30.じっくり議論したい越水堤防
前のコマで紹介した越水堤防の研究の解説YouTubeを宮本博司さんに見ていただくと
すぐにお返事をくださった。多角的に考えが交わるとさらに理解が深まるので、宮本さんに引用の了解をいただいた。そのままコピペします。
∞ ∞ ∞ ∞ ∞
政野様 宮本博司
You Tube、ざっと見ました。
一つ気になったのは、
越水堤防は逃げるまでの時間稼ぎとの位置づけで、
耐越水対策をしても、結局は破堤するようなニュアンスで説明されていることです。
対策の仕方により、越水しても破堤しない堤防は可能です。
現に、遊水地の越流堤は破壊を前提にしていません。また、
今本先生が提案されている2重鋼矢板打ち込みであれば、まず破壊しません。
仮に、時間稼ぎだとしても、
我が国の洪水のピーク時間は比較的短時間ですので、
2時間あるいは4時間堤防が持ちこたえれば、結果的に破堤が生じない
ということになります。
また、堤防に異物をいれることに対する全面否定については、
技術者として理解しかねます。
異物が入るとどのような危険性が生じるのか、
そしてその危険性はどのような対策を行なっても回避できないものなのかを
説明しなければならないと思います。
いずれにしましても、国土交通省の行政職員、土木研究所の研究者の中には、
耐越水堤防をなぜ本気でやらないのかと思っている人が多くいます。
(今は、タブーになっているので、表立っては発言しませんが)
洪水を堤防内に押し込めるという治水方策を進めながら、
堤防は土砂を盛り上げただけで、越水すれば破堤しますという開き直りが
まかり通っていることは、バカバカしく、情けなく、
人の命を蔑ろにしている大罪です。
そして、耐越水堤防をタブーにしている原因がダム建設であるということを
多くの人々に伝えなければと思っています。
一度、耐越水堤防に絞って、じっくりと議論してみたいですね。
∞ ∞ ∞ ∞ ∞
ですね~。引用以上。
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コメント
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かじわら様 ご本の紹介をありがとうございます。
私が現時点で重要だと思い強調したいのは、必ずしも科学的ではない独特の「安全神話」でダムに頼る治水にばかりが注目されてきた事実に、多くの方に気づいてもらうこと。
その洗脳が解けなければダム推進派は反対派を「偏った考え方をしている」と見なし、その逆もまた真なり。まともな議論の自由もない環境に若手官僚と住民が放置されているような状態だと感じています。
たとえば、利根川水系のパブコメが始まりました。このさい、流域の人にとって、何が気になり、20年30年の間に何を解決してもらいたいのかを言える環境が必要ですし、また国交省の側からは、どこの堤防が弱いのか、どこの堤防が切れたら最も大きな被害が出ると考えられているのかなど、住民にとって分かりやすくかつ本当に必要な情報が提供されることが必要です。
ところが、それがまったくなく、コミュニケーションのギャップが生まれたまま、そのギャップがあることが意識できないほどの存在になっていること、それが問題であると認識されていないことが、問題だと思っています。
住民と行政が普通の人の、普通の言葉で、話ができる環境ができないだろうか、そんなことを考えています。
投稿: まさの | 2012年6月 7日 (木) 20時25分
You tube をまだ見れていないのですが、石川忠晴氏、中島秀雄氏、そして吉川勝秀氏と、3人とも重要なのは堤防天端の舗装を主張していますね。逆に言えば、内部をいじる考え方はないようです。
3人とも建設省に関わりのあった方ですが、重要なのは越流水が堤防天端や裏法面にかかる水圧に対抗する、或いは越流水が堤防内部に浸透するのを防ぐことというでしょうか。
特に吉川氏は、越水深60cm・越流時間3時間というメルクマールを提示しています。同様に、わが国の洪水はピーク継続時間が短いのだから、その短いピークに耐えられればいいという前提で、これを耐えれば越流破堤なし、このメルクマールを超えると越流破堤の危険性ありという整理のようです。吉川氏の著書、読んでみてください。
http://www.amazon.co.jp/%E6%B2%B3%E5%B7%9D%E5%A0%A4%E9%98%B2%E5%AD%A6%E2%80%95%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E6%B2%B3%E5%B7%9D%E5%B7%A5%E5%AD%A6-%E5%90%89%E5%B7%9D-%E5%8B%9D%E7%A7%80/dp/4765517306/ref=pd_sim_sbs_b_1
越水堤防調査報告書も、そのうち読んでみます。
投稿: かじわらけんじ | 2012年6月 7日 (木) 19時02分