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2012年6月 7日 (木)

28.大臣が誰であれ

ボツ原稿の公開:4月26日の事件直後に書いたが、ボツになった。
少々アレンジして公開させていただく。

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大臣が誰であれダムを中止させない隠れ蓑(カラクリ)を持つ国交省

 「トイレに行こうとしたら、中まで見張りの職員が3人もついてきた!」会議終了まで3時間もの間、傍聴を拒み、会議室の外で傍聴を求め続けた国民に、こんな感想を言わせた異様な会議がある。2009年12月に「できるだけダムにたよらない治水への政策転換」を目的に設置された国土交通大臣の諮問機関「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」(座長:中川博次京都大学名誉教授)だ(写真)。前原誠司国土交通大臣(当時)が「今までの考え方を変えてもらう」とダム推進論者を中心に人選し、完全非公開で開始した。

●「できるだけダムにたよらない治水」という諮問

9ヶ月後の2010年9月27日夜、有識者会議は事業者自らがダムを含む複数案をコスト重視で比較する「自己評価」方法を「中間とりまとめ」としてとりまとめた。この「中間とりまとめ」を準備よろしく翌日には国土交通省河川局(現、水管理・国土保全局)が「ダム事業の検証に係る検討に関する再評価実施要領細目」 としてまとめ、83のダム事業計画について実施すると発表した。

しかし、この細目には、諮問された「ダムにたよらない」の文字はどこにもない。有識者会議をスクリーン(もしくは隠れ蓑というべきか)にして、求められた概念は消えて、まったく別のスキームが描かれていた。

● 「臨時的かつ一斉に行うダム事業の再評価」に

「ダム事業の検証に係る検討に関する再評価実施要領細目」に書かれた「目的」がすべてを表している。

第1 目的 「本細目は、「国土交通省所管公共事業の再評価実施要領(以下「実施要領」という。)」に基づき、平成22年9月から臨時的にかつ一斉に行うダム事業の再評価を実施するための運用を定めることを目的とする。」

「できるだけダムにたよらない治水への政策転換」を諮問されたはずが、単なる「臨時的かつ一斉に行うダム事業の再評価」に化けた。

有識者会議も、諮問されたことを忘れたかのように、自らの「中間とりまとめ」だけをかざし、「『共通の考え方』に沿って検討されたかどうかについて意見を述べる」(2012年4月26日、中川座長談)ことが自分たちの役割であると矮小化するようになった。

現在までに27ダム中21事業が、ダム事業者による自己評価で「事業継続」とされ、同会議はそのすべてを追認し、国土交通大臣もそれを追認した形を取っている。役割分担(責任分散)により責任の所在をウヤムヤにしている。

有識者会議設置当時に、「非公開ではダムありきの結論になる」(『八ツ場ダム 過去、現在、そして未来』(岩波書店)著者の嶋津暉之氏)など多方面から批判の声は上がったが、予測は的中した。

● 有識者会議の自主運営だから非公開

政府が閣議決定した中島政希衆議院議員提出の質問主意書への答弁によれば、市民団体等から公開が求められた回数は、2009年に2回、2010年に3回、2011年に2回、今年になってからも4回、計11回に上る。1999年に閣議決定された「審議会等の整理合理化に関する基本的計画」で政府会議は「原則公開」が求められているとの問いにも、「議事録を公開」しているとの答弁で傍聴を突っぱねてきた。

2011年3月からはマスコミにのみ公開したが、その後も一般傍聴は認めていない。

前田武志国土交通大臣は、筆者との独占インタビューで「有識者会議の自主運営だから」と傍聴を認めない理由を語った。

2012年4月26日の議題は、国の補助金で大半の事業費を賄っている大阪(安威川ダム)、長崎(石木ダム)、岐阜(内ヶ谷ダム)、沖縄(儀間川ダム)の4府県営のダムだった。傍聴を求めて会議室を訪れ拒まれ続けた希望者が、会議終了を待つ間にトイレにまで職員が3人もついてきたという低俗な嫌がらせにあったのはこの時だ。

2月22日に同議題で開催しようとしたが、30年間ダム事業に反対してきた石木ダム予定地の地権者らが「ここで建設が認められたら強制収用にかけられる」と傍聴を求め、有識者は傍聴を認めず、膠着状態となり、流会となった。

4月26日はその再開で、再度傍聴を求めて訪れたのは合計でほんの10人ほど。しかし、国交省側は100名を越える職員を動員する過剰反応をした。

石木ダム予定地の地権者は「人口が減るのに新しいダムは要らない」と不要性を訴える会見を5階の国交省記者クラブで行った。その後、「11階会議室に行こうとしたらエレベータに乗せてくれない。階段で河川官僚と競争しながら駆け上がった」という。(写真←ここから写真右上の「←Newer」をクリックその25まであり)

一方、記者の受付はいつもより30mほど会議室から離してエレベーター・ホールに設置。筆者は事前登録をしていたが、登録していない記者は追い返されていた(写真)。会議室につながる通路には隊列を組んで人間バリケードを作り、傍聴希望者が会議室に近づくことを拒んだ。また10人程の職員がビデオカメラでその様子を終始撮影するという異様な過剰反応ぶりだった。

開始された会議では、「人垣がある籠もったところでなければこの議論ができない。国土交通省なのか、私どもが、どこかで舵を切り間違えたのではないか」(鈴木雅一東京大学教授)と傍聴拒否を問題視する提起はされたものの、「真摯に議論しなければ」(田中淳東京大学教授)と同調したのはたった1人。何事もなく審議が始まった。

●「今までもダム検証方法に沿ったものばかりではなかった」
問題は審議の中身である。4月26日に問題視された視点の一つは、「石木ダムは座長のいう『共通の考え方』で検証されていない。共通の考え方は、土地所有者等の協力の見通しを明らかにするよう求めているが、長崎県は工程表で2016年完成としながら、実現性の見通しを書いていない」(鈴木教授)というものだ。

前会議で、「私たちは30年、反対してきたんです。ダムは絶対つくらせません!」(岩下和雄・石木ダム建設絶対反対同盟)と地権者が声を限りに叫んでいたわけで、見通しは暗く、2016年完成の実現性も皆無に近いから見逃しようのない瑕疵である。

ところがその主張に座長は、「今までもダム検証方法に沿ったものばかりではなかった」と、矮小化された役割ですら果たしていなかったことを自ら暴露してしまった。

この日、結局、議題となった4ダムのうち、沖縄県が中止するとした儀間川ダム以外は、継続方針が報告され、それを有識者会議が追認した。石木ダムについては、「地域の同意を得られるよう希望する」と条件つきとなった。

この結論を受けて最終結論を出すのが、問責決議を可決された前田武志国土交通大臣であるが、

ボツっている間に、新大臣に交代である。(と、ここから本日の加筆である)
昨日、これについて動きがあったらしい。

大臣が誰であれ、
ダムにこだわり続けるための隠れ蓑(カラクリ)を河川官僚は必要とし、
このカラクリを不安材料なく持ち続けるためにこそ、
ダムに批判的な委員を一人もいれない。
そして、会議も公開しない。議事録の公開も遅らせて鉄壁な環境を維持しようとする。

大臣が誰であれ、過去に何をやった人であれ、
この鉄壁なムラを破壊できる人であればいい。

できなければ過去4人の国土交通大臣同様、意味がない。

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