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2012年9月27日 (木)

75.利根川・江戸川有識者会議(1)有識者の矜持

2012年9月25日、利根川水系河川整備計画を策定する
流域5ブロックの有識者会議の一つ
「利根川・江戸川」ブロックの有識者会を関東地方整備局が開催した。

Photo

(開始前。傍聴席に背中を向けて座り委員を待つ国交省関東地方整備局河川部の面々)

「利根川治水の歴史が変わるか?」と思ったのは、
4年4ヶ月ぶりに「利根川・江戸川有識者会議」が再開されるにあたって、
「座長」を互選で決め直すこととなった瞬間だ(以下、敬称略)。

・4年4ヶ月ぶりの再開であること
・座長の選び直しについて要請があったこと
・3人の新しい委員が加わり、同所属でのメンバーの入れ替えがあったこと
・ 歴史の評価に耐えなければならない委員会であること

こうした理由から大熊孝、野呂法夫、関良基から座長の選び直しが提案された。
事務局はこの提案を受けて何故か「それでは引き続き宮村先生に」となりかけたが、

・ 座長をやりたい方がいたら所信を述べて、
 挙手で決めることが委員としての責任、責務ではないか。(野呂)
・言い出しっぺになったので、立候補する。(大熊)
・宮村先生を推薦させていただく。(清水)

という流れで、立候補した者、推薦された者の2名が挙手で選ばれることになった。

Photo_2

(立っている人物(大熊)から左へ岡本、宮村、小池、小滝、坂田、清水、関)

結果的には、21人中、3対4で、宮村座長続行となった。
しかし、会議の性質がこの時ほど鮮明になったことはない。

二人の河川工学者の所信は次のようなものだった。

宮村忠

「推薦を受けました。
 私はいいか悪いか希望があるわけではありません。
 今までの流れとして第一回から私だったんで。」

大熊孝

「利根川整備基本方針と整備計画自体に問題があると考えている。
 今の計画ではあと何年たっても完成しない。
 100年200年1000年経っても完成しない。
 利根川、石狩川、信濃川、吉野川でも同じ構造。
 日本の河川工学に問題があると考える。
 完成しない河川整備基本方針の中で
 20~30年の河川整備計画を考えることに矛盾があると考えている。
 その意味で河川整備基本方針から考えるべきではないかと第一点考えている。

 利根川の流域ではそれぞれの地先の人々の命を第一に、
 それが救われる方法を考えたい。
 新潟では五十嵐川、刈谷田川が破堤し、
 12人の方が寝たきりの方が寝たまま水が来て
 床上浸水、天井まで届くような浸水で亡くなられている。
 河川工学を専門とする人間にとして慚愧にたえられない。
 まず人命を尊重した治水を考えていきたいと思っている。

 ダムは川の生態系を破壊するものと考えてきた。
 日本がここまで発展する上で、必要なダムはたくさんあった。
 ただ生態系を破壊し、地域文化を破壊していると考えている。
 川にお願いをして作らせてもらう態度が必要だった。
 ダムについては根本的に疑義を持っている。」

対照的なこの二つの「所信」に対し、
どのような挙手がなされるのか。次の瞬間、驚いた。

もとより、21人中14人しか出席していない(以下の消し線が欠席者)。
ところが、手を挙げない者がいた。
・理念を示さず、惰性で推薦を引き受けた有識者か
・河川工学者としての反省と理念と矜持を示した有識者か

