)から点(ダム)」「八ツ場ダムは必要だ」と
http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=504
立場が鮮明だ。

どんな空気が流れるか?
以上述べたように、利根川・江戸川有識者会議は
学者と新聞という妙な組み合わせで、住民だけは自由に討議する場がない。

さらにおかしなことは、この前日に、
◇利根川・江戸川河川整備計画関係都県会議(仮称)
http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/river_00000051.html
が設置・開催される。

「1都5県において、相互の立場を理解しつつ検討内容の認識を深めるために」とある。
河川法には定められていない手続であり、河川官僚の裁量手続だ。

さて、住民と分断された有識者会議に意味はあるかという問いである。
答えは、意味がある。しかし、このままでは意味があると感じるのは、
この会議をデザインした側であり、

関心を持ってきた住民側は指をくわえて静かに傍聴させられ、
不信と不満が渦巻くという状況が予測される。

しかし、開かれた住民参加のありように向けて
大きな飛躍と改善のチャンスを持っていると考えれば、そこに意味は見いだせる。

利根川流域の一人でも多くの人に見守ってもらいたいと思う。

Photo_3

出典:利根川水系河川整備基本方針の資料(122頁のPDF)より

(・・・しかし、こうしてみると、福島第一原発から放出された放射線物質が降り注いだ流域であると実感せざるをない。)

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