31.理想と対極にある河川整備計画の作り方
利根川のパブコメが始まったが、あまりにも矮小化された内容なので、
感受性の針が「呆然」と振り切れてフリーズした。
必死で自分の脳みその解凍作業を始めたのが、以下だ。
河川整備計画の理想の作り方(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)
そして今朝、ある方から「越水堤防」について
さらなるコメントをいただいたことで、
その「呆然」フリーズが解凍した。 (チン!)
河川整備基本方針とは、
・どこに家を建ててはいけないのかという都市計画と
・家を建てられないほどに水害リスクが高いところの土地利用をどうするのか
・破壊されてきた環境と修復可能な環境を見極めて再生の目標を立てる
・100年先も持続可能な水利用(質と量と目的)を共有する
・100年後の低コストで災害回避が可能なまちづくりビジョン
これらを流域全体で決めること。100年の方針。
(であるべきだが、現行法は必ずしもそこまでは意味しない)。
河川整備計画とは、その具体的な計画
・ 水害リスクがあるのに家がすでに建っているところを
緊急に手当するための選択肢と手当の順序を決めること
(堤防、移転補助、かさ上げ補助、保険・・・)
・水利用計画=平時の水利用のための水利権の整理/緊急時の融通の取り決め
・自然再生(破壊の直視と多様な解決策の選択)
であるべき。(現行法は必ずしもそこまでは意味しないが)
間違っても、「目標流量を決めること」が治水ではない。
ところが利根川水系の場合は、いきなり、目標流量を決めることになっている。
目標流量を決めるだけで、洪水による被害を防げるわけがない。
「治水」に矮小化して考えるにせよ、最低限の情報提供として、
どこの堤防が危ないとか、
想定内の洪水でもここは堤防のギリギリまで水が来てしまうとか、
想定外の洪水が来たら、一番に溢れそうなのはここだとか、
万が一堤防が切れてしまったら、ここが危ないとか
こうした情報を提供することが「治水」への第一歩ではないか。
ところが、国土交通省関東地方整備局の意見募集の仕方は以下のようなものだ。
利根川水系河川整備計画
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000200.html
利根川・江戸川において今後20~30年間で目指す安全の水準についての考え方.
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000061902.pdf
そして、6月23日までにご意見をください、と言う。
これでは治水にならず、「安全神話」を作るだけだ。
どんなリスクを抱えているのか、その情報なしに
「目指す安全の水準」だけ意見を下さいと言われても、
そりゃ、「高い水準がいい」と、普通の賢明な頭を持つ人ならば答える。
ところが、この↓1頁目で書かれた「高い水準」とは、
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000061902.pdf
この↑2頁目の二つ目の○に書かれているように、
八ツ場ダムを作るための前提となる「高い水準」で、いわば、
「八ツ場ダム選択」であることが分からない形で、
八ツ場ダム選択を誘導するパブコメになっている。
しかし、これは不思議なことに、吾妻川という広大な利根川水系の中の一つの支流の話でしかない。
意見提出はこちらから↓6月23日18:00必着になっているが、
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000200.html
ほんとうに生命財産を守ろうと思っている河川官僚なら、
こんなやり方はしなかったのではないかと思って、残念でならない。
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