« 67.ストライクゾーンの狭いダム~八ツ場ダムではどうか | トップページ | 69.但し書き操作 »

2012年9月20日 (木)

68.「ダムは水位を下げる」は原則

福島みずほ参議院議員が9月7日に提出した
八ツ場ダムが利根川の水位を低下させる効果に関する質問主意書」への
政府答弁(9月18日)が掲載された。何が分かったか、概略をまとめてみる。
質問 http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/180/syuh/s180260.htm 
答弁 http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/180/toup/t180260.pdf

質問は、これまで「八ツ場ダムが川の水位を下げる効果」について言及した、
さまざまな立場の人々(推進・反対/行政・議員・専門家)の発言を網羅しながら
国交省の関与や認識、検討状況を尋ねている。

答弁によって明らかになったのは、
国交省が八ツ場ダムについて「水位が低下する」と言及するときは
一般論であり治水の原則論に過ぎず(一部を除いては)、
具体的な計算や根拠は、組織内外で把握も共有もしていないことになっていることだ。
特に、八ツ場ダムを含む上流ダム群の効果や、
江戸川分岐点より下流での効果は、尋ねられても答えることもできない。
また、他者が水位の低減効果について発言をしても
その正誤を判断する根拠すら持っていない
根拠を持たないのは、その作業に時間を要し、困難だからだと言う

江戸川・利根川の分岐点よりも上流で32~65センチ

さらに、八ツ場ダム建設のきっかけとなった昭和22年台風による堤防決壊の原因は、
複数の橋桁が障害となって水位が上がったことだった
その深水は50センチというから、
をもしも単純に相殺したとすれば、八ツ場ダム建設には治水上、ほとんど意味がないと言われても仕方がなくはないか?

そのようにまとめるに到った【質問答弁】を付き合わせると以下の通り。

【1の質問】
2009年2月19日衆議院予算委員会における永岡桂子議員の質問に当時の河川局長
「八ツ場ダムを初め、上流ダム群の洪水調節により洪水時の水位を低下させる」
と答弁したことについて。「具体的にどのような条件の下で、
どの程度の「水位の低下」が起きるか」を質問。
【1の答え】「水位の低下」は一般論。

【2の質問】
2011年12月1日の「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」委員の質問に、
国交省は、利根川と江戸川に分岐する「江戸川の分岐点」より上流では
八ツ場ダムによる水位の低下について
「一番小さいところで32センチから33センチ、
一番大きいところで65センチぐらいの水位低下量がある」と答弁。
これに塩川鉄也衆議院議員が「八ツ場ダムの検証における治水に関する質問主意書」で、
この地点の下流で水位を下げる効果について尋ねると「算出していない」と答弁。
そこで、算出するか、算出しない理由は何かを質問。
【2の答え】計算に係る作業等に時間を要するため、困難。

【3の質問】
2010年3月16日の衆議院国土交通委員会での八ツ場ダム問題に関する参考人質疑で、
水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之氏の国交省開示資料に基づく計算によれば
利根川の治水基準点(八斗島)で、「最大13センチメートル」の水位が低下。
堤防の一番てっぺんから四メーター以上あったと指摘。
これを否定する根拠はあるかという質問。
【3の答え】承知していないため、お答えは困難。

【4の質問】
2010年3月16日の衆議院国土交通委員会での八ツ場ダム問題に関する参考人質疑で、
虫明功臣法政大学客員教授が、
「八ツ場ダムの流域に大きな洪水があれば、
数十センチ、三十センチから四十センチの水位を下げる」と指摘。
同教授の計算は、利根川のどの地点、どのような条件で算出されたか。
より下流に行けば行くほど水位を下げる効果は減じるのではないかを質問
【4の答え】承知していないため、お答えは困難。

【5の質問】
2010年4月13日の参議院国土交通委員会で山内俊夫議員の発言、
「江戸川区、そして埼玉、千葉、この一帯の人たちの財産を守っている(略)、
現場へ入っていただければ、多分八ツ場ダムの効能、ここらも分かってくると思う」
についての具体的な計算結果はあるかを質問。
【5の答え】国交省として算出結果を示す資料は確認していない。

