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2012年9月13日 (木)

64.「取水制限」の利用方法~石原都知事の場合

相変わらずの「利根川渇水」報道に加えて
9月11日には「10%取水制限」も加わった。
http://www.ktr.mlit.go.jp/saigai/tonedamu_dis00010.html

節水の呼びかけはよいことだ。なぜなら、
高度浄水処理 をしているところは、
単に沈殿 させるのとは違いエネルギーも使うから省エネにもなる。

それに、今回の「10%取水制限」の大本営発表は、
いかに「渇水」がダム建設に利用されるかを検証する上で役立つ。

利根川水系一円(東京都、群馬県、栃木県、茨城県、埼玉県、千葉県)の皆々様には
「10%取水制限」で生活にどんな影響があったかを記憶しておいて欲しい。
「10%取水制限」が、実は何の影響もないことをリアルタイムで実感して欲しい。
それが何日続くかも一緒に覚えておいて欲しい。
その情報が数年後に以下のように「利用」されたときに、
「はは~ん、こういうことだったか」と思って欲しい。

以下は、2010年8月6日(金)に石原都知事の定例会見でやり取りをした話です。
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-b15c.html

この時は、「東京都はなぜ水需要予測の見直しをしないのか」を
都知事の口から聞き出すことが目的でした。
すると知事はその理由を語り始めます。以下に少し抜粋します。

【知事】それは八ツ場の問題に当然関係あることですから。
 ただ、数年前に東京では、二百十何日ですか、取水制限したんです。それ1回のことで、それで済んで、当分ないだろうという予測で済むのか済まないのか。あの時は、学校のプールも使えなくなったし、東京のビール会社も生産を停止した。もし八ツ場が仮にあったとしたなら、17日で済んだ取水制限が、117日、続いたんです。こういうものも、1つの公の水路に対する大事な前提条件じゃないかと私は思いますけれども。

【記者】いつもビールの工場が停止されたということをおっしゃるのですけれども、確認しましたところ、知事がおっしゃっていたその時期に、ビールで生産ができなくなったというところは、ほとんど見つからなかったということ……。

【知事】そう。僕は東京で2つの会社が、製造を停止じゃないけれども、生産量を従来よりも低めたという話は聞きましたけれど。

【記者】はい。あと、プールにしても、それで人命が失われるというようなことではなかった……。

【知事】もちろんそうです。

ここまででお分かりのように、

第一に、石原都知事はこのとき
「117日の取水制限」を都が水需要予測を見直さない理由にしました。変ですね。
同時に、「八ツ場が仮にあったとしたなら、17日で済んだ取水制限が、
117日、続いたんです」と、取水制限を新しいダム建設の必要性の理由にしました。

しかし、利根川流域住民の皆さん、
9月11日に「取水制限10%」が始まって今日で3日目ですが、
この3日間、何か生活に支障がありましたか?
「取水制限10%」と言うのは、今日のような日だと記憶しておいて欲しいのです。
「水が足りない」と言うのは「今日」のことです。
ダム建設の理由になっているのは「今日」のことです。
<電気が足りなくなる!と大飯原発を再稼働したのとオナジ構図の話です>

第二に、石原都知事はこの日まで、常に繰り返し、
ダムの必要性に、ビール工場と学校プールを使っていました。
この時の質問で、この答えがまさか返ってくるとは思ってもいませんでしたが、
ビール会社に「ビール工場停止」なんて事実はないことを
取材<疑問解消>していたことが役立ちました。そして、事実をもって質問をしたら、
「生産を停止」から「製造を停止じゃないけれども、
生産量を従来よりも低めたという話は聞きました」にトーンダウンしました。

続きです。質問をそらされたので
私はこの日の目的である質問「東京都はなぜ水需要予測の見直しをしないのか」に
戻そうとしました。すると質問が遮られ・・・・驚くべき方向へ話が展開します。↓

【記者】飲み水、あるいは生きていくための最低限のものという、ナショナルミニマム、あるいはローカルミニマムというものは、見直し……。

【知事】ただ、八ツ場の場合、行ってみて分かるでしょうけれど、あそこまで事業が進んでいるわけです。しかも、利水の問題だけじゃない。治水の問題もあって、埼玉(県知事)の上田(清司)君の話なんか聞いたらいいと思うけれども、堤防が非常に老朽化して、どうどうと浸水してきて、結局、それに対する対策というのは、堤防をつくり直すということで、べらぼうにお金がかかるから、その度に、地元の消防団が出て、ここはまずい、危ないということで土嚢を積んだりなんかしているらしいけれども、堤防の決壊もさることながら、前提となる浸水というのでしょうか、それが堤防の反対側に、わき上がってくるような状況というのはあるみたいだから、これまた八ツ場について考える1つの条件じゃないでしょうか。

