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2012年9月27日 (木)

76.利根川・江戸川有識者会議(2)出された論点

エッセイじゃなくて、取材メモ状態が続くがお許しを。

2012年9月25日、利根川水系河川整備計画を策定する
流域5ブロックの有識者会議の一つ、「利根川・江戸川」ブロックの有識者会は、
つい先日まで国土交通省水管理・国土保全局で
河川計画課河川計画調整室長をしていた泊宏氏が、
関東地方整備局河川部長となって取り仕切ることになった。

Photo_3
経緯を説明する関東地方整備局 泊宏河川部長

これまでの経緯説明の後、座長問題の後、本題に入った(以下、敬称略)。

しかし、議題自体に唐突感があり、問題視する意見が続いた。
前にも書いたように、1997年以来策定がサボタージュされてきた
河川整備計画にはさまざまな要素が含まれる。

今回は4年4ヶ月中断していたかと思うと、突然、

「目標流量は年超過確率1/70~1/80でいかがですか?」
それは、八斗島という基準点を毎秒17000トンの流量が流れるぐらいの大雨です。
ご意見ください、という。

Photo_6

出典http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000066985.pdf

年超過確率1/70~1/80とは、
毎年1/70~1/80の確率で発生する雨」といったり
70年~80年に1回以上の確率で発生する雨」といったりする雨の大きさで

改めて関東地方整備局に一般の人に分かりやすい表現を電話で確認したけど
折返しますtelephoneってことになっちゃったぐらい、
実は「河川計画課」の人もサっと説明できない代物だ。)@0@(。

ダムや堤防による対策で「大雨が降っても大丈夫!」と言える程度の雨の規模を、
わざわざ川の流量に換算して出しているのだが、

簡単に言えば、過去の小さい雨で川に流出した量をもとに
さまざまな係数を掛け合わせて
これが大きな雨だったらどれぐらいの雨となるか」と計算ではじいた想定です。

ところが、川底の状況、川原に生える木や草はもちろん、
砂か、土か、岩盤かという土壌や地質、そして、
はげ山か森か町か田んぼかなど、降り注ぐ野山の状況も変わる。
こんなたくさんの要素をかかえる自然を「計算」で
正確に測ることは困難だと謙虚に受け止めるのが科学である。

結局のところ、数字の操作(改ざん)が簡単にできてしまうために、
過大でダムを作り続けるための理屈であると批判の的であり続けた。

また、そんな議論に終始して、その間、どこの堤防がどれだけ危ないのか、
どんな土地が浸水被害を受けやすいのかといった
本当に安全につながる議論はそっちのけで、各地で被害者を出し続けてきた。
それが日本の「治水」のあり方だった

有識者会議の中でも、
「特定の数字に基づく対策で本当の安全が確保ができるのか」と批判されることとなった。
その他の抽出された河川整備計画上の課題や論点をまとめると
おおよそ以下のようなものだ。

1)環境、生態系
2)低水管理(水利権問題)、
3)時間と予算の制約、
4)雨量からの流量を算出することの妥当性(日本学術会議の検証)
5)森林の経年変化(成長)による流量低減効果
6)火山岩層が雨を吸い込む力が計算で考慮されていない点
7)カスリン台風時の氾濫の状況

これらの論点は次回に持ち越された。

以上がレポートで、以下は自分用の論点記録メモ

正確な議事録や全資料はこちら↓でご確認ください。
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000202.html

● 河川整備計画は低水(管理)の問題もある。私はその専門。(岡本)

● 河川工学から遠く身を置く者からすると、目標流量に限定している。治水安全というテクニカルな領域の問題に限定してしまうと、安全度は本来多元的、多義的な概念。限定すると広く英知を集めることができない。特定の数字に基づく対策だけを追求すると、本当の安全が確保ができるのか。河川を巡る自然環境、社会環境は大きく変わっている。雨の降り方、高齢化、地方から人が消えていく。(鷲谷)

● 基本高水流量の検証を日本学術会議で行い、国土交通省に回答を出した。総合確率法について疑問が呈された。昭和57年のモデルを検証しようと思ったら資料がなかった。今計画に使われているモデルは間違いないと確認した。疑問があれば報告を読んで理解していただければ。(小池)

● パブコメgeminiを見ると、目標流量を定めること自体が、治水安全上、意味がないという意見が多い。住民の安全が図れるのかということから議論したい。河川法でそうなっているとの回答だが、主権在民の国だから、聞き流すだけではパブコメを出した方が納得しない。(関)
● 国土交通省は、目標流量を決めた上で、時間と予算制約の中で河川整備計画を立てると回答している。国土交通白書によれば2040年には新規事業を起こす財政的な余裕がない。200年かかっても300年かかってもできない計画を立てても意味はない。30年で予算制約の中でできることを考えなければ。(関)
● 日本学術会議で小池先生は、(洪水想定に使われる)貯留関数法は50年前に考案された枯れた手法だとおっしゃったが、蓋を開けると貯留関数法を使っていた。知り合いの物理学者はこれはサイエンスではないという。左辺がm3の雨量の単位、右辺が量を時間で割ったもの。体積と体積/時間をイコールで結んでいる。総合確率法にも問題がある(関)。
● 私の専門は森林。日本学術会議は森林が成長しても洪水のピーク流量は変化がないと結論してしまったが、私は異議を唱えている。「水と森に関する国際会議」で東京大学の愛知演習林の蔵治光一郎講師ら若い研修者が、愛知演習林のデータから1930年代のはげ山だった頃と最近の洪水を比べ、流量の変化を見ると、平均14%ぐらい減った。利根川でも、1950年から2010年まで、森林の成長によって13.7%、ピーク流量減っている。しかし、日本学術会議はそれを無視してしまった。(関)
● 貯留関数法は、中規模洪水(のモデル)を使って計算すると大規模になるほど高くなることが明らかな計算方法。地質ごとに雨水の透水性が異なるが、火山岩層の地質の状況を反映しきっていない。(関)

