54.裁判所は裁判所だけでは機能しない
弁護士の人たちは、裁判は弱者救済のためにある、とよく言う。
たった一人の訴えでも、巨大な権力と闘うことができるからだ。
そこに存在すべきは真実のみ。
何が真実であり、その事件の被告にどんな責任があるのか、ないのか。
裁判は、不当、不公平な理由で現出した現実に光を照らして
事実を浮かび上がらせ、物事を客観視するためにある。
ところが、司法に行政チェック機能はあるかで書いた件の、
よくない結論が東京高裁から出た。
何が起きたかを噛み砕いてみる。
これは
● 裁判官忌避の申請
税金のムダ遣いは止めて欲しいと都に訴えている原告(都民)が、
「公正な判断を下すためには9人の話を聞いてください」と裁判官に頼んだのに、
裁判官は9人のうち2人の話しか聴かないと判断をしたので、
「ではこの裁判官ではない人に判断を下して欲しい」と
原告が裁判官の交代を東京高裁に訴えたもの。
●裁判官忌避の申請の却下
ところが、2012年8月16日、東京高裁は申請を却下した。
こちらに理由が掲載されたので読んでみると
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(裁判官の忌避)
第二十四条 裁判官について裁判の公正を妨げるべき事情があるときは、
当事者は、その裁判官を忌避することができる。
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とあるが、この「事情」の意味は、以下の場合だと法令解釈を行っている。
・裁判官が当事者と特別な関係にある
・すでに事件につき一定の判断を形成している
・公平で客観性のある審判を期待することができない
●却下の理由
そして、東京高裁は今回の場合はこれらには当たらないと判断した。
その判断根拠はこうだ。
「手続内における審理の方法、態度などは、それだけでは直ちに忌避の理由とはならない(最高裁判所昭和48年10月8日第一小法廷決定・昭和48年(し)第66号・刑集27巻9号1415頁参照)」
判例だ。目を凝らすとやっとその下に二つの理由が分かりにくく書いてある。
1. 原告が忌避する理由は、裁判所の証拠決定や訴訟指揮上の措置に対する不服である
2.1件記録を精査した
そして、この二つは「裁判の公正を妨げるべき事情」にはあたらないというのだが、
この判断こそが分からない。
「1」は不服であるとの訴えを「不服である」とオウム返しにしているだけ。
「2」は不服の中身を判断するために1件記録を精査したという意味なのだろうか?
しかし、その「記録」がどれのことなのか分からない。
精査して何が分かったのか分からない。
それがなぜ裁判の公正を妨げるべき事情ではないと
判断したのかが分からない。分からない尽くしで、これでは
忌避の却下の理由が分からないですよ・・・)-。-(。
裁判官って取材を受けてくれるのかなぁ。
●特別抗告
第三者が読んでも、ヘンだと思うこの判断、
訴えた側は8月21日、最高裁判所へ特別抗告を行っている。
ボールは再び裁判所へ行った。
●振り返って思うこと(個人的なメモ)
一度だけ私も行政裁判の原告となったことがある。
その時、この人(裁判官)は私が主張していることを
まったく読んでいないなぁとビックリした瞬間があった。
あの直感は正しかったと今さらながら思う。
裁判官とは、原告(弱者)の言うことをスルーして判断するものかもしれない。
そこをデフォルトとしてスタートしなければ公正な裁判などありえない。
この裁判を見ていてそう思う。
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