法定手続に参加する機会を与えられた有識者でありながら
思考停止を決め込む「有識者」が存在するのだ。

宮村忠に挙手したのが
  清水義彦、小池俊雄、小瀧潔、虫明功臣
大熊孝に挙手したのが
  野呂法夫、関良基、鷲谷いづみ

利根川・江戸川有識者(および思考停止者)会議名簿
   「消し線」は欠席、×は判断せず。

 淺枝 隆 (埼玉大学大学院教授)
 石野 栄一 (株式会社埼玉新聞社編集局長)
 江崎 保男 (兵庫県立大学教授)
 大熊 孝 (新潟大学名誉教授)※
×岡本 雅美 (元日本大学教授)
×川上 俊也 (株式会社茨城新聞社編集局次長)
 小池 俊雄 (東京大学大学院教授)※
 小瀧 潔 (千葉県水産総合研究センター内水面水産研究所長)
×阪田 正一 (立正大学特任教授)
 佐々木 寧 (埼玉大学名誉教授)
 清水 義彦 (群馬大学大学院教授)
×須田 雅彦 (株式会社上毛新聞社論説室論説副委員長)※※
 関 良基 (拓殖大学准教授)※
 野呂 法夫 (株式会社中日新聞社東京新聞特別報道部次長)
 福岡 捷二 (中央大学研究開発機構教授)
 藤吉 洋一郎 (大妻女子大学教授)
 宮村 忠 (関東学院大学名誉教授)
 虫明 功臣 (東京大学名誉教授)
 山越 克雄 (株式会社下野新聞論説委員
 鷲谷 いづみ (東京大学大学院教授)
×渡辺 鉱 (株式会社千葉日報社論説員)※※

※ 新たな委員(利根川水系の洪水流出に関する分野の学識経験者)
※※所属機関からの申し出を踏まえ交代

歴史はなんでもない一つの会議で大きく変わる。
普通に二つの所信を当たり前に判断できる頭脳が多数あれば
日本の治水のあり方を首都圏から変える第一歩になった。

委員の追加は民主党政権でようやく実現したものだ。
思考停止した有識者は変化を恐れる臆病者なのか。

一方でダムありきではなく「人命を第一に考える」治水のあり方が河川工学者の口から
利根川について議論される国の会議の場で表明されたこと自体が
私の記憶の限りでは初めてであり、大きな前進でもある。

なお 座長の選び直しの要請の根拠となった昨年11月に開催された「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)」に対する学識経験を有する者の意見聴取の場 (今回とメンバーの多数が重なっている)で行われた会議進行は以下のようなものだ。

○宮村座長
ありがとうございました。大分岡本節で、もう発言はないだろうと思います
○宮村座長
ありがとうございました。お答えはなくてもいいと思います。
○宮村座長
答えなくてもいいし、答えてくださってもいいし。
○宮村座長
野呂さんの意見は、そのまま意見として。あまり極端なアジ的なあれも、今ここではやらないように。ほかの方、どうぞ意見があったらやってください。どうですか。どうぞ。
○宮村座長
これについてはさんざん議論されてきて、大変申しわけないですが私もコメントだけしますと、先ほど地元の人たちの話が清水さんから出ましたけれども、これからやるときに地元がどう苦労するかというより、今までさんざん苦労して、ふと全然地元とは関係なくとまって、さあ客観的に検証しろと言われても、地元の人は非常につらいと思います。苦労してきた地元に対して思うと、もうほじくり返すような議論はいい加減にしてくれというのが私の個人的な意見で、そんなことを含めて、今日いただいた意見をこの委員会の意見として予定どおり報告書として、しかもそれは委員名を書くんですか。どうするんですか。

全体をご覧になりたい方はこちら。リンクが切れた場合はこちらを「2012114.pdf」をダウンロード 

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川は誰のものか」カテゴリの記事

コメント

お忙しい中のご報告ありがたく拝見。座長の選任、発言、大熊先生の勇気あるご発言など驚きました。宮村氏の選び方も、発言もまことに、公共空間を決める有識者会議のありようも実に問題ですね。宮村さんは、過去の発言から見ても、座長の資格はありませんね。人と河川のかかわりを深く問う大熊先生の、生態系論や人命重視のご発言頭が下がります。
僕は、全国の河川の現場に詳しい、知識人を加えるべきと考えます。
岡本雅美さんなど発言しないのは、むしろ「犯罪的」ですね。川は誰のものか。水は誰もものかを考えさせられますね。こんな委員を選定して、だれのため川を作るのでしょうか。ダムは、多くの場合、反生態系、反生命的な仕掛で,物質循環を閉ざします。この意味で、ダムは、反社会的ですね。

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