東京都はなぜ水需要予測の見直しをしないのか」を聞いているのに
利水の話で分が悪くなって、なんと、
埼玉県の知事に治水<堤防が危ない>を聞きに行け、
という答えになってしまったのです。<あれれ?堤防が危ないからダムなの?ちゅう話でもあり>

昨今の空ダム報道と取水制限10%で、大変だ、という印象を持つでしょう。
あたかも明日にも断水か?やっぱりもっとダムが必要では?と思うでしょう。
でも「取水制限」であり「給水制限」ではない。
10%は節水の目安にはいいでしょう。でも「渇水」だと騒ぐのは何のためでしょうか。

困るのは、こういう大本営発表で報道が先走り、
生データを検証できるはずの不勉強なもしくは
政治的なアジェンダを持った政治家が考えることをやめて
騙されて、政策と住民をミスリードしてしまうことです。

話のオチ

ちなみに、「東京都はなぜ水需要予測の見直しをしないのか」という私の疑問は、
この直後、思わぬ形で解消します。

実は、東京都は見直しをしていなかったわけではなかったのです。
それどころか見直しをしていたことを隠していたのです。

2003年に行われた需要予測が大幅に(2割)外れたため、
2006年、2007年、2008年に1億円以上をかけて
密かに委託調査で予測を行っていたのです。
それを隠蔽し、公表していなかっただけでした。

なぜか?
調査結果は、需要が横ばいから減少傾向を示して本当のことを物語っていたからです。
新しいダムの不要性を証明するデータが出てしまったから隠したとしか思えない。
なぜ、そう思うか?なぜならば、

東京都は2012年3月に新しく需要予測を発表したのですが、
2006~2008年に行った調査結果を反映せず
なぜか2003年のオオハズレした予測をなぞる独自の需要予測を出したからです。

新しいダムをつくらなくても済む調査結果が出たのに
それを隠して、ダム建設を続ける。二重三重の無駄遣いです。

このことは、八ツ場ダム住民訴訟を続ける人々のねばり強い調査によって
世に訴えられ、つい最近、裁判でも論証されていますので、読んでください↓
http://seisaku-essay.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-a1fa.html

また、東京高裁に提出された
東京都水道局の新水需要予測に関する意見書(嶋津暉之証人)の
20~21ページのグラフを見ると、いかに東京都の水需要予測が非科学的か、
というより都が小学校の算数ができていないかが分かります。↓
http://www.yamba.jpn.org/shiryo/tokyo_k/tokyo_k_g_iken_shimazu_k49.pdf

ということで、忙しい方のためのExecutive Summery

2010年に「東京都はなぜ水需要予測の見直しをしないのか」
と都知事に尋ねた質問は、石原都知事が質問をそらしたがために、
「利水」では渇水による(誰が吹き込んだか知らないが)ビール生産停止のウソのため、
「治水」では埼玉県の老朽化堤防ために八ツ場ダムを必要とすると
知事が考えていることを明らかにしました。

その上、実は、水需要予測の見直しをしていたのに、
その結果が、ダム建設には都合の悪い「減少傾向」を示していたために
そっちは隠した上で、都合のよい需要予測を作り直して2012年3月に発表したという
もの凄いオチがつきました。

渇水キャンペーンには裏があるという話でした。

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コメント

データをきちんと示せないので、ブログなどには書いていないのですが、2つ重要な話を記者さんには知ってもらいたいです。
1つは、取水制限と給水制限の違い。取水制限が10%ということは、多分、給水制限では5%くらいのはずです。不便はないはず。
もう1つは、「水はなんのために使っているの?」という話で、用途別に水の使い方のデータを調べると、飲むが7%、洗うが約90%の筈です。
トイレで水を流す、食器を洗う、洗濯機を回す、風呂に入る、車を洗うなどなど、水使用の形態は”洗う”が中心であって、”飲む”はほんの一部なんです。

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