【6の質問】
2009年12月11日、群馬県議会で意見聴取された土屋信行江戸川区土木部長(当時)は、
1.「八ツ場ダムでは2400立法メートルの水をもつ」と発言。条件は?
2.3,「八斗島から下でダムの無い分を河道で全て流そうとすると、引き堤の用地買収、
そして家屋補償等ありますので、利根川本川で1兆3千億円。
江戸川では7500億円。あわせて2兆5百億円が必要です。
ダム一箇所で守ればポイントで守れるんです」との発言の裏付けを質問。
4 国土交通省が江戸川区に、八ツ場ダムが江戸川区において水位を具体的に
何センチメートル下げる効果をもつと説明したことがあるかを質問。
【6の答え】
1.「2400立法メートルの水をもつ」の意味が不明
2~4. 国交省が江戸川区に八ツ場ダムの効果の根拠を
提供した事実も、提供された事実も、説明した事実もない。

【7の質問】
2009年12月11日、群馬県議会で意見聴取された
宮村忠関東学院大学工学部教授(当時)は、昭和22年のカスリーン台風について、
「利根川は、もちろん洪水の流れで非常に多くの流木が流れたそうです。
これが橋に引っかかると、
水位が一メートルから二メートル位すぐに上がってしまいます。
これが原因ではないかという説もある。
これは分からないですよ。利根川の堤防が切れたことの理由は。
だけど、他で、至る所で、橋に引っかかった。
橋が流れてくれれば助かった、ということなんです。」と発言。
1~3.国土交通省は、同説を検証したことがあるか。どのような結論を得たのか。
流木が橋に引っかかったことが破堤の原因であった可能性を
国民に説明したことがあるかと質問。
4~6.八ツ場ダムの効果について、「少しでも水位が下がることは、
ものすごいよいことです。これが4センチメートルだろうが、
5センチメートルだろうが、10センチメートルだろうが」と宮村教授が発言。
国土交通省も,水位が下がることは何センチメートルであっても重要だと考えるか、
その考えを流域住民や水防活動を行っている人々に説明したことがあるかを質問。
【7の答え】
1~3.昭和23年1月に建設院関東地方建設局(当時)がとりまとめた
「カスリーン洪水(昭和22年9月)と利根川本川東村堤防決潰について」で
合流点における水位の異常なる上昇に加えて
更に栗橋における国道4号線の橋梁およびこれに並行する東北本線鉄道橋
ならびにその2,2キロメートル上流にある東武線橋梁の三橋がいずれも桁を洗い、
これらが多少堰上げたことも手伝って決潰地点付近の水位は堤防高を超え、
おおよそ延長1300メートルにわたって溢流をはじめ
最大水深は0.5メートルに達したと推定せられている。
かくして溢流した水は徐々に堤防の裏小弾を崩壊し、
次第にこれが拡大しついに幅200~350メートルにおよぶ
大決潰請口を生ずるにいたったのである。
」と記録されている。
4~6.水位を下げて洪水を安全に流すことが治水の原則
原則について、様々な機会を通じて周知してきたところである。

~~~~~~
以上。

ちなみに、国交省が作成した説明資料や開催した会議で
橋で水が堰上げて利根川の堤防が切れた話を私は聞いたことがありませんでした。

この話を聞いたのは市民団体の利根川堤防ツアーに参加したときで
その話をしてくださったのは大熊孝新潟大学名誉教授です。↓
http://tonegawashimin.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-0800.html

« 67.ストライクゾーンの狭いダム~八ツ場ダムではどうか | トップページ | 69.但し書き操作 »

川は誰のものか」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1651265/47143730

この記事へのトラックバック一覧です: 68.「ダムは水位を下げる」は原則:

« 67.ストライクゾーンの狭いダム~八ツ場ダムではどうか | トップページ | 69.但し書き操作 »

2015年6月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