● 宮本座長のリクエストで関発言への小池、虫明コメント。
● これまでの経緯が分からない。整備計画はどんなものでどれぐらいのスケジュールでやるものか。(清水)
● 私は会議を時間内に動かすのが役割(宮村)
● 今日いただけなかった意見は事務局に明後日までにください(事務局)
● キャスリン台風のときの氾濫はどうあったのかを次回示していただきたい(大熊)

ロジスティクスの問題
● 次回以降の開催予定が10月4日、16日、25日と理解している委員と、
そのうちのどれかだと理解している委員がいるが、国交省は未定だという。

以下は会議後の宮村座長ぶらさがり会見

記者:運営についての問題について。
宮村:案内が来たのが遅かった。
記者:今後の議論は?
宮村:僕がやるのは会議の進行。希望を言えば、共通認識がない。
記者:事業着工の要件になっているが、時間をかけて議論をするのかどうか。
宮村:個人的意見は持っていない。
記者:会議開催案内については1週間前に(行う)ということで今日は共通認識が得られたと考えていいか。
宮村:短いと思う。今後については共通認識を持って欲しいと思う。
記者:今日出た議題は尽くされたのか。メールで終わりではない?
宮村:次回に持ち越し。
記者:目標流量をあらかじめ定めることへの異論が出たが。
宮村:個人的意見を言うことは控えることにした。
記者:議論をこれから尽くしていくことが大切だということですよね。
宮村:そうそう。
記者:500年経っても達成できない基本高水が時間的、財政的制約の中で定められていることについての問題も議論されるんですよね。
宮村:うん。さきほども出たの。だからそういうことが共通認識になればそれはそれでいい。会を進められる。
記者:森林が育つと(川への流出)流量が減るという新しい研究成果は今後の議論になるか?
宮村:という意見が出ればね。だけど私はその学会には行き気もありませんし、皆意見違うんですよ。皆同じ意見なんて変だよ。個人的にはみなあるんですよ。会議で間違っているか、あってるかを決めるわけにいかないんです。この会議はみんなで意見を聴く会ですから。決めろということではないですから。意見を聴くことの司会をやっている。
記者:意見書をまとめるといった考えは?
宮村:考えていない。与えられた課題は進行役ですからね。

「あと1問」と国交省。

記者:河川法16条の2の運用の仕方は、流域によって違いますが、淀川流域委員会のように有識者も住民も地域特性に詳しい住民も含めた議論を行うということによって、より多重的な深い議論、あるいは皆が共通理解を持てるだけの議論をするところもありますが、利根川について行われていることはどのようにお考えでしょうか。
宮村:私は利根川は利根川のやり方があると思う。
記者:理想的だと思われますか?
宮村:理想ってないもん。
記者:先生としては理想像がないということでしょうか。河川法のあり方として。
宮村:だから僕はね、決めようというときに色々意見があるわけです。そういうときにどういうふうにしてね決めたらいいのかというのはそれは悩みですよ。だけど、淀川方式がいいと何回も聴かれるが、いいということを前提に聴くからさ。それで違うということを言うと批判されているように聞こえるが、淀川は淀川でいいじゃないですか。
記者:要は、行政は行政、学者は学者、住民は住民で聴くというのは、河川管理者にとって都合がいい、いいところ取りができるからそういうやり方が
宮村:と、アナタは思っているんだ。
記者:私は思っていますので、
宮村:アナタはそう思っているんで、私はそう思っていない。

telephoneコールバックされてきた答えは、
「30年間に少なくとも1回は年超過確率1/70の洪水が発生する確率が35%です。
30年間に少なくとも1回は年超過確率1/80の洪水が発生する確率が31%です」
というもの@0@。
私の問いは「一般の人に分かりやすい表現は?」だったが相談した私がバカだった。

gemini論争の的になっている「目標流量」だけでパブコメをすることへの批判は高かった。

ここ(PDF)を見れば分かる。
(1、6、10、12、13、14、15、16、19、20、
 23、24、26、27、29、32、33、34、37、38、
40、43、45、46、47、48、49・・・・
全体で93通のパブコメが寄せられ、半分まで見たが、目標流量批判の多いこと!)

なお、各紙の報道は八ツ場あしたの会がここにまとめている。

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コメント

よくまとめていただきました。雨水の流出係数・計出のからくりを問題にしているのはさすがですね。ほんとベルクではないが、安全とリスクのダイバシテ―を思います。勉強になります